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【建設現場のリアル】70歳の現場代理人は足場に登れるのか?大規模修繕で問われる「年齢」と「安全」の境界線

マンションの大規模修繕工事や新築現場において、現場の指揮官ともいえる重要なポジションが「現場代理人」です。

工事の品質を管理し、居住者の皆様との窓口になり、職人さんたちをまとめる要(かなめ)の存在。そんな現場代理人ですが、昨今の建設業界では高齢化が著しく進んでいます。

先日、ある管理組合の大規模修繕工事の選定を進めているなかで、修繕委員会の方から、こんな質問をいただきました。

「この施工会社の現場代理人さん、70歳のとのことですけど、足場に毎日登って大丈夫なのでしょうか? 年齢制限のような法律はないのですか?」

管理組合としては、確かに気になるところです。 足場の上は危険と隣り合わせ。万が一、現場代理人が現場で倒れたり、転落したりすれば、工事の中断はおろか、マンションの資産価値にも関わりかねない重大事故になります。

今回は、意外と知られていない「現場における年齢制限のルール」と、高齢化する建設現場で私たちがどう「安全」と向き合うべきかについて、深掘りしてみたいと思います。

法律に「定年」はないという事実

まず、結論から申し上げます。 現場代理人が足場に登って業務を行うことに関して、法律上の年齢上限(定年)はありません。

労働基準法や労働安全衛生法において、高所作業に関する年齢の定めは「満18歳以上であること」という下限のみです。つまり、法律だけで言えば、70歳でも80歳でも、本人が元気であれば足場の最上段まで登って検査をすることに違法性はないのです。

しかし、法律で禁止されていないからといって、「はい、そうですか。安心ですね」とはなりません。 加齢に伴う身体機能の低下は誰にでも訪れます。平衡感覚のズレ、筋力の低下、あるいは持病による突発的な体調不良。これらは高所作業において致命的なリスク要因となります。

そのため、法律には書かれていない「現場ごとのローカルルール」が存在します。

現場を支配する「実務上のルール」

大手ゼネコンや厳しい安全基準を持つ施工会社では、法律とは別に独自の内規を設けているケースがほとんどです。

例えば、

  • 「65歳以上の新規入場者は、高所作業に関する健康診断書の提出を必須とする」

  • 「70歳以上の高所作業は原則禁止(地上業務のみ)」

  • 「高齢者はフルハーネス(安全帯)に加え、単独作業を禁止する」

といったルールです。 特に厳しい現場では、毎朝の朝礼時に血圧測定を行い、規定値を超えている場合はその日の高所作業を一切認めないという徹底した管理を行っているところもあります。

これは、単なる「転落事故」を防ぐだけでなく、作業中に脳梗塞や心筋梗塞などを発症し、足場内で動けなくなるリスクを回避するためでもあります。足場の中は狭く、緊急時の救助が非常に困難だからです。

「ベテランの目」か「若手の体力」か

ここで一つ、建設業界が抱えるジレンマがあります。 それは、「現場管理の能力は、ベテランほど高い」という事実です。

特にマンションの改修工事(大規模修繕)は、新築工事とは異なり「今あるものをどう直すか」という判断の連続です。図面通りに作るのではなく、経年劣化したコンクリートの状態を見て、補修方法を瞬時に判断する応用力が求められます。

この判断力において、経験豊富な60代、70代の現場代理人のスキルが活かされることもあります。

管理組合としてチェックすべきこと

もし、皆さんのマンションの大規模修繕工事で、高齢の現場代理人が紹介されたら 、施工会社に以下の点を聞いてみてください。

「代理人さんはベテランですが、足場チェックの際の安全管理体制はどうなっていますか?」 「もし代理人さんが高所に登れない日の、代わりの検査体制はありますか?」

まともな施工会社であれば、こうした質問に対して「若手の補佐をつけています」「健康診断と毎日の血圧測定を徹底しています」といった具体的な回答が返ってくるはずです。逆に「いやぁ、本人は元気なんで大丈夫ですよ」と精神論だけで返してくる会社は、安全管理に対する意識が低い可能性があります。

最後に

建設現場において「年齢」は、単なる数字ではなく、経験の証(あかし)でもあります。 しかし、物理的な「老い」は誰にでも平等に訪れます。

大切なのは、年齢を理由に一律に排除することでも、リスクに目をつぶって無理をさせることでもありません。「経験という資産」を、いかに安全な形で現場に還元できるシステムを作るか。

それが、これからの人手不足時代における、賢い大規模修繕の進め方なのだと思います。


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