「帰りたくない!」7歳の息子と、伝説のクワガタを探した壱岐島3泊4日
きっかけ
夏休みに、息子と2人で旅に行くことになった。
きっかけは、娘が友達とサマーキャンプに行くことになり、息子が暇になってしまったからだ。
息子「ぼくもどこか行きたい!」
虫取りが大好きな息子。
それなら、今住んでいる地域にはいない珍しい虫、特に息子が大好きなクワガタをターゲットにしてみよう。妻は仕事が忙しすぎるので今回はお留守番。
そこでAIに聞いてみた。
「息子と2人旅に行きます。国内でクマやヘビの危険が少なく、珍しいクワガタがいる場所で、採集が許可されている場所をリストアップして!飛行機での移動もありです」
すると、候補の中に壱岐島が出てきた。
壱岐島ってどこやねん。
地理に疎い私にとっては未知の場所。どうやら長崎県の離島らしい。
最高やん。
しかも壱岐島には、イキヒラタクワガタという珍しいヒラタクワガタがいるらしい。
これしかない。
旅行まで、あと3週間。
普段、旅行に行くときは妻に任せっきり。
私はドライバー兼荷物持ち兼子どもの遊び相手として、付いていくだけ。
ホテルの予約すらしたことがない。
しかし今回は、全部自分でやらなければならない。
壱岐島への移動手段は、
長崎空港→壱岐空港
または
福岡空港→博多港→郷ノ浦港。
長崎空港から壱岐空港への便は、すでに満席。
今回は福岡空港から博多港へ移動し、ジェットフォイルで壱岐島へ向かうことにした。
大急ぎで、
飛行機。
船。
ホテル。
レンタカー。
全部予約。
当初は2泊3日の予定だったが、復路の船に空きがない。3泊に変更。ホテルも1日追加。レンタカーも延長。
アカン。
面倒くさー。
はぁ……。
妻はいつも、こんな大変なことをやってくれていたのか。
旅行の予約をするだけで、妻への感謝が止まらない。
すったもんだありながらも、なんとか予約完了。
あとは虫取りグッズ。
網、虫カゴ、昆虫ゼリー、軍手、懐中電灯、ステンレス製耳かき。
ほぼ100均で調達した。
さらに息子とYouTubeで、壱岐島の虫取り動画をとにかく観まくる。
意外と虫系の動画を上げている人がいる。
しかも、デカいヒラタクワガタをわんさか獲っている。
期待は膨らむ。
準備は整った。
あとは、良い天気になることを祈るのみ。
1日目 ~移動日~
福岡空港に到着。
天気は快晴。
ありがたいことに、旅行中はずっと晴れ予報。
博多港までは、電車とバスを乗り継ぐ方法もあったが、船の出航までの時間が少しタイト。
今回はタクシーを利用した。
福岡空港から博多港まで3,200円。
博多港からはジェットフォイルに乗る。

壱岐島までは約1時間。
フェリーなら2時間ちょっとかかるようだが、その分料金は安い。
時間に余裕があるなら、フェリーでも良さそうだ。
夕方、ついに壱岐島へ到着。
降りた瞬間から、鳴り渡るセミの声。
そして歩道を歩くカニ。
息子のテンションは一気にMAX。
ホテルまで歩いて移動する間にも、さっそく虫探しが始まった。
神社では昆虫採集はせず、キャッチアンドリリース。
こういうところはちゃんとルールを守る。
今回、1泊目と2泊目にお世話になったのは壱岐アイランドハブ。
ここ数年でできたこともあり、めっちゃ綺麗。
Wi-Fi完備。
宿泊客は無料で洗濯機・乾燥機を使わせてもらえる。
しかも洗剤は自動投入。
ありがたい。
そして何より、受付のお兄さんの愛想が良い。
息子もニコニコ。
ホテルにチェックインしたら、すぐに虫取り開始。
初日はレンタカーを借りていないので、ホテル近くを歩いて探す。
カナブン。
カミキリムシ。
ツクツクボウシ。
クマゼミ。
いろいろな虫を見つけた。
でも、お目当てのクワガタはいない。
夕食後。
もう今日は終わりかなと思っていたら、
「もう一回行きたい!」
息子の願いに根負けし、再び夜の街へ。
すると――
いた。
なんと、イキヒラタクワガタのメスを発見!
2人でハイタッチ。
まさか初日から獲れるとは。
これは期待できる。
明日からはレンタカーを借りて、本気の散策。
目標はもちろん、
イキヒラタクワガタのオス。
2日目 ~本気のクワガタ探し~
朝9時半。
レンタカーを借りにクロスレンタカーへ。
今回、初めてのEV車。
乗る前に店員さんが丁寧に説明してくれた。
2日間で約14,000円。
ガソリン車ではないので満タン返しも不要。
しかも、お店でなら無料で充電させてもらえる。
本当に助かる。
そして、お店でいただいたコーヒーが美味しかった。
1杯550円。
結果、毎日飲んでしまった。
まず向かった先。
1か所目、岳の辻(たけのつじ)。
壱岐島で一番標高が高い山らしい。
といっても約200m。
西側の駐車場に車を止め、そこから山道を歩いていく。

