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それは刹那か、持続可能社会の証か。

■現行水準が実情に合わず基本給や年金の引き上げ。
・最新のニュース、「現行水準が実情に合わず基本給や年金の引き上げを、首相が内務省へ3月中の提案を指示」。
・チン首相は「2026年3月中に基本給や年金、一部手当の引き上げ案を提出するように内務省へ指示した」。これは「第15期国会第10回会議の決議実施に関する首相通達に基づくものである」。
・対象となるのは「基本給のほか、社会保険給付、月額手当、功労者手当、社会扶助、社会年金など多岐にわたる。進捗の管理についてはフォック副首相が担当する」。

■党中央政治局の結論に基づく。
・現在の基本給は「2024年7月から月額234万ドン(約1万3800円)で据え置かれているが、都市部における最低生活費は450万〜500万ドン(約2万6600〜2万9500円)に達している。そのため、国会議員からは引き上げを求める声が相次いでいた」。
・ヴィンロン省産業貿易局のトゥアン局長は「2025年10月の国会において、現行水準が実情に合っていないと指摘し、2026年1月からの引き上げを提案した」。
・これを受けチン首相は「当初予定されていた2026年7月からの実施を前倒しし、国会議員の提案に沿って2026年1月からの適用も視野に入れる姿勢を示した」。なお「2025年11月に出された党中央政治局の結論に基づき、政府は2026年内に給与・手当制度全般の見直しを進める方針である」。

■机上で理想的な循環を整理するならば。
・余談、本報道内容に関して、働く側には朗報だが、企業経営陣は、これをどう見ているのだろうか。ベトナムの労働法・第91条に基づき「地域別最低賃金」は生活水準や物価上昇率、経済成長率を考慮して決定される。一方、毎年一律での昇給は「法律上の義務」ではないが、しかし実際には多くの企業が毎年5〜10%程度の昇給を行う。
・これは、大企業や外資が優秀な人材の流出(ジョブホッピング)を防ぐための「リテンションコスト(人材を自社に引き留め、定着させるために投じる維持費用)」として昇給を前提に予算を組むためだ。中小企業はどうだろうか、彼らの本音は「据え置き」を選びたいが、インフレ率(消費者物価指数)が4%前後で推移する中、据え置きは実質的な減給を意味する。2024年の地域別最低賃金の引き上げ率は平均6%でした。これを下回ると、人手不足に直面するリスクが高まるという「市場原理」が働いてしまうのだ。
・ベトナムの「安い労働力」は終焉を迎えているのだろうか。毎年5〜10%の賃金上昇が続けば、10年で人件費は倍になる。かつての「低付加価値・大量生産」のモデルは、より賃金の低い国へシフトせざるを得ない、という経営判断にも直面するだろう。現在のベトナムは、単なる「安さ」から「労働力の質(ITや高度製造業)」や「国内市場の購買力」へと、外資が感じるメリットの質が変化する分岐点に在る。机上で理想的な循環を整理するならば、以下のように纏められるだろう。
 -1. 働く人(個人):生活の質が向上し、購買意欲が高まる
 -2. 企業:生産性の向上と国内市場の成長による売上増
 -3. 国(政府):安定した税収(所得税・付加価値税)の確保と社会の安定
・賃金上昇が「企業の支払い能力」を超え、企業が倒産すれば、結果として雇用が失われ国が揺らぐ。机上で考えられるほど容易ではないこのバランス調整が政治の役割なのだろう。私の周りのベトナム人仲間たちが、「給与が上がった」、「昇進した」とはにかみながら報告してくれる瞬間、彼らの明るさや幸せが決して一過性の喜びではなく、持続可能な社会の証として在り続けてほしいーーー働く人の幸福が大前提にあり、その先に企業の継続と国の繁栄がある。この国に吹く風が、一時的な熱狂(刹那)ではなく、確かな未来へと続く追い風であることを、彼らの笑顔に重ねて願わずにはいられない。

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