正しい病人
ある時、麻酔をかけて受ける検査をすることに
帰りは、タクシーか迎えに来てもらうようにと言われたので
夫に車で迎えに来てもらう事にした
仕事が忙しいから平日ではなく土曜日に通院したかったけど
週に何度か通う必要があるので、会社帰りにすぐに行けるようにと
会社の近くの病院に通っていた
その日も、最終の診察時間に受診した
麻酔から覚めても、体が重く、意識もボーっとしていた
迎えに来てくれた夫の車に乗ってぐったりとしていると
夫も仕事が忙しかったのだろうと思うが
開口一番に
「なんで、仕事帰りのこんなに疲れてるときに迎えに来ないとあかんねん」
「こんな街の中の混んだところに車で来るなんてどれだけ大変かわかってるのか」
「あーごめん、忙しいのに悪かったね」
「ほんまに、なんでこんなこと、まだ飯も食っていないのに」
「自分でタクシーで帰ったらいいやろ、なんで俺が巻き込まれなあかんねん」
え?この人まだ言う?
なに言ってんの?
自分がきてくれるって決めたのに?なにそれ?
しかも、こんなフラフラな私を見てそれ言う?
「え?じゃあなんであたしだけ、痛い注射したり、麻酔して検査したりせなあかんの?」
「何にも悪いことしてない」
「ただ、毎日会社行って、家に帰ってご飯作って、普通に生活してるだけやのに」
「私が何したん?なんでわたしだけこんな痛い目とか嫌な目に合わなあかんの!」
「なんで、あたしだけよ!」
そうなのである
病気は周りを巻き込み迷惑をかける
でも
やっぱり、一番しんどいのは本人である
誰も病気になりたくてなるわけじゃない
自分がしんどい上に
他人に迷惑かけていることもわかってる
何でこうなったか
あの時の行動
あの時の言葉
あの時の判断
どれが何処で間違ったのか
私が悪いのか
私だけが悪いのか
そして
だから
私だけが罰をうけるのか
自分の体 自分の心 自分の人生
他人の目 他人の時間 他人の人生
全てに影響する
私は罰を受ける
自分のしてきたことへの答えがこれなのか
長く終わらない問い
答えのない問い 誰も知らない答え
この時間は何のため誰のため
私が持ってる
私が過ごす
こんな事知ってる
時に重くのしかかるのは
心配という名の善意
思いやりという悪魔
必ず勝てない
必ず支配される
されなければならい
抗うことは出来ない
わたしは
ありがとうとごめんなさいのお面をつける
誰も悪くない
鬼はいない
けれど
仮面の私がいる
仮面をつけないと
誰にも何にも対峙出来ない
私はいつしか作られた
可哀想な人だから
誰もが善人でありたい
誰もが自分の善意を知りたい
誰も悪くない
みんないい人
だから
私はお面を被る
あなたのようには出来ない人
そうしないと
あなたの善意は満足しない
あなたより可哀想な人
だから
心配だ
だから
思いやりを持って接する
お加減いかがですか?
調子はどうですか?
大丈夫ですか?
とてもありがたい
それはとても尊い
何に対して
誰に対して
いつも正しい
だけど
私は仮面を被らないといけない
鎧を纏わないといけない
全身が
心も体もその全てが
痛い
ここにはいたくない
ここにはいたくない
ここにはいられない
痛くて
進めない
ほかの場所へ
次のところへ
私のあるべき場所へ
そしてまた
私も善人でありたい
人の善意を無にしない
そうすることのできる正しい自分
わたしの善意を知りたい
素直で正しい自分
仮面の下の顔を隠して
今日も正しい私が
どこかで善人と過ごす
それはまさに尊いこと
のように
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