一茶両吟 弐ノ巻
【表六句】
春 剃り捨てて 花見の真似や ひのき笠
春 きさらぎ散るも 好し伴す春
春 畠打ちが 焼石積める 夕べかな
雑 黄金の壺も あるや泥の手
秋の月 父ありて 母ありて花に 出ぬ月かな (※1)
秋 柿は未だかと 秋意きこへも
【裏十二句】
夏 日盛りや ヨシキリに川の 音もなき
恋 陰を結びて 戯れ午睡
恋 伊香保根や 茂りを下る 温泉煙
雑 すべる雫に 紅唇よせて
雑 馬の屁に 目覚めてみれば 飛ぶほたる
雑 幽きのこそ ひかり臭ほめや
冬の月 通し給え 蚊蠅のごとき 僧一人
冬 寒の月見す 雪舟が墨
雑 しづかさや 湖水の底の 雲のみね
雑 水鳥が白 はね魚のはら
花 盃に 散れや糺の 飛ぶほたる
春 惜春わする 若気の花筵
【名残表 十二句】
春 塔ばかり 見えて東寺は 夏木立
雑 いそぐ花まち 佐保姫と牛
雑 京かな 東西南北 辻が花
雑 歩みゆるりく 蓬また好し
夏 夏の夜に 風呂敷かぶる 旅寝かな
夏 天井かけも 夢は盗まじ
雑 をり姫に 推参したり 夜這星
恋 眠りの森の 鶏まで語たれ
恋 吹き降りや 家陰たよりて 虫の声
雑 めぐりの軒の 夜はながめに
秋の月 船頭よ 小便無用 浪の月
秋 棹さす雲間に 仲秋はすぎ
【名残裏 六句】
秋 負け角力 その子の親も 見ているか
雑 土ぞ宝と 雲がはげます
雑 御射山や 一日に出来し 神の里
雑 肩に重たし わが孫俵
花 寒き夜や わが身をわれが 寝ずの番
春 桜の下に かなふ人かな
(※1) 原文 「出ぬ日かな」
【引用】『新訂 一茶俳句集』丸山一彦校注 (岩波文庫)
