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『週刊 ゆきおとこ』 第28号

第 28号   2025/7/14 刊        ▲ 雪男の記事一覧



― ディキンソン 『形式だけの感情』 より

 
 激しい苦痛のあとには 形式だけの感情
 神経は墓石のように座る
 運んでくれたのは 「あの方」か?
  昨日のこと?
  何世紀も前のこと?

 足が 機械のように歩き回る
  地上の?
  空気の? それとも 
 無関心の木の路
 石英は 石さながらに満足する

 鉛の時間
 生きのびたなら 記憶に残ろう
 凍死する人が 雪を思い出すように
  冷気 それから
  麻痺 そして
 一切を放棄する  
 

■ 七夕三部作 ― 3.  オリヒメの失恋 ―


今夜は 一年に一度の逢瀬だけど
 朝からとても憂鬱な気分
体が重いし
 熱もあるような気がしてきて
  ベッドから起き上がれない
風邪?
 うん 素敵な言い訳ね
 今まで一度も病気なんてしたことないのに
 今日だけはダメ とか
それとも 地下鉄がおくれたことにしようかしら
 近頃の街なかは ジャムだし
それとも 牛がストライキだとか
 牛のお母さんが病気で 車が出せなかったとか
牛は元気なんだけど
 長い間乗ってなかった車がパンクしてて 
 でも ほら今夏休みでしょ
 そんでもって ガソリンスタンドが臨時休業してて 
あら これはダメね

で 結局は なんで行かないのかって?
一言でいうと
 さめたのかしら 二人の関係に
いつまでも結婚してくれないし
 それなのに 女房あつかい
言っとくけど
 あたし 良妻賢母タイプじゃないし
 専業主婦なんて ありえないし
ああ ここで言っても仕方ないわね
でも
 こんなことを 彼に打ち明けることが
  メンドくさくなってきちゃって・・
もっと 自由なあたしを愛して欲しいんだけど
 彼には 彼の"奥様" のイメージがあるみたいね
じゃあ そんな女の子を探せばいいじゃん て思うの
そっち側にも女の子はいっぱいいるでしょ
あらひょっとして あたしって愛人なのかしら?
実は 本妻はあちら岸にいてて 
 こっち岸には 愛人を置いて
 君は毎年〇月〇日
 こっちの姫は △月△日のお祭りで
そんなら あたしじゃなくても 

そこまで言いかけて
 鏡の中の私は 涙が止まらなくなった
約束の時間を とっくに過ぎていた
まるで
 田んぼの泥水の中で
 ぶるぶると震えながら 泣いている気分だった

****

窓の外の黒い山陰に 月が掛る
石になったライオンの影が ゆっくりと腰をあげる
しかし
 銀河を映す鏡の中のオリヒメは もう泣いていなかった
トレードマークだった髪飾りを外した
彼女は これでようやく
 新しい自分に生まれ変われると ワクワクしてきた 

 オオカミは もういない
 

 

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