【ちび創作大賞】天野雫さんのテーマ「風」内なる風と、大地に張る根
朝、窓を開けると、ふわりとあたたかな風が頬をなでた。 カーテンが小さく揺れ、木々がささやき、運ばれてくる微かな夏の香り。
私は、この目に見えないけれど確かにそこにあって、私たちをやさしく包み込んでくれる風が、とても好き。
「風の時代」という言葉を、あちこちで耳にする。
所有や肩書きといった目に見える重たいものから、人とのつながり、想い、知識、経験といった、形のないものへ価値がシフトしていく時代。
世界は便利に、そして驚くほど近くなった。けれどその一方で、絶え間なく流れ込む情報と変化のスピードに、心が追いつかなくなる瞬間がある。
「あれもしなきゃ」
「置いていかれたくない」
気づけば焦りに背中を押され、息を急いでいる日はないだろうか。
そんなとき、私はインドで触れたアーユルヴェーダの知恵を思い出す。
この宇宙にあるすべてのものは「地・水・火・風・空」の五つの元素から成り立っているという教え。そのなかで、動きや循環、変化を司るのが「ヴァータ(風)」のエネルギーだ。
呼吸を動かし、言葉を紡ぎ、新しい場所へ一歩を踏み出す。
誰かと出会い、心を動かすひらめきを得る。
それらすべての躍動は、私たちの中に吹く風のしわざ。
「あなた、ヴァータのエネルギーがとても強いですね」
アーユルヴェーダの医師に言われたとき、深く得心したのを覚えている。
旅が好きで、新しい学びが好き。思い立ったらすぐ動きたい。じっと静止しているよりも、変化のなかに身を置いているほうが、生を実感できる。
けれど、風は本来、自由で軽やかなものである反面、吹きすぎれば自分自身をも吹き飛ばしてしまう。
風が強まりすぎたとき、体はきまって正直なサインを送ってくる。
浅くなる呼吸。
頭を占拠する終わりのない考えごと。
夜になってもオフにならない思考のスイッチ。
気づけば肩に力が入り、心がふらふらと浮き足立ってしまう。
だからこそ私は、毎朝、自分の中の風を整える儀式を大切にしている。
静かにヨガのマットに立つこと。 温かい白湯を、喉の奥にゆっくりと滑らせること。 深く息を吸い、さらに深く吐き出すこと。
それだけで、せわしなく回っていた内なる風車が、穏やかなリズムを取り戻していく。
アーユルヴェーダは教えてくれる。
風が強いときほど、対極にある「大地(カパ・地)」のエネルギーを取り入れるのだ、と。
温かい食事をゆっくり味わう。 裸足でやわらかな土を踏みしめる。 大好きな植物の香りに身を委ねる。
そうして自然の一部へと立ち返り、自分の中心へと錨(いかり)を下ろす。大地にしっかりと根を張ることで、私たちを翻弄していた強風は、人生を前へと運んでくれる心地よい「追い風」へと姿を変える。
風を止めることはできないし、止める必要もない。 大切なのは、風と手をつなぎ、仲良く生きていくこと。
風の時代を歩む私たちは、誰もが自由な旅人だ。 急がなくても、誰かと比べなくても、大丈夫。
ときどき立ち止まり、深く呼吸をして、足元に広がるあなただけの大地を感じてみる。
その先に吹く風は、きっと今日もあなたを、一番あなたらしい場所へと優しく運んでくれるはずだから。
今日は、私の住む町でも風が気持ちよく吹いています✨
この記事を読んでくれたあなたにも、心地よい追い風が吹きますように🍃
この企画に参加しています。
【ちび創作大賞】天野雫さんのテーマ「風」

一番最初に頭に浮かんだのは、もちろん藤井風さんでした(笑)
今回はぐっと我慢して、「風のエネルギー」について綴ってみました😊
