越南発・AI利用ルールと文屋。
■ジャーナリズム活動におけるAI利用の10ルール。
・最近のニュース、「『2026年全国報道フォーラム』にて、ベトナム記者協会は、『ジャーナリズム活動におけるAI利用の10ルール』を公表」。
・AIが情報の真実性を揺るがす今、ジャーナリズムの『守り』の姿勢がかつてないほど問われている。そんな折、興味深いニュースがベトナムから届いた。北部紅河デルタ地方ハイフォン市で「このほど開催された『2026年全国報道フォーラム』において、ベトナム記者協会(VJA)は、国内の報道機関における人工知能(AI)活用のための職業的基準を方向付ける『ジャーナリズム活動におけるAI利用の10のルール』を公表した」。
・ベトナム共産党中央執行委員で「ベトナム共産党機関紙『ニャンザン(人民)』編集長、中央宣伝教育・国民運動副委員長、同協会会長を務めるミン氏によると、このルールの制定は、報道機関がAIの利点を効果的に活用することを支援すると同時に、デジタルメディア環境における職業原則、報道倫理、社会的責任を確保することを目的としている」。
■10ルールのブレイクダウン。
・公表されたルールの内容は以下の通りとなる。
1.AIは技術的支援ツール。ジャーナリストに取って代わるものではない。
2.AIを情報源と見なさない。
3.AIが生成したコンテンツを原文のまま掲載しない。
4.偽情報を作成または拡散しない。
5.ディープフェイクやなりすましを作成するためにAIを使用しない。
6.情報源と個人データを保護する。
7.著作権を尊重する。
8.AIを使用する際は透明性を保つ。
9.機微なコンテンツは多層的に検証する。
10.法律と方向性を遵守する。
・なお「同フォーラムでは、情報爆発の時代における報道の価値保護や、AIによる著作権問題などが議論された。参加者らは、AIと自動化への投資が労働生産性や品質向上のための最優先事項の一つであるとする一方、AI利用におけるジャーナリストの責任や倫理が、メディアの最大の財産である社会的信頼を築く鍵になると強調した」。
■「報道」が事実を報じ、「教育」で受け取る力を育む。
・余談、なぜ今、このルールが必要なのか、その背景には、AI詐欺の急激な爆発という現実がある。2025年、AIを活用した詐欺被害は前年比で1210%=12.1倍もの急増を記録した。さらに、SNS利用者の約4人に1人が「毎日」偽・誤情報に触れているというデータも報告されているのだ。
・かつて情報は「足で稼ぎ、裏を取る」という物理的なプロセスを経て公表されたが、現代はAIが数秒で説得力のある「偽の事実」を生成できる時代でもある。情報の信憑性を確認する多層的な検証が不可欠な今、ベトナム記者協会が職業的基準を明確にしたことは、報道の信頼性を守るための「防波堤」を築くという切迫した意思の表れと察している。
・ジャーナリズムの大家コバッチとローゼンスティールは、その本質を「検証の規律」と定義した。単に切り込むだけではなく、「何が事実で、何がAIによる幻影なのか」を峻別する検証力こそが、今のジャーナリズムにおける最大の武器(刀)なのだ。真実を追求し、権力を監視し、市民に忠実であること。この原則を忘れたとき、メディアはただの「情報拡散装置」に堕してしまう。数値や証拠という強固な根拠に基づき、複雑な背景を解き明かすことこそが、メディアの価値、ジャーナリズムの真髄であるはずだ。
・しかし、このルールや思想は、報道関係者だけで完結させてはいけない。本筋は、教育の現場でこそ、この「リアルとフェイクを見極める知性=メディアリテラシー」を育むべきだと考える。AIが生成した美しい文章や動画が溢れる中で、国民一人ひとりが「これは本当に信頼できるものか」、「誰が、どのような意図で発信しているのか」と、自身の頭で考え、判断する力が求められるーーーそれは、どんなにAIが進化しても代替できない、人間だけが持つ「思考」の力だ。「報道」が事実を報じ、「教育」がそれを受け取る力を育む。その両輪が揃うことで初めて、私たちは情報が錯綜するこの荒波を、自らの足でしっかりと歩んでいけるのではないか。そうした社会の実現こそが、このフォーラムが真に目指すゴールと感じている。
