「常に相見積」は悪手です。優秀な業者から見捨てられるマンションの共通点と、有事の「特急券」の買い方
マンションの理事会において、「コスト削減」は永遠のテーマです。 「修繕工事や設備点検の際は、必ず3社から相見積もりを取って一番安いところに発注する」——これを理事会の絶対的なルール(正義)としているマンションは少なくありません。
確かに、無駄な支出を抑えることは重要です。しかし、現役の管理フロントとして断言します。 「過度な相見積もりと値切り」を繰り返すマンションは、最終的に最も高い代償を払うことになります。
今回は、管理会社や専門業者が絶対に口には出さない「業者との付き合い方の裏事情」と、マンションを守るための「損して得取れ」の戦略についてお話しします。
■ 「またあのマンションか…」業者が仕掛ける静かなる逆襲
見積もりを作成するのはタダではありません。業者は現地を調査し、図面を読み込み、協力会社と調整して時間と人件費をかけて見積書を作成します。
毎回のように相見積に参加させられ、結局「金額が高いから」という理由だけで否決され続けると、業者はどう思うでしょうか。
答えは簡単です。「あのマンションは、どうせうちには発注しない(当て馬にされるだけだ)」と学習します。
その結果、何が起きるか。 次にあなたが見積もりを依頼したとき、業者は「見積辞退」を申し出るか、あるいは「断り前提の超高額な見積(これなら受注してもいいと思えるぼったくり価格)」を出してくるようになります。 気づけば、まともな金額で引き受けてくれる優良な業者が周りから消え去り、質の低い業者しか残らなくなるのです。
■ 深夜の漏水トラブル。業者は「どのマンション」に急行するか?
マンション管理において最も恐ろしいのは、平時のコストではなく「緊急時のトラブル」です。 深夜の漏水、エレベーターの突然の停止、給水ポンプの故障……。一刻も早く復旧させなければ、居住者の生活が完全にストップしてしまいます。
そんなパニックの最中、業者の携帯が同時に鳴ったとします。
A:普段から1円単位で値切り倒し、文句ばかり言うマンション
B:普段から適正な利益を出させてくれ、気持ちよく取引しているマンション
業者は絶対に「Bのマンション」へ真っ先に駆けつけます。
業者も人間です。「いつもお世話になっているあの組合さんのためなら、多少無理をしてでも最優先で対応しよう」と動くのが人情です。逆にAのマンションには「現在手一杯なので、明日の午後になります」と冷たくあしらわれてしまうでしょう。
■ 究極の防衛策は「損して得取れ」
優秀な設備点検業者や修繕業者は、マンションにとって「コストを奪う敵」ではなく、「資産と生活を守るパートナー」です。
毎回最安値を探すのではなく、「たまにはこの業者にしっかり利益が出る仕事を発注しよう」という度量を持つことが、実は最大の危機管理になります。 その瞬間の見積もり金額だけを見れば「少し損をした」と感じるかもしれません。しかし、その差額は「緊急トラブル発生時の最優先対応チケット(特急券)」を買うための保険料なのです。
「相見積もり」はあくまで適正価格を知るための手段であり、業者を叩くための武器ではありません。 本当に賢い理事会は、業者に適正な利益を落とし、「いざという時に全力で助けてもらえる関係性」を戦略的に構築しています。
あなたのマンションは、業者から「助けたい」と思われる組合でしょうか? それとも「関わりたくない」と思われる組合でしょうか? 次回の理事会で、ぜひ一度立ち止まって考えてみてください。
【あわせて読みたい参考記事】
相見積もりを取る前の「正しい準備」については、こちらの過去記事でも解説しています。ぜひ併せてご覧ください。
そもそも、業者には何を依頼するべきか理解していますか?「仕様書」の読み解き方は必読です。 [管理会社社員が教える、見積書を疑う前にやるべき「仕様の整理」]
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