作戦はローラー作戦。
樹液が出ていそうな木を、とにかく探す。
ところが、これが大変。
普段ならクヌギを探せばいい。
でも壱岐島には、クヌギがほとんどない。
代わりに、タブノキやアキニレなど、普段あまり見慣れない木ばかり。
そして、もう一つ大変だったのが――
アブ。
もう山道はアブだらけ。
ブンブン音を立てながら周りを飛び回る。
鬱陶しいったらありゃしない。
長袖、長ズボン。
そしてアブ対策は必須。
あんまりにも息子がアブを怖がるので、途中スーパーに寄って殺虫剤まで購入した。
4時間ほど歩き回った。
成果は、
コカブト1匹。
……厳しい。
日中は難しいだろうとは思っていた。
それでも、ここまでいないとは。
そして息子の希望だった、バナナトラップも仕掛ける。
邪魔にならなそうな場所に2か所。
夜に回収することにした。
2か所目、男嶽(おんだけ)

こちらも壱岐島の数少ない山。
事前に調べた情報では、かなり期待できそうだった。
ところが――
アブだらけ。
岳の辻の比じゃない。
クワガタは全く見つからない。
いたのはトラカミキリがたくさん。
そして、ヘビが1匹。
息子の様子も見ながら、1時間ほどでギブアップ。
3か所目、海豚鼻(いるかばな)

レンタカー屋さんのお兄さんから、
「ついこないだ、カブトムシを見ましたよ」
という情報をもらっていたので行ってみる。
確かにカナブンやスズメバチがたくさん飛んでいる。
樹液の匂いもすごい。
クワガタがいそうな場所も数か所あった。
しかし、結局見つけられなかった。
まぁ、日中だから仕方ない。
そう思うことにした。
夕食を食べ、日が落ちかけた頃。
岳の辻へ戻る。

目的は、バナナトラップの回収。
昼間はあれほど飛び回っていたアブが、
夜になると全くいない。
アブも夜は寝るらしい。
いざ、トラップへ。
1か所目。
ハズレ。
……と思ったら、めちゃくちゃデカいムカデが占拠していた。
何とかムカデをどかして回収。
2か所目。
いた!
イキノコギリクワガタ。
そして、
コクワガタ。
お目当てのイキヒラタではない。
でも、クワガタは獲れた。
坊主回避。
息子も喜んでいる。
それでも、目標には届かなかった。
あれだけ歩いた。
あれだけ探した。
バナナトラップまで仕掛けた。
それでもイキヒラタはいない。
いないのか。
探し方が悪いのか。
その両方なのか。
嬉しいような、悔しいような。
そんな気持ちを抱えながら、21時頃ホテルへ戻った。
明日は海水浴。
それで今回の旅を締める予定だった。
そう思っていた。
その時――
「コンコンコン」
ドアをノックする音がした。
息子がベッドの上で飛び跳ねていたので、
「うるさい!」
と注意されるのかと思った。
直感で思った。
「すみません!」
謝りながらドアを開ける。
そこに立っていたのは、受付のお兄さん。
そして、
「201号室のお客様が、カブトムシをたくさん獲ったので、お裾分けしたいと言っております」
は?
え?
どゆこと?
怒られると身構えていたところに、予想外の言葉。
どうやら、カブトムシを譲ってくれるという、お人好しの方がいるらしい。
訳も分からないまま着いていく。
するとそこには――
カブトムシだけではなく、お目当てのイキヒラタクワガタを捕まえた親子がいた。
聞いてビックリ。
なんと私たちと同じ、父と息子の2人旅。
しかも、息子と同い年。
さらに、推している虫系YouTuberまで一緒。
私たち親子が虫取りをしていたのを見ていたらしく、受付の人に声をかけてくれたんだとか。
奇跡やん。
運命やん。
素敵やん。
イキヒラタに感動しながら、虫取り談義に花が咲く。
そして、仲良くなったところで本題。
「イキヒラタクワガタって、どこにいました!?もしよろしければ教えてもらっても良いですか?」
するとお父さん。
「もちろん!Googleマップ開いてください!分かりにくいんで、ピン刺します!」
いやぁ。
本当に感謝しかない。
虫取りに必要なのは、何より情報。
教えてもらったのは、クヌギの木が群生している場所だった。
虫のお裾分けは丁重にお断りした。
明日、海水浴の前に行ってみることにする。
旅って、本当に何が起こるか分からない。
息子の運の良さを実感しながら眠りについた。
3日目 ~海水浴の前のエクストラタイム~
早起きして、昨日教えてもらった場所へ。
行ってみてビックリ。
いるわ、いるわ。
この2日間、何時間も歩いて見つけられなかったクワガタやカブトムシが、次々に見つかる。

