【裏技】管理会社の「決算月」と「ノルマ」を利用せよ。修繕工事費を安く抑える、プロの交渉術
マンションの理事会役員をしていると、管理会社から「ポンプ交換」や「照明のLED化」など、様々な修繕工事の見積書が回ってきます。
そのとき、皆さんはどこを見ていますか? ほとんどの方は、一番下の「合計金額」を見て、「高いなあ」「もう少し安くならないか」と考えるのではないでしょうか。
もちろん、金額の多寡を精査することは大切です。しかし、現役のフロント担当者である私からすると、実は金額と同じくらい、あるいはそれ以上に重要な要素があります。
それは、『いつ発注するか』というタイミングです。
スーパーのお惣菜が、閉店間際になると半額シールが貼られるのと同じように、管理会社の工事見積もりにも『売り切りたいタイミング』が存在します。この「時期」を戦略的に狙うだけで、無理な値引き交渉をせずとも、数十万円単位でコストを削減できる可能性があるのです。
今回は、管理会社の社員だからこそ知っている「社内事情」を逆手に取り、理事会と管理会社がWin-Winになれる、賢い発注のタイミングと交渉術についてお話しします。
管理会社も「数字」に追われる営利企業である
まず大前提として、管理会社はボランティア組織ではなく、営利企業です。 そして、私のようなフロント担当者や、支店・営業所には、必ずと言っていいほど『売上目標(ノルマ)』が課せられています。
管理会社が得る利益には、毎月定額で入ってくる「管理委託費」と、修繕工事などを請け負った際に発生する「工事売上」の2種類があります。 前者は毎月固定ですが、後者は提案営業の成果によって変動します。つまり、担当者の評価を分けるのは、この「プラスアルファの工事をどれだけ取れたか」にかかっていることが多いのです。
ここで重要になるのが【決算月】です。 多くの企業は3月が決算(9月が中間決算)です。この時期が近づくと、社内は独特のピリピリしたムードに包まれます。「今期の目標まであと〇〇万円足りない」「なんとか今月中に契約を取れ」という号令が飛ぶのです。
この心理状態にある担当者にとって、喉から手が出るほど欲しい案件とは何でしょうか? 数千万円規模の大規模修繕工事? いえ、違います。規模が大きすぎると準備に時間がかかり、今期の数字に間に合わないからです。
彼らが一番欲しいのは、数十万円から数百万円程度の『中規模修繕』です。 例えば、給水ポンプの交換、共用部照明のLED化、鉄部塗装工事など。これらは理事会の決裁さえ降りればすぐに着工でき、数字を作りやすい。 ここが、我々理事会側の「狙い目」になります。
プロだけが知る「完工ベース」の罠に注意せよ
「なるほど、じゃあ3月に発注すれば安くなるんだな」と思われた方、ちょっとお待ちください。ここに大きな落とし穴があります。
管理会社の売上計上のルールには、主に2つのパターンがあります。
契約ベース:契約書を交わした時点で売上になる
完工(検収)ベース:工事が完了し、引渡しが終わった時点で売上になる
建設業法の兼ね合いもあり、多くの管理会社は【完工ベース】を採用しています。 つまり、3月末が決算の会社の場合、3月中に「契約」しても意味がないのです。3月31日までに「工事を終わらせて、請求書を発行する」状態にしなければ、今期の成績としてカウントされません。
そのため、3月に入ってから「安くしてくれたら発注するよ」と言っても、担当者からは「今からでは3月中の完工は無理なので、値引きもできません」と断られてしまいます。
では、いつ動くべきか。 正解は『1月~2月上旬』です。 この時期に、「3月末までに工事を完了させる」というスケジュール感を共有した上で交渉に臨むのです。
担当者をその気にさせる「魔法の交渉フレーズ」
具体的な交渉の進め方をご紹介します。 ただ闇雲に「相見積もりを取るぞ」「安くしろ」と圧力をかけるのは悪手です。それでは担当者のやる気を削ぎ、クレーマー認定されて終わります。
重要なのは、「あなたのノルマ達成に協力するから、その分還元してね」というスタンスを見せることです。
もし、手元に急ぎではないけれど、いずれやらなければならない工事の見積書があるなら、1月~2月の理事会で次のように切り出してみてください。
『この工事、急ぎではないけれど、もし3月末までに工事完了ができるスケジュールで進めるなら、私たちも臨時理事会を開くなどして承認手続きに協力します。 その代わり、御社の決算時期の売上に貢献するわけですから、金額の方も【決算特別価格】として、社内決裁が通るギリギリのラインまで頑張ってもらえませんか?』
この言葉は、ノルマに追われる担当者にとって、まさに救いの手です。 「理事会が協力的で、しかも確実に3月の数字になる案件」となれば、担当者は上司に対して「この案件は絶対に落とせません。利益率を少し削ってでも受注させてください」と、自ら社内稟議を通して値引きを勝ち取ってくれるようになります。
これが、担当者を「敵」ではなく「味方」につける交渉術です。
まとめ:カレンダーを見て戦略を練ろう
管理会社を「搾取する敵」とみなして戦うよりも、彼らの論理(決算やノルマ)を理解し、それを満たすようなボールを投げてあげる方が、結果として組合にとって大きな金銭的メリット(コスト削減)をもたらします。
今回の話は「3月決算」の会社を例にしましたが、会社によっては12月決算や6月決算の場合もあります。
まずは次回の理事会で、お手元の【重要事項説明書】や【管理委託契約書】を確認してみてください。管理会社の名称や所在地の近くに、決算月に関する記載があるはずです(あるいは、担当者に雑談ベースで「御社の決算は何月?」と聞けば教えてくれます)。
もし決算月が近ければ、今棚上げになっているあの修繕工事が、思わぬ安値で発注できるチャンスかもしれません。 カレンダーを確認すること。それが、賢いマンション経営の第一歩です。
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また、今回のテーマである「コスト削減」や「管理会社との付き合い方」に関心を持たれた方には、以下の過去記事もおすすめです。あわせて読むことで、より交渉力が磨かれるはずです。
▼ 工事費を下げるための「見積書」の実践的なチェック方法はこちら 『大規模修繕費を20%下げる、見積書の「見方」と「叩き方」』
https://note.com/sakang0/n/nd00eaacd793b
▼ 管理会社と「敵対」せず「利用」するためのマインドセットはこちら 『【経営論】 管理会社の「利益」を尊重せよ。営利企業の論理を知ることが健全な運営への第一歩』
https://note.com/sakang0/n/n4a38db5054d5
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