【第5回】SNSアカウント売買の危険性に迫る国際論文“Exploration of the Dynamics of Buy and Sale of Social Media Accounts” を読み解く
SNSアカウントはどうやって売られていたのか?
――その「売り場」の実態に迫る
※前回の予告では「詐欺の投稿に迫る」とお伝えしていましたが、論文の構成に合わせて内容を調整しました。今回は、売られていたSNSアカウントの「売り場」の実態(論文第4章の分析)に注目します。
「詐欺の中身」や「投稿パターン」などの内容は、第7回(論文第6章)で詳しく取り上げますので、もう少しお待ちください!
前回の記事では、研究チームがどうやって世界中のSNSアカウント売買情報を集めて分析したか、
その「調査のやり方」を詳しく紹介しました。
(アカウントが売られているサイトを探し、自動プログラムで情報を集め、どのように悪用されていたかを追跡)
今回は、その調査で実際に集められた3万8,000件以上の販売データから、「SNSアカウントの売買が、どんなふうに行われていたか?」を明らかにしていきます。
たとえば…
アカウントを売っていたのはどんな人たち?
どんなジャンルのアカウントが人気だった?
値段はいくら? フォロワーは何人?
支払い方法は? 匿名で買えるの?
地下市場(ダークウェブ)ではどう違うの?
こうした疑問に答えることで、「SNSアカウントがどのように“商品”として扱われていたのか」
そして、「そこに潜む危険とは何か」が、少しずつ見えてきます。
🔹 4.1 公開市場のしくみ(Open Webの取引サイト)
👤 売っている人はどんな人?
全部で9,949人の売り手が見つかりました。
一番多かったのは「FameSwap」というサイトで、6,617人の売り手がいました。
国籍がわかる売り手のうち、上位は「アメリカ」「エチオピア」「パキスタン」「イギリス」「トルコ」。
💡 つまり、SNSアカウントの売り手は世界中に広がっています。
📂 アカウントのジャンル(カテゴリ)
調べたアカウント38,253件のうち、約2万9,000件に「ジャンルの説明」がありました。
一番多かったジャンルは:
1. おもしろネタ/ミーム(5,056件)
2. 高級感・モチベ系(2,292件)
3. ゲーム(1,062件)
4. ファッション(1,678件)
5. 商品レビューやHow-To(1,420件)
✔️ 認証マーク付きアカウント
認証(公式)マークがついていたアカウントは、たったの185件で、すべてYouTubeのものでした。
ただし、本物かどうかはURLなどの証拠がなく、少しあやしい部分も。
💰 お金を稼げるアカウント?
毎月お金を稼いでいるアカウントが164件見つかりました。
月の収入は、1ドル〜922ドル(中央値136ドル)。
稼ぎ方にはこんな方法がありました:
• 広告での収益
• YouTubeのプレミアム収益
• NFT・暗号通貨プロジェクトの宣伝
• ショート動画に宣伝用マークをつける など
📌「このアカウントは収益化できます」とアピールして、値段を高く設定する売り手もいます。
📝 アカウントの説明文
• 63%のアカウントが説明文つきでした。
• よくある説明の例:
• 「本物のユーザーです」
• 「まだ何にも使ってない“新品”です」
• 「ビジネス用途にぴったり」
• 「元のメールアドレスもつけます」
💬 説明文で信頼を得ようとしていることがわかります。
👀 フォロワー数と価格
約40%のアカウントがフォロワー数を表示していました。
平均フォロワー数は、SNSごとにこんな感じ:
• Facebook:76,050人
• Instagram:26,998人
• TikTok:20,807人
• YouTube:25,700人
• X(旧Twitter):3,077人
・アカウントの値段(中央値)は:
• Facebook:14ドル
• Instagram:298ドル
• TikTok:755ドル
• YouTube:759ドル
• X(旧Twitter):17ドル
📌 TikTokやYouTubeは高額なものが多く、なかには5,000万円以上のものも!
💳 支払い方法
ほとんどの取引サイトで、暗号通貨(ビットコインなど)が使われていました。
一部では、ギフトカード、PayPal、WeChat Payなども使える。
匿名性が高く、トラブル時に証拠が残らないような支払い方法が多いです。
🔹 4.2 地下市場(ダークウェブ)での売買
ダークウェブには、8つの取引サイトが確認され、6つが実際に販売していました。
投稿は全部で65件と少なく、売り手の情報もかなり少なめ。
支払いは基本的にサイトを通さず、Telegramなどで直接交渉。
⚠️ 情報が少なく、トラブル時にも保護されにくい“自己責任の市場”です。
🔹 4.3 公開市場と地下市場の比較まとめ

🎓 まとめ:この章からわかること
SNSアカウントは、世界中で大規模に売買されている
売り手は、信頼性や収益性をアピールして高額で販売している
支払いには匿名性の高い方法が多く、リスクの高い取引になっている
地下市場はより危険で、被害に遭っても補償されない世界である
✨ 研究の信頼性が気になる方へ
調査の精度や分析手法の裏側が気になる方向けに、ちょっと詳しくご紹介します!
🧩 補足:前回の“調査手法”でも、まだ伝えきれていなかったこと
前回(第4回)では、「どこで売られていたか?」「どうやってデータを集めたか?」というSNSアカウント売買の調査手法を紹介しました。
でも実は、研究チームが使った方法には、もっと細かい工夫がありました。今回はその中でも特に重要なポイントを、ここで少しだけ補足しておきます。
🔍 どの広告を使うか? データの選び方も工夫されていた!
3万8,000件以上のアカウント販売広告の中から、ちゃんと使えるものだけを選ぶために、重複の除去や正規表現のフィルター、機械翻訳の処理などが使われていました。
🧪 詐欺に使われたかどうか、人の目でもチェック
自動で分析するだけでなく、一部のサンプルを人の目で確認して、詐欺かどうかを判断する工程もありました。こうした「人手によるラベリング」は、機械に頼るだけでは見落とす部分を補ってくれます。
📆 投稿の変化にも注意していた!
売買広告の内容は、時間が経つと消えたり更新されたりします。そのため、投稿の時期や変化にも目を配って、データの精度が下がらないようにしていました。
📱 どのSNSが対象だったの?
今回の研究で対象になったSNSは次の5つ:
TikTok、Instagram、YouTube、Facebook、X(旧Twitter)
どれも実際に売買の多かったSNSです。
こうした丁寧な分析の積み重ねによって、今回の研究は「ただのネット調査」ではなく、信頼性のある科学的な研究としてまとめられています。
