CTRが小さいのに血圧が下がる
― PHを疑う透析患者のDW評価を、10年目CEの視点で再考する ―
透析室で10年働いていると、
「CTRが小さいのに、なぜか透析後半で血圧が下がる患者」に必ず出会います。
・CTR 45%前後
・Xpで肺動脈陰影が目立つ
・浮腫は目立たない
・透析後半に血圧低下
この組み合わせは、**容量過剰ではなく“肺高血圧(PH)+相対的低容量”**を疑うサインです。
今日はその考え方を整理します。
1. CTRは「左心容量」、PHは「右心圧負荷」
CTRは左心系の容量指標です。
一方、PHは右心系の圧負荷病態です。
つまり、
CTRが小さい=容量不足の可能性
PHがある=右室は圧負荷でpreload依存
この2つは矛盾しません。
むしろ問題はここです。
右室が圧負荷状態なのに、さらに除水で前負荷を削ってしまうこと。
2. 透析後半の血圧低下は“DW低すぎ”のサイン
PH患者では右室はpreload依存性が非常に高い。
少しの除水でも心拍出量が落ちます。
透析後半低血圧が出る理由は明確です。
循環血液量低下
右室充満低下
心拍出量低下
血圧低下
この時にやってはいけないのは、
「CTRが小さいからまだ引けるはず」という思考。
ここが落とし穴です。
3. DWは“最も軽い体重”ではない
10年透析をやってきて確信していることがあります。
DWは
最も軽い体重ではなく、最も血行動態が安定する体重です。
PH患者においては特に:
低血圧が出ない
recoveryが良い
透析後倦怠感が少ない
HRが過剰に上がらない
これが評価軸です。
CTR単独評価は危険です。
4. 私が現場でやるDW再評価のステップ
① DWを0.2kg上げる
急激には動かさない。
② 1〜2週間観察
透析後半血圧
症状
心拍数
③ 改善すれば維持
改善しなければ再評価。
ここで重要なのは、
“攻めない透析”に切り替える勇気。
5. CEとしてできる具体的補助
① UFRを下げる
8 mL/kg/hr以下、可能なら6以下。
② 透析時間延長
4h → 4.5〜5h。
③ 除水プロファイル
後半除水を緩める。
④ 低温透析
35.5–36.0℃は血圧安定に有効。
⑤ HDF導入
血行動態安定に寄与。
6. シャント血流量を忘れてはいけない
透析患者のPHは、
高拍出
AVシャント流量過多
が原因のことがあります。
Qa >1500 mL/minなら要注意。
2000なら医師へ積極報告。
PHは「肺の病気」ではなく
「循環の問題」であることが多い。
7. PH透析の本質
通常透析は:
“dryを目指す”
PH透析は:
“右室を守る”
この違いが分かると、DW評価が変わります。
8. 明日からできるアクションプラン
① 透析後半の血圧低下パターンを記録する
② CTR小さい=dryと決めつけない
③ DW変更は0.2kg単位で
④ UFRを計算し直す
⑤ Qa測定を確認する
まとめ
CTR 45%でPH疑い、透析後半低血圧。
それは
「まだ引ける」ではなく
**「引きすぎている可能性」**です。
透析医療は数値管理ではなく、循環管理です。
DWは固定値ではない。
その人の心臓が最も安定するポイントを探す作業です。
10年やってきて思うのは、
透析は“軽くする医療”ではなく、“守る医療”だということ。
いいなと思ったら応援しよう!
いただいたサポートは医療系クリエイターSAKAIの活動費として活用させて頂きます。