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わが子を性加害者にしないために。「今日の服どっちにする?」から始めたいこと

『今日の服、どっちにする?』

実はこの何気ない問いかけが、将来、我が子を性加害者にするリスクを遠ざける『尊重の種まき』になるんですす一見、無関係に見えるこの会話が、なぜ子供の心のブレーキになるのか。スクールカウンセラーとして、そして一人の親として考えたことをまとめました。

遭ってほしくないけれど、子供が性被害に遭った時に、対峙したりする際のケアについては、ある程度の自信があります。なんとなく見通しはつけられます。
ただ、本当は被害に遭わないことの方がものすごく大事なはずです。

そう考えていくと、予防することや、加害を食い止めるというがとっても大事。
ただ、非常に難しいような気がしてしまいます。その難しさと今できることは何か、子どもに対して実際にやっていること、やろうとしていることについてまとめます。

「社会の誤った認識」という壁

さて、性暴力の予防への難しさがどこから来ているのかと考えると、一つは社会の問題があります。
私たちの社会では、「思考の誤り」や「性暴力に関する誤った認識」が深く埋め込まれているからと感じることがあります

例えば、いろんな事件での反応を見ると…こんな反応はありませんか?

被害者への非難: 「酒を飲みすぎて酔っぱらった方が悪い」「そんな格好をしていたからだ」「隙があったからだ」
被害の過小評価: 「少し触られたくらいでおおげさだ」
加害の正当化: 「加害者だって悪気があったわけじゃない」
被害者像の固定化: 「本当に被害を受けていたら、そんなに明るく振る舞えるわけがない」

参考書籍1をもとにしてさいさいが作成

これらは、よくある性暴力に関する「社会の誤った認識」です。

これらの「社会の誤った認識」が性暴力者の考えを作る一部分になると思われます。

加害を正当化する「思考の誤り」

例えば、こんな考えです。

「そんなに傷つけていない」
「大したことじゃない」
「少し触ったくらいでおおげさな」
「相手(被害者)にも落ち度がある」
「相手も誘惑してきた」
「酒を飲みすぎた方が悪い」
「自分もつらかったから仕方がない」
「自分こそ被害者だ」
「自分ばかりひどい目に遭っている」
「バレなければいい」
「自分だけでなく、相手もやりたいはずだ」
「実は強引にされる方がいいんだ」

参考書籍1と参考書籍2をもとにさいさいが作成

これらは、実際は間違っている考えてであり、性暴力につながる行動の他、自分の行動に対する責任を回避することにつながる考え方です。
これらを「思考の誤り」と呼びますが、この「思考の誤り」は文脈を無視して考えると、あるあるじゃないですか?

「自分ばかりがひどい目に遭っている」と思って何か行動してしまうこと、私はあります。やったことない!と断言できることはないです。
それでも、暴力的な行動はやったことがない!とは断言できます。

こういった性暴力につながる「思考の誤り」は複数あり、これらの何重もの「思考の誤り」の先に性暴力が発生すると考えられています。

ただ、あるあると言ったように程度の差があれど、こうした「思考の誤り」は、多くの人が身に着けているものです。思春期以降は、親の考えや態度などの枠を超えて身につけることも多いです。

社会全体に蔓延している「社会の誤った認識」が「思考の誤り」につながることもあるように感じます。例えば、「そんな格好をしていたからだ」という認識から「そんな恰好をしている人ならば誘っているに違いない」「そんな恰好をしているならばこれくらいで怒らないだろう」という「思考の誤り」が近いことはよくわかると思います。

言うまでもなく、どんな格好をしていたとしても明確なYESがない限り性的な行為をしていいことはありません。どんな格好をしても同意がないままに他者に触れていい、性的な内容を言っていいということはありません。

が、しかし、「社会の誤った認識」と一部の「思考の誤り」は非常に近い。
このあたりは、自分一人の力でどうにかなるものなのだろうかと、壁にぶつかるような思いを抱きます。

