『週刊 ゆきおとこ』 第51号
第 51号 2025/12/22 刊 ▲ 雪男の記事一覧
― ポウプ 『陰栖の賊』 より
人に見られず
人に知られず
生きて行こう そして
悲しまれずに死にたい
ひっそりと別れを告げて 葬られた場所には
石ひとつない
そんな死に方を くれ
■ 連続小説 ― アメリゴ・ハウンドドッグ
~ コープフォート (6)
パラゴナ ~ パローワン
切りだった 赤みだらけの崖から
1秒先の未来の景色が 死んだはずの灰色の世界に変わっていく
やがて
オールド・ノース・ハイウェイに 人間世界の灯りが見え始めた
ビーバー・ジャンクション の
懐かしい 立体交差の感覚がよみがえる
光が人間に そしてまた 人間が光に変わった
標高 1782m : シーダーシティ
我々の15号線を挟んで
赤い悪魔の山と 黒い神の山が戦っているよう
神が一手及んだところには 緑の命が立ち上がる
一方 神が手放した土地は どこまでも生命力をなくし
赤い絶望の谷へと変えられて そして
心臓も 胃袋も
内臓の何もかもを 頭から抜き取られるような感覚のなかで
尻に冷たいものを感じながら
人間だった光は やがて 夜空の動かない星となって
今では 燦然とわれわれの頭の上に瞬いている
標高 1172m : アンダーソン・ジャンクション
そんな物語のうちに
15号線の窓はいつの間にか ザイオンの原始的風景
― 人類が まだ地上に現れていなかった頃の命の胃袋
― に呑み込まれるかのように
ドンッ! という重たい音とともに
ハウンドドッグは時速300km で 真っ暗な
太古の時間のトンネルの中へ 吸い込まれた
そして 最後の追憶までもが 躊躇いの一つも見せず
あっという間に 過ぎ去っていく
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