正しさがぶつかる中学校で⑥空気にされた娘
中2の夏休みが明けた。
「私は空気のように扱われている。」
娘は時々悲しそうに話した。
2人組が組めないときも
行事の役割を決めるときも
ふざけていて娘に体が当たったときも
誰も、何も娘に言わない。
教室に居場所はない。
それでも毎日、席に座る。
そんな状態が続いていた。
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ある日、小学校のときに
娘のグループ外しをしたAが
また関わってきた。
今度は、授業で使う教材を隠された。
娘は探した。
でも見つからない。
仕方なく、その教科の担当に伝えた。
元担任だった。
「教材がないので
提出期限を延ばしてほしい」と。
でも返ってきたのは
まったく期待と違う言葉だった。
「なくしたんでしょ」
「買い直しなさい」
決めつけだった。
娘は買い直すことにしたが、
少しでも早く提出できるようにと
「必要なページだけ
コピーさせてほしい」
とお願いした。
すると返ってきたのは
「このわがまま娘!」
だった。
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暴言だ。
そう判断した私は
学校に連絡を入れた。
その結果、
教頭と元担任が
娘に謝罪することになった。
元担任は涙を流したらしい。
でも、
それで
何かが変わるわけではなかった。
娘は相変わらず空気のままだった。
Aの机の中から
娘の教材が出てきた。
「あっごめん間違えた!」
それで終わりだった。
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そんな中で、
唯一娘を理解してくれたのが
保健室の先生だった。
「しんどいときは来ていいよ」
そう言ってくれて、
娘は1日1時間だけ
保健室で過ごすようになった。
それでなんとか、
学校に通い続けていた。
体重は3ヶ月で6キロ落ちていた。
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秋、三者懇談があった。
担任に
「何か言いたいことはありますか」
と聞かれた。
娘は勇気を出して言った。
「私は空気みたいです」
「カーストの
一番下にも入っていない」
「居場所がない」
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担任は、表情ひとつ変えずに言った。
「うちのクラスに
カーストなんてありません」
「そういう
マイナスな考えをするから、
自分が空気のように
感じるだけです」
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そして、また始まる。
「クラスメイトのために
汗をかきましたか?」
「泣きましたか?」
「提出物の期限を守りましたか?」
「授業、必死に受けていますか?」
全部、
娘の問題にすり替えられていく。
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さらに話は突然変わった。
「話、元に戻しますね」
そう言って担任は
全く違う話を始めた。
「15歳は昔なら元服です」
「大人になる準備として、
何を頑張るべきか」
延々と演説が続く。
そして娘に聞いた。
「中3では何を頑張りますか?」
娘は答えた。
「受験です」
当然の答えだったと思う。
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でも担任の表情が変わった。
「私の話、わかってますか?」
そこからまた、長い“元服”の話。
そしてもう一度。
「ムスメさん、
中3では何を頑張りますか?」
娘は泣き出した。
すると担任は声を荒げた。
「お前ふてこいな!」
「なんだその態度!」
「人の話聞く態度か!」
「怖い顔して泣くとこか!」
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そのとき娘は
フードをかぶり、
ポケットに手を入れて固まっていた。
態度がよかったとは言えない。
でも——
そこに至るまでの経緯は
完全に無視されていた。
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担任は私に言った。
「お母さん、
こんな娘さん見て
どう思いますか?」
私は答えた。
「娘は、勇気を出して
今苦しいことを話しました」
「それに対して
何も答えてもらえなかったことに
ショックを受けていると思います」
「信頼できないと感じて、
固まっているんだと思います」
「私も同じ質問をされたら
“受験”と答えます」
「それの何がいけないんでしょうか」
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担任は少し笑って言った。
「あー、
家のお手伝いとか
させてないんですかね」
「家の中心として動けるようにって
そういう話をしたかったんですけどね」
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もう、
何も言えなかった。
私は泣いている娘を立たせて
その場を出た。
あのとき、
校長室に行けばよかった。
それを今でも後悔している。
