『週刊 ゆきおとこ』 第64号
第 64号 2026/3/23 刊 ▲ 雪男の記事一覧
― ブルック 『兵士』 より
もし 僕の心が洗い潔められ
永遠の鼓動に溶けるなら
この 祖国の思い出に
感謝の念を込めて 伝えたい
故国の調べ
幸福な日々の 幸福な夢
友から学んだ笑い
大空の下の 平和な あの優しさを
故国に伝えたい
■ 連載企画 ― 負けの神様
~ 義勇の砦
師が祖国を離れて 山を越えられた
村の朝の空気は その噂でむせ返り
七色旗は 一色に染められて はためいていた
実際に 師はわずかな護衛を伴って 零下の雪山を目指した
巌が足裏を容赦なく叩く 道なき砂礫を
ゆっくりと ラバの茶色い隊列が 分け入っていく
河原は 一昨年の雪解け水が申し訳程度に
まだ角の取れていない礫岩の文様を洗っている
師の一行は 無言を携えて
ただ 信じる方角へと 次の一歩を進めていった
村人は 師を追放してはならぬ と決起する
若い者どもが 手にしていたのは 武器弾薬であったが
師は かつて説いた
武器は 解決の道具には決してならぬ と
若者は 長老らに諭されて武器を放棄した
その代わりに 使命を課せられて 世界中の国々へと潜伏した
あるものは 師の命を守るための医師として
あるものは 師とその従者に知恵を授ける有識者として
あるものは 師に近づこうと画策する暴漢を
はるか未然から 消去する役割として
またあるものは 師の一団に隠れた資金を提供した
資金は 貧しい祖国の血税であったが
人民は 師の命のために働いた
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