一茶両吟 卆玖ノ巻 (99)
【表六句】
新春 まん六の 春となりけり 門の雪
雑 泥に丸まる 煩悩達磨
春 鶯が ぎょっとするぞよ 咳ばらひ
春 散らすな梅の はなみずの春
春の月 正月や ごろりと寝たる とつとき着
雑 よひ払ひたまふ 竹取の姫
【裏十二句】
雑 梅咲くや 門跡を待つ 青畳
恋 新しきものと こころが並ふ
恋 雪の原 道は自然と 曲がりけり
雑 よりそふ二匹の 足はもつれて
秋の月 ののさまと 指さした月 出たりけり
雑 小さき爪の 大日様や
雑 江戸口や まめで出代はる 小諸節
雑 稼ぎ頭は くそも残さじ
秋 凧の尾を 咥へて引くや 鬼瓦
雑 爺ちゃんやめてと 孫が泣く空
花 歩きよい ほどに風ふく 日永かな
春 藤にゆらすや また夏が来ん
【名残表 十二句】
春 誰それと しれてかすむや 門の原
雑 これ九原と 願人坊主
冬 霜の夜や 横丁曲がる 迷子鉦
雑 はらわた抜かる 鮭の塩漬け
春 春もまた 雪雷や しなの山
春 おそろし神の 朝帰りかな
雑 乙鳥来る 日を吉日の 味噌煮かな
恋 二人で煮込め 味しみる夜
恋 山虻や 人待ってとび 待ってとび
雑 すいた人なば 身の涸れるまで
夏 卯の花に け上げの泥も 盛りかな
夏の月 満月あらう 天の河原
【名残裏 六句】
春 一日や 仕様ことなしの 衣更へ
雑 裏が表の 秋が春なり
冬 霜がれや 番屋に虱 うせ薬
雑 われも失せけり 石枕かな
花 茨垣や 上手に明けし 犬の道
春 花を褒めれば 棘も友なり
【引用】『新訂 一茶俳句集』丸山一彦校注 (岩波文庫)
