一茶両吟 廿参ノ巻 (23)
【表六句】
冬 冬枯れて 手持ちぶさたの 山家かな
雑 眠りの底も 歌をためらん
冬 冬枯れに ちらちら消ゆる わら火かな
雑 灰とわするれ 忌みごとの日の
秋の月 冬枯れに 看板餅の 日割れかな
秋 誰つく臼や 秋の望月
【裏十二句】
秋 埋み火に 桂の鴎 聞こえけり
恋 あんかにもぐる 塩甞め指の
恋 炭の火や 夜は目につく 古畳
雑 肌にふるくも 心地よしなば
雑 ちとの間は 我宿めかす おこり炭
雑 里のぬくみの 寒々しかな
冬の月 宵宵に 見べりもするか 炭俵
冬 つき落ちぬるは 夢の大八
雑 炭砕く 手の淋しさよ かぼそさよ
雑 胸を焦がすは 若草のころの
花 じっとして 雪をふらすや 牧の駒
春 霜のしたにも 春の歌きき
【名残表 十二句】
雑 初雪や 葛西烏が うかれ鳴く
雑 墨うく梵の 骨ぞ分けろか
雑 古利根や 鴨の鳴く夜の 酒の味
雑 強つく藪に 世も荒れざらし
冬 浅茅生や 犬の合子も 梅の花
冬 主なき炉の なく数寄屋かな
雑 耕さぬ 罪もいくばく 年の暮れ
恋 尻も寝がえり 土ともぐれば
恋 口明けて 春を待つらん 犬張り子
雑 尻尾の先の 蝶ぞ追うやう
秋の月 夜の雪 だまって通る 人もあり
秋 ふるは格子の そでの月かげ
【名残裏 六句】
秋 鰯焼く 片山畠や 薄がすみ
雑 ねずみおののく 寅のあしおと
雑 餅の出る 槌がほしさよ 年の暮れ
雑 ふれば泪の しろがね零る
花 また今年 娑婆塞ぎぞよ 艸の家
春 雑花だに吹け 春よ知らせて
【引用】『新訂 一茶俳句集』丸山一彦校注 (岩波文庫)
