『週刊 ゆきおとこ』 第11号
第 11 号 2025/3/17 刊 ▲ 雪男の記事一覧
― アポリネール 『ミラボー橋』 より
時を打って 夜よ来い
日々去りゆきて われは残る
■ 連続小説 ― アメリゴ・ハウンドドッグ
~ ニューヨーク (2)
シャトルは Pier97 に接岸した
桟橋の手すりにつかまり
まるで赤子が初めて立ち上がる瞬間のように
両足を岸のコンクリートにのせて踏ん張る
自分の全体重と地球の引力とが
無重力になれていた両足の太腿に
容赦なく 重く のし掛かった
顔を上げた目の前の風景は 昔と変わっていない
― 赤や青の派手なライティングをした屋台
積み上げられた羊の骨の横で
シシカバブを焼いて
ナンとビールを売っている
まるで かすかに残っている幼少の記憶の匂いの
誰かの背中から見た縁日の風景のよう
その脇では
どこに行く当てのない若者が
だらだらと無言で地べたに座っていた
スピーカーから漏れてくる音楽は
すっかり趣が変わっていて
カエルが干上がり
悶え 苦しんでいるようなコーラスだったが
ダンスは昔とほとんど変わっていない
― ターンやステップ それから
クラップのタイミングまで 昔のままで
しかし そこは
たとえ5分といえども耐えられない空間だった
我々はさっさと岸に上がり 二度と振り向かなかった
ここから先は
5,567字
¥ 150
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?
