一茶両吟 父伍ノ巻 (85)
【表六句】
秋 日本の 外ヶ浜まで 落穂かな
秋の月 美味酒祝ふ 蝦夷の大神
春 目出度さも ちう位なり おらが春
雑 吹き飛ばされて 屑の一番
夏 名代の 若水浴びる 烏かな
夏 のぞいた影が 打ち水に消ゆ
【裏十二句】
雑 土蔵から すぢかひにさす 初日かな
恋 二つ走って 鼠の年越し
恋 山の月 花ぬす人を てらし給ふ
雑 折らせてまつは 誰が羽衣
雑 長閑さや 浅間のけぶり 昼の月
雑 湯気と消ぬるは わが余生かな
冬の月 ざくざくと 雪かき交ぜて 田打ちかな
冬 白兎が残した 月の餅つき
春 畠打ちや 子が這い歩く つくし原
雑 貧乏スギナも 後をつぐ春
花 鍋の尻 ほし並べたる 雪解かな
春 なつかしき顔だす 蕗の薹
【名残表 十二句】
春 出代の 市にさらすや 五十顔
雑 たたき台にも 売れ残れりて
雑 石畳 つぎ目つぎ目や 草青む
雑 隙間に生くる わが人生かな
夏 松島や 小隅は暮れて なく雲雀
雑 帰らぬ母が 愛ほしからん
春 花散るや 末代無智の 凡夫衆
春 いつの国にも 触れるな桜
春 故郷や 朝茶鳴子も 春がすみ
恋 床に籠れる 香りいっぱい
夏 おれとして 睨みくらする 蛙かな
夏の月 眠り顔なる 円月殺法
【名残裏 六句】
秋 塔の陰 筵かすりて なく蛙
雑 応へる声の 苔石なりて
雑 門前や 子どもの作る 雪げ川
雑 達磨のことも 小さき夢けり
花 かすむ日や 森閑として 大座敷
春 花も散りぬる 興慶宮かな
【引用】『新訂 一茶俳句集』丸山一彦校注 (岩波文庫)
