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わたしたちが光の速さで進めないなら

村上春樹や柴田元幸といった翻訳家への興味からアメリカ文学を読んでいた時期がある。
しかしそれ以降は、広い本の海原においては、日本の作家の本を読むのがやっとだった。
🦀ブックスのInstagramで、この著者のエッセイを知り、興味を持って処女作であるこの本を図書館で借りた。
背表紙には今どきのオシャレな雰囲気の著者の写真がある。浦項工科大学、韓国の理系の名門大学の生化学修士号、今どきのリケジョが描くSF。興味津々で読み始めた。

非常に面白かった!一番良かったのは共生仮説という作品。脳が解読できるようになった未来で、7歳までの乳幼児期の脳にだけある特徴が見出される。ユングの集合的無意識を想起させる。
私は、人間の心は圧倒的にわからないと思っているし、そこには何か今の科学では到底解明できないようなものがあると思っている。故にこの作品をはじめとする全ての短編が、ありうる世界なのではと思いながら設定にコミットし、読んだ。

背表紙の写真のキュートなイメージ通り、自然科学に対し子どものような好奇心が寄せられ、敬意を持って丁寧な説明がなされる。とても清らかで美しい。文章の雰囲気は最近何冊か読んだ、伊予原新のように感じられた。現代ぽいカルチャーネタに頼らないところも、個人的にとても好きだ。
そして、SFであり、自然科学を専門とするリケジョでありながらも、彼女の強い興味は、人間の関係性に関する問題であった。素敵な人だ。詩人のお母様と、音楽家でバリスタのお父様。どんな色や音の溢れた家庭だろう。さて、次は最新作のエッセイを読もう。

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