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「ウィル&ハーパー」#おすすめNetflix

俳優のウィル・フェレルが、「サタデー・ナイト・ライブ」時代からの親友の放送作家で、性別移行をしたトランス女性のハーパー・スティールと車でアメリカ横断するロードムービー風のドキュメンタリー。
https://en.wikipedia.org/wiki/Will_%26_Harper

https://www.netflix.com/jp/title/81760197

怖くて行けない場所があるハーパー

日本語のNetflix番組紹介ページでは、「2人が共にロードトリップに繰り出し、自分らしく生まれ変わったハーパーをお披露目しながら、きずなを深めていく。」なんて楽しそうに書かれているけど、全然そんなんじゃない。
ハーパーは性別移行をしてから、怖くていけない場所ができてしまった。それは男性のホモソーシャルな社交の場である、安いバーとかナスカーレース観戦とかバスケットボール観戦とか。希死念慮も経験しているから、銃のある場に行くのも怖い。そもそも人目のあるところに行くのが、「私はパスできているか??」と他人の目で自分を判断しなくちゃいけないから辛い。
そのハーパーが、友人と一緒に「そこにいることができる自分」を切り拓いていく体験が、痛みとともに描かれる。

車でのロードムービーなので、アイオワとかオクラホマとかテキサスとかの保守的な州も通る。ヒラリー・スワンク主演の映画「ボーイズ・ドント・クライ」(これも現在だったら当事者キャスティングになるだろうか)で主人公が殺されたようなアメリカ中央部の景色の中にハーパーがいるだけで、こっちが勝手にドキドキしてしまう。ここだと殺されても発見されない怖さがある。

※「ボーイズ・ドントクライ」は、トランスジェンダーに対するヘイトクライム、ブランドン・ティーナ殺害事件に基づく映画

もちろんミスジェンダリングもされる。ミスジェンダーのつもりはなくても、そもそも言葉に埋め込まれている男性中心主義が、ハーパーを傷つける。(「Hey, guys」と言われて、「guyじゃないよ」と言い返したり)

悪目立ちしてしまうウィル

そんなところに一人だと怖くていけないから、ガタイのいい男性である友人ウィル・フェレルと一緒に行く。
ガタイのいい男性と一緒だから、殴られたりという直接的な攻撃を受けないで済む反面、有名人であるウィル・フェレルと一緒だから目立ってしまい、SNSで「ウィル・フェレルが女装の怪物と歩いているの見た!」とか言われ、それが自分だということも分かってしまう。

例えば、インディアナポリスではバスケットボールを観戦しにいった際、ウィル・フェレルはたまたま居合わせたインディアナ州知事を紹介され、握手を交わしてしまう。でもその直後に州知事が州における未成年者への性別適合ケアを禁止する法案に署名したというニュースを知り、動揺する。握手をする前にトランスジェンダーについての考えを確認するべきだった、と。実際問題、その場で紹介された知らない政治家に、政治的思想が異なるからといって握手を拒否できるかというと難しいと思うのだけれども、ウィル・フェレルは常にハーパーの安全を考えているから、自分を責めてしまう。
そんな時どうすればいいんだろう?私はハーパーのために何ができるだろうか?を、ウィルと一緒に考え続ける2時間。

自分をどう受容するかについて

終盤でウィル・フェレルが、「この旅では、ずっと美しさについて語ってきたね」というようなことを言う。ハーパーの性別がどうとかいうことじゃなくて、自分で自分の存在をどう受けとめるかということを、ウィルもずっと自分事として考えてきたということが分かる。中年太りのお腹の肉が、だっさい星条旗のブーメランパンツに乗ってる状態で。

ウィル・フェレルはイケメンでもないし、男性のホモソーシャルな関係性の中で胡坐をかき、舐められまいとして偉そうにし、俺様で嫌な奴(jerk)な役が多い。特に「サタデー・ナイト・ライブ」でブッシュJr.の物まねをしていたから、その保守党なイメージがついてしまった部分もあるね。ニコール・キッドマンとゴールデンラズベリー賞を受賞した「奥様は魔女」での役柄が、本人のパブリックイメージを自分で演じていて面白かった。
でも、周囲に迷惑をかけるし失敗も勘違いもするけど、本当は繊細で自分の弱さに最後には気がつく、という役も多い気がする。
(・・・と書いて、そんなことない役もいろいろ思いついてしまったのだけど。オースティン・パワーズとか)
ウィル・フェレルだから作れたドキュメンタリーだな。

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