ハチドリの一滴として、身近なところから

けれども、山火事を消そうとしたハリドリの一滴のように、私たちの行動一つ一つが「社会の誤った認識」を変える力があるので、今できる範囲を変えていくことを心掛けたいとことです。

コミュニティ心理学の考えでは、個人も社会も相互に依存しているので、変化は波及すると考えられていますし、個人が社会に社会が個人に影響するとも考えられています。(詳しくは、ケリーの4原則とブロンフェンブレナーの生態学的視座という考え方です!今後これについても扱いたいです)

というわけで、身近にできることをやっていくのが、社会の変化には大事です。私の身近といえば、家庭と職場なので、ことあるごとに「これが大事!」「その認識間違っているよね?」と大事にしていきたいと思います。

「4つの壁」を意識して、親にできること

では、実際に家でなにができるのか。
これを考えていくには犯罪者がなぜ加害に行くのか、逆に私たちはなぜ犯罪行為をしないのか。
先ほど「思考の誤り」は程度の差はあれど多くの人が持っているという話をしました。
そのうえで、複数絡まると性暴力という行動につながることがあるという話をしましたが、そもそも犯罪に行くまでの間には4つの壁と言われる心のブレーキがあると言われています。

1. 動機の壁
通常、自分の生活が順調で満足していれば、他人を傷つけようとは思いません 。しかし、強いストレスや逆境が重なり、「自分ばかりひどい目に遭っている」という被害感や不満が募ると、この壁が揺らぎます 。
嫌なことを忘れるための気晴らしとして性的刺激を求めることが癖になり、次第に「実際にやってみたい」という強い動機が生じた瞬間に、この壁を越えてしまいます 。

2. 良心の壁(内的なバリア)
動機が生じても、次には「やってはいけない」という内的なブレーキが働きます 。しかし、加害に至る際は「そんなに傷つけていない」「バレなければいい」といった「自分勝手な思い込み(思考の誤り)によって自分に言い訳をし、この壁に穴を開けてしまいます 。

3. 外的なバリア
心理的な壁を越えた後には、物理的な距離や機会のなさといった外的な障壁が存在します 。しかし、加害者は知力や体力を尽くし、様々な工夫を凝らしていわば「梯子」を使うようにして、被害者に接近しこの壁を乗り越えます 。

4. 被害者の抵抗
最後に立ちはだかるのが被害者の抵抗という壁です 。しかし、力ずくや欺瞞(だまし)といったあらゆる手段を用いることで、この最後の壁をも突破してしまいます 。


この「4つの壁」という心のブレーキを使って考えてみると、親にできることは、最初の壁をいかに厚くするのかという点です。

・普段から動機の壁を越えさせないようにする
・子どもの思考の誤りに気付いて自分で違う策を考えられる

という2点なのかなと思います。

動機の壁を低くする

今の生活で「自分なんて…」「どうせ…」などの投げやりな気持ちを抱えていたり、ストレスの対処法が少ないことで、性的な刺激によって解消していくというのが問題につながっていくことが多く、これが動機につながっていきます。

つまり、ここで大切になるのは、ストレスの対処法のバリエーションを多くすること、何が嫌だったのか、どんな風にしたいのか、という自分の気持ちを表現できることかなと思います。それが生活の満足感につながります。

1. 自分が傷ついた時に、それを表現して受け止められた経験
2. 自分の感情を否認せず、大切にすること
3. 「こういう風に思って、こう考えて、だからこうしたんだ」ということを安全に話せる関係性

こうした土台があることで、結果としてストレス対処や自分の気持ちを健全な形で処理できるようになるのかと思います。
なので、これらの土台が何よりも重要だと感じています。

また、ストレス対処では、「一人で」「みんなで」「すぐできる」「後でできる」といういろんなバリエーションのストレスコーピングを持ってることが推奨されていています。
なにかストレスが高い出来事があり、不全感があったとしても、健全に対処できるようにするということがゴールなのかなと思います。