すごい。
やっぱり情報って大事だ。
でも――
肝心のイキヒラタがいない。
んー。
やっぱり夜間じゃないと厳しいのか。
諦めかけた、その時。
いた。
クヌギの木のウロに隠れている。
しかも、完全に目が合った。
格闘すること15分。
そして――
獲ったどー!!!
5.2cm。
イキヒラタクワガタのオス。

目標にしていた6.0cmには届かなかった。
でも、全く問題なし。
最高すぎる。
息子と抱き合って喜んだ。これだ。これを探しに来たんだ。
イキヒラタクワガタのオス以外はすべて自然に戻し、興奮したまま、一旦ホテルへ戻る。
海水浴にクワガタを持っていくと、暑さで弱ってしまう可能性がある。
そこで、ホテルに預かってもらった。
チェックアウト後も荷物を預かってくれるサービスがあったので助かった。
受付のお兄さんに、
「獲れました!」
と報告すると、一緒に喜んでくれた。
このホテル、最後まで最高だ。
次は海水浴。
向かったのは筒城浜(つつきはま)。
日本の快水浴場100選にも選ばれている海水浴場らしい。

白い砂浜。
綺麗な海。
そして、人が少ない。
最高。
海の家もある。
アクティビティも豊富。
息子のお気に入りは、海上アスレチック。
沖縄では6,000円ほどする海上アスレチックが、壱岐では2,000円。
しかも面白い。
子どもと一緒になって本気で遊んだ結果、私は1週間筋肉痛になった。
海の家も最高だった。
屋根付き、ゴザ付きの席。
人も少ないので、気兼ねなく使える。
もう完全にレトロな海水浴場の虜になった。
海水浴の後はいき湯川温泉へ。昔ながらの銭湯。
こういうのがまた良い。疲れた体を温める。
最高。
そして、いき湯川温泉の向かいにあるおしゃれすぎるカフェを覗いてみる。

すると――
裏手にクヌギの木が群生している。
これは気になる。
もちろん勝手に虫取りをするわけにはいかない。
コーヒーとドーナツを購入しながら聞いてみる。
「そこで虫取りしてもよろしいですか?」
すると、
「カフェが空いてる時間なら良いですよ」
快諾。
ありがとうございます。感謝しながら散策。
カナブン。
カナブン。
大量のカナブン。
クワガタ、カブトムシは見つからなかった。
思えば、この旅で。
クヌギの木の群生地はほとんど見つけられなかった。
そのくらい、壱岐ではクヌギを見つけるのが大変だった。
最終日のホテルは、歴史を感じるホテル。
なかなか味がある。
息子は最初こそ少しビビっていたが、最後には楽しんでいた。
海水浴。
海上アスレチック。
温泉。
もうクタクタだ。
それでも、
「最後にもう一回虫取り行きたい!」
息子の懇願に負ける。
夜中に散歩兼クワガタ探しへ。
すると道路を歩いているコクワガタを発見。
テンションが上がる。
そのまま公園を散策していると――
「ビクーッッ!」
何と野良犬がいるではないか。
私と息子以上に野良犬がビックリしていた。
私たちを見るなり、猛スピードで逃げていった。
息子は「ボルトより早いやん」
爆笑していた。
30年ぶりにヒラタクワガタと野良犬を見た。
最後まで楽しませてくれる。壱岐島恐るべし。
最終日 ~別れ~
早朝に起床。
ホテルをチェックアウトして郷ノ浦港へ。
ジェットフォイルに乗って博多港へ戻る。
疲れた。
でも、それ以上に心地良い。
初めての2人旅。
ああ。
最高だったな。
死ぬ時に思い出すんだろうな。
息子も大きくなっても覚えていてくれるかな。
今回の旅では、たくさんの虫に出会った。
でも、それ以上にたくさんの人に出会った。
レンタカー屋さんのお兄さん。
ホテルの受付のお兄さん。
そして、偶然同じホテルに泊まっていた親子。
あの親子に出会わなければ、5.2cmのイキヒラタには絶対に出会えなかった。
旅って面白すぎる。
色んな出会いがある。
そして、旅の中で一回り大きくなったように見える息子を横目に、私は4日間の思い出を反芻する。
「帰りたくない!」
そう言っていた息子。
たぶん、私も同じだった。
また行こうな。
壱岐島。
そして次こそは、
6cmオーバーのイキヒラタを探そう。

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