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『週刊 ゆきおとこ』 第70号

第 70号   2026/5/4 刊                 ▲ 雪男の記事一覧



― エリュアール  『自由』 より

 
 言葉の力によって
 ボクの人生は再び始まる
 ボクが生まれたのは 君と知り合うため
 君を目指すため

 自由 よ  
  

■ 連載夜話 ― 『ジェットドリーム』

      ~ ジャックとエリックとジンジャー・エール



【あなたのオープニング】

 オープニング曲 :「ミスター・ロンリー」 by フランク・プゥルセル

 今日という一日の最後を飛び立って 
 今では あの街の喧騒も はるか雲の下へと置いてきました
 遠く なつかしく見える灯は さて いつの記憶のものでしょう

 今宵の空のスチュワードは
  旅路をしずかに見守る月の明かりと
  そして 星々はさらに雲海に煌めいて 
  この夜間飛行を 安らかに導いてくれています

 最高の夜に あなただけのジェット気流に乗って
 あこがれの旅へとテイクオフ

 今夜のフライトのお供をするのは
 パイロットの ○○○(あなた)
 そして 不思議の国の王子たちが
 旅先のご案内役をつとめてまいります
 


【ドーバー】

 印象的な サウス・フォアランド灯台のあるイギリス南部の岬 そして
 かつてのナポレオン・フランスの脅威を
  もっとも肌で感じ取っていた港町
 白いチョークの岸壁に守られた
  南部アングロサクソンの要港として栄えましたが 
 でも いまでは
  ユーロスターが海を分かって 二つの栄光の地を結ぶにいたっています

  西に イギリス海峡がつづく
  今夜も あの時の風が吹く
  ヨーロピアンの脅威を見張り 眠れぬ夜を過ごしたマーテロー
  ドーバー城の焔は 今は亡きこととして 平和に沈黙しています

 さて この景色のなかから あなたは
  イギリスとローマ帝国との間に交わされた
  どのような「密約」を見つけることができるでしょう 
 


【今夜のアルバム】

Bass - Jack Bruce
Guitar - Eric Crapton
Drums - Ginger Baker

recorded 1967/11/10, New York
 

Strange Brew

そこには不思議な風が吹くんだ
そう 俺たちをずっと待っててくれた女の子のような風が
彼女は 海のほうからやってきたらしい
だって 潮の香がするから
遠くのほうでカモメだか 汽笛だか

Sunshine Of Your Love

まだ見ぬ彼女は 俺たちの憧れだった
そしてきっと ボクの太陽になる
誰だって 彼女の魅力には焼かれてしまうだろう
夏が通り過ぎていったカレンダーには
思い出せない何かが書き込まれているものだ

World Of Pain

俺たちには 幾つもの争いごとがあった
土砂降りの日が続いて 全ての限界線は崩れ去った
ある朝 気がつくと 隣で寝ていた女の子はベッドごと消えていた
空腹と悪寒と孤独 みんなゾロゾロと手を繋いで勝手に上がり込んでくる
思わずボクは外に飛び出した しかし外の世界は苦痛でしかなかった

Dance The Night Away

夜になると 幽霊たちが踊り出す
そしてそれは 夜通しつづいた
好きでもないダンスを踊り
 モスクワの女の子が 「歌え」と言ってボクを殴る
毎晩毎晩 夜通しでパーティだなんて 誰が言ったんだ!
唇のような赤い月が 頭の上で揺れている

Blue Condition

今日は「青」の調子がいい
空は抜けるようで 海は穏やかに 深く 深く 光を受け入れている
宝石箱は珍しく開け放たれて
 たった今 オルゴールの噂話が終わったところ
ターコイズのサンゴは ウミガメと共に 太古の海を散策中
見覚えのあるヨットが 白い風に押され 裏切りの水平線を滑っていく

Tales Of Brave Ulysses

数学が苦手なマーテローから 
巴里に向かって小便をした
パンと紅茶 妻の浮気と おせっかいな郵便屋
笑う老婆の広告がうつる
 墓地へ向かう 飾りのついた四輪馬車のガラス窓
昔の恋人がいる博物館 ハムレット王は今も生きているという噂
愛国者たちの酒場 花火と 古い呪文と 挑発する売春婦
亡霊が語ったのは アイルランドとイングランドの性交のはなし

Swlabr

そんなところに居ないで 降りておいでよ
虹なんて退屈だろう?
そして いつまでたっても出発しない
 ポンコツ飛行船め
スピードスターは 今日も安全運転で
 紫の排気ガスを吐いてやがる

We're Going Wrong

悪くはない と ヤツが言う
いやだんだん 悪くなる と オレが言う
悪かろうはずがない と ヤツは認めない
悪くなるに決まっている と オレが突き返す
今よりもマシだ と ヤツが泣き出す
マシなものなんて この世には無い と オレがとどめを刺す

Outside Woman Blues

女たちが ドアの外に立っている
みちみち行く男に 何やら ひと言 ふた言
赤い顔をした男が
 赤いドレスの女をつれて 赤いネオンの二階に消えた
黒いサングラスの男が 黒いドレスの女に話かける
女は答えない
 タバコの灰が落ちる
  やがて 女は黒い煙になって 男を包み込み
   外は 真っ暗な闇になった

Take It Back

ワタシの時計を返せ と 後悔する女が睨み返す
ボクに必要なのは ペンだった と ギターを抱えた若者が歌う
犬は 昨日の散歩代を払え と鼻を鳴らし 
猫は 昨日のイケメンにもう一度会いたいわ と 言ってゲップをする
しかし 月は利息を数え
 無用となった細胞が 「お先に失礼」 と言って墓石の下へと送られた
返してくれ たって
 キミは そろそろオシマイさ

Mother's Lament

そうだろね きっと ― わかるよ
でもね 反撃の手が無かった
悔しさも理解できた
並べるものを持っていない クヤシサ
でも 失敗にはしたくなかった
 ― それは 私もおなじ
遠くまで走っていった
 かがんだ
  耳を塞いだ
実はそんなに打たれ強くない ってことも
だから わかるよ
 
 


【あなたのエンディング】

 エンディング曲 :「夜間飛行」 by レーモンド・ルフェーブル

 さて 夜は
 すっかりと 夢の中へと溶け込んでいきます

 遠くに聞こえた歌は 幻でしょうか 
 それとも 明日の予告編でしょうか

 そんな素敵な物語が きっと 
 あなただけの旅の始まりとともに 扉を開けて待っています

 さあ あともう少し
  不思議のつづきを あなた自身の夢の中で

 今夜 お送りしたアルバムは 
 クリームで 『ディズレイリ・ギアーズ』

 フライトのお供をいたしましたパイロットは
 わたくし ○○○ でした 
 

 

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