繰り返しになりますが、そのためには、本当に自分の気持ちをきちんと受け止めてもらえるという安全性を築けているかという部分です。
安全な関係を作って要られれば、自分の状態や感情を表現する手段をいろんなバリエーションで持っていくことが大事です。

それで、動機の壁をなるべく超えないように働きかけにつながるかなと思います。

思考の誤りのパターンに気が付く

上記の土台があり、会話がきちんとできていれば「こういうパターンがあなたにあるよね」という話が親子ですることも可能なはずです。
子どものパターンの予測して、それを親子で責めずに話せるということですね。

例えば「ばれなきゃいいってさぼる傾向があるよね」「それって根本的な解決にはならないよね」という話です。
こいった話ができることが、思考の誤りを修正していくことにつながると感じます。

境界線と真の同意

それらがあったうえで、大事なことは境界線の意識とか真の同意についてちゃんと分かっていることが大事です。
境界線=パーソナルスペース
真の同意=お互いがYESに納得していること

これは思考の誤りに影響します。

ただ、上記の関係がないと「真の同意」について体験したことがないので、どんな状態が心地よい状態なのか子供が理解することが難しいですよね…。

というわけで、何より子供との対話を大事にしていい関係性を築き、大人が子どもの境界線を守ること、真の同意が得られるように接することが大事です。

方針としては、
1. 感情を表現する手段をたくさん持っておく
2. 感情に気づき、伝えられる
3.決めつけない、支配的にならない

具体的なレベルとしては、話をきくこと
「話を聞いてもらえるぞ」と子供が思えるところかなと思います。

「こう思ったの?」という確認をする。
「こうしたかったんだね」というすり合わせをする。
親が聞いた内容が合っているかどうかを確認する
その日によって気分は違うので、今日はどうかを確認する。

「今日は何が着たい?」
「どの服にする?」
「今日は、外であそぶから動き易い服がいいと思う」

など、子供の意思を聞いた上で状況との擦り合わせをするのが大事です。
服じゃなくても良いのですが、親子感の擦り合わせが、練習になります。

「同意」の実践練習: 「親が決めた服を着せる」のは一方的な支配ですが、「これにする?それともこっち?」と聞くのは、相手の境界線を尊重する練習になります。

「不全感」の解消: 自分の選んだ服を認められる経験は、「自分には選択権がある」という気持ちや確信を生みます。こういった小さな確信が将来「どうせ自分なんて」という投げやりな態度防ぐ土台になります。

「擦り合わせ」のスキル: 自分の意見と相手の意見が違うとき、暴力や無視で解決するのではなく、対話で落とし所を見つける。この「調整する力」こそが、性的な場面での「同意」の確認に直結します。

あとは、例えば犯罪系のニュースなどがあった時に、「被害者はなんか悪くないよね。どんな理由があったとしても、それを選択したのはこの人自身だよね」という話をきちんとしていく。真の同意が得られてない行動はいけないこと、いろんな理由があっても行動を選択したのはこの人の責任。という態度を示すことです。

これらの態度が社会にあった誤りや思考の誤りを修正できるチャンスです。

親ができることってなんだろうと悲観的な気持ちになることも多いですが、大きなことじゃなくて一つ一つできると良いのかなと思います。

当たり前の日常の中で『尊重』を徹底的に積み上げていくことが、唯一にして最強の予防策なのかなと整理できました。

4つの壁を意識して、子どもの気持ちを受け止めつつ、意見をすり合わせていく。大きな変化も一歩ずつ、今できることをしていきたいと思います。

このnoteは下記の2つの本を参考にして書いております。
どちらも読みやすいので、興味がある方はぜひ読んでみてください。

参考書籍1

こちらは、支援者向けになりますが、保護者の方が読んでも参考になる内容が多いかと思います。

参考書籍2

今後は、今回少し触れた「ケリーの4原則」「ブロンフェンブレナーの生態学的視座」といった心理学の視点についても、子育てや日常に引き寄せて書いていく予定です。

大きな変化も、まずは身近な対話から。また覗きに来ていただけたら嬉しいです。

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