見出し画像

『週刊 ゆきおとこ』 第66号

第 66号   2026/4/6 刊                ▲ 雪男の記事一覧



― キャンピオン  『誠実』 より

 
 よき思い その友とし
  満ちた老齢こそ財産
 地上の生に 心安き宿
  自ら 静かなる旅人たらん 

 
 

■ 連載小説 ― 西行のリュックサック (2)

 
熱田に戻って しばらくして 師走の雪が降った
私のほうは 名古屋の社交界に顔を連ねて
 旅の支援を賜るためのクラウド・ファンドを募った
自由気ままでいるためには 多少の商業トークもいたしかたない
それが ネームバリューの役目である と
 世の中は 江戸時代でも今でも同じこと
幸いにして降った白い雪をネタに しばらくは
 歌仙や色紙替わりの一折に困らなかったので
 仕事は上出来に片付いた

それから
 西行法師が腹を減らして旅に出たという
 桑名~にしふく山の梅にほふ柴の庵に参る
 ― むろん 梅はまだ無い
西行法師の場合は 山に暮らして 山へ旅に出た
もはや 浮世の煤の黄砂一粒ほどもない命の使い方に
 憧憬を抱かずにはいられない
また 西行は 墨衣であるという点で 托鉢に頼ることが可能だった
私などの 似非坊主モドキのバッタもんには
 いくらなんでも 鉢をいただくのは 仏に泥棒を働くようなもので
 精神のほうが先に無理だと言って折れる

ここから先は

6,436字

¥ 150

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?