一茶両吟 せ参ノ巻 (73)
【表六句】
夏 馬上から や あれまてとや 時鳥
夏 盗人からすぞ あれ時鳥
春 湯上りの 尻にべつたり しょうぶかな
雑 上々となり 端午の節句
夏 行灯を 虫の巡るや 青あらし
夏の月 穴の明きたる 雲にのぞけば
【裏十二句】
夏 瓜西瓜 ねんねんころり ころりかな
恋 似たもの同士が 浮かぶ夏の日
恋 時鳥 ネブツチョ仏 ゆり起こせ
雑 まだ来ぬ宵に 恋は待たれじ
雑 雨一見の かたつぶりにて 候よ
雑 太郎冠者と 人は言うけれ
夏 里の子が 犬につけたる さ苗かな
雑 野良に怒られ わんわんと泣き
雑 わんぱくや 縛られながら よぶ蛍
雑 石になりても なじみ忘れじ
花 寝むしろや 尻をかぞへて 行く蛍
春 河原に枝垂る 春の三条
【名残表 十二句】
春 りんりんと 凧上がりけり 青田原
雑 春燕とぶやね ハレの日が来ぬ
雑 尻鼓 打ち打ちひとり 扇かな
雑 旅人喰って おどる入道
夏 老いけりな 扇づかひの 小忙しき
夏 鬼が見えらる 歳となりなば
雑 さむらひに 蝿を追はする 御馬かな
恋 姫様が背の おうせのままに
恋 すりこ木で 蝿を追ひけり とろろ汁
雑 ねっとり飛べや 前に後ろに
秋 たばこの火 手に打ち抜いて 夕涼み
秋 中中と消えぬ 秋のたそがれ
【名残裏 六句】
夏 はつ袷 にくまれ盛りに はやくなれ
秋 親を踏みこす 秋は六十
夏の月 むらの蚊の 大寄合や 軒の月
雑 知らぬ顔して われ蚊帳をつる
夏 夏の虫 恋する暇は ありにけり
秋 すぎれば秋の 風も涼しや
【引用】『新訂 一茶俳句集』丸山一彦校注 (岩波文庫)
