建築家に依頼するのは“お金持ち”だけ?意外と手が届く予算のリアル
「建築家に頼むなんて、うちはそんな余裕ないし…」
そう思われる方は本当に多いんです。
実際に私たちもよく言われます。
でもちょっと待ってください。
“建築家=高額”というイメージは深堀すると、大体が思い込みです。
確かに無制限にお金をかけられる人だけのものだと思われがちですが、
我々建築家の多くは、限られたご予算の中で、いかにそのご家族らしい暮らしを叶えるかを真剣に考えています。
「え、そんなことまで考えてくれるんだ…」
なんて感じる方も少なくありません。
建築家に頼むという選択肢が手の届くものであること。
この記事ではそんな「ちょっと意外な現実」をお伝えしていきます。
◆「うちは普通の家庭だから…」と諦めていませんか?
テレビや雑誌で紹介されるような建築家の家には、洗練されたデザインや高級な素材が使われているイメージが強く、「特別な人たちの贅沢な選択肢」と捉えられがち。
とくに共働きで子育て真っ最中の30代ファミリーにとっては、
住宅ローンや子どもの教育費、老後の備えなど不安要素が多く、
家にかけられるお金は限られていますよね。
だからこそ「理想よりも現実的な選択をしよう」とハウスメーカーや建売住宅に目が向くのは自然な流れかもしれません。
でも少し立ち止まって、「本当にそれが一番現実的な方法?」と問い直してみませんか?
「建築家にお願いする=何千万円も余計にかかる」というのは誤解です。
だって材料の値段は産地やメーカーが決めてますし、職人さんの手間賃だって計画している土地周辺の相場はそんなに差がありません。
「でも実際にハウスメーカーは75万/坪で販売していることもあるのに、
設計事務所は100万/坪もざらじゃないか!しかも設計料金も別でかかるし、、、」
それもおっしゃる通りです。
ではどこでその差が生まれるのでしょうか?
◆何が入っているの?坪単価というマジック
建築業界では常識のように使われている坪単価。
「建物の総額を建物面積で割ったときの、面積あたりの金額」
というだけのはなしですが、ややこしいのは坪。
まず日常生活では使いませんよね?
坪というのは畳2枚分。長さに直すと1間(けん)×1間。
これがなぜいまだに使われているか?
それは木造の大工さん達は、設計からm寸法の図面が来ても
指図という自分たちの図面を作り直すのですが、
そこで使われる寸法が「尺貫法」だからです。
(図面を引きなおすのは、読みながら自分で図面を書くことで組み立て手順を脳内検討する、昔ながらの知恵です。)
また木造の構造的ルールとして「間四の法」が昔から使われてきており、
坪と㎡の換算式が頭に入っていれば、土地の面積からどの程度の広さの建物が建つか、すぐに検討をつけることもできるなど便利な単位なんです。
少し脇道にそれてしまいましたが、そんな理由で坪という単位は使われています。
その時の「建築総額」というのがやっかいで。
住宅展示場でみられる建物はおおむねオプション品がもりもりで。
「あのレベルでお願いします!」と相談に行くと、75万/坪だったはずが
あっという間に100万~/坪になることもざらです。
また予想外の物が「そもそも建築総額に含まれておらず別途です」ということもあるある。
例えばエアコン、照明器具(中の電球だけ別途なども)、外構工事…etc。
我々建築家の場合は「引き渡し翌日に引っ越して生活できる」状態で建築総額をお伝えしています。エアコン、電球など生活に必須なものを別途費用にすることはありえません。
◆どこかで会ったことありましたっけ?
検討中のハウスメーカー、どこで知りましたか?
TVCM?住宅展示場?雑誌や新聞などもありますよね?
ではその費用はどこに含まれているでしょうか?
そう、みなさんの建築費に散らして混ぜ込んであります。
ここで利益率の話をしましょう。
設計事務所、工務店、ハウスメーカー。それぞれどの利益率だと思いますか?
①10~15% ②10~20% ③35~50%
答えは…
①設計事務所10~15%(そんなにもらえたら万々歳)
②工務店10~20%(10%はかなり良心的。逆に心配しちゃう)
③ハウスメーカー35~50%(そりゃそうですよね)
つまりハウスメーカーは表向き75万/坪だけど、建築に使っているのは26万~35万/坪ってことです。だってモデルハウスや営業所の人件費や土地代、光熱費だってただじゃありません。TVCMなんてモデルさんなどを使って大々的にやったらそれはもう…。
一方、設計事務所は固定費といえば事務所費用とコピー機のリース代、光熱費とスタッフの人件費程度。国交省の計算式では10~15%が適正値ですし、
人件費の積み上げでいったら20%越えも当たり前。
でもそこを我々の良心で10%前後に抑えていることは
できれば心の片隅に置いてもらえるとありがたいです。
次に工務店は大きなところであればモデルハウスもあるかもしれませんが、
自社がそのままモデルハウスになっている程度でも、十分に立派です。
支店も全国規模はざらで、地域に1~2店あるのが大多数でしょう。
抱えている職人さんが正社員の場合、人件費は高くつきます。
また現場に入る前に材料を確保したり、材料を加工する倉庫も必要ですね。
(逆にそれなりの規模なのに加工場がないところはお察しです…)
代金も後払いなので、完成するまではお金が出ていくばかり。
そのため20%が普通で、10%は相当効率化されているか、お人好しなのか…。
設計事務所は図面は引きますが、建物を作りませんので工務店とセットです。
そのため、ハウスメーカーは35~50%。設計事務所+工務店は20~35%。
ね?利益率でみると別に設計事務所って高くないですよね?
◆それってあなたの要望ですよね?
建築家に家を頼むと、設計料が追加でかかるイメージから「結局高くつくのでは?」と心配されることが多いです。
でも実際に建築家と家づくりをした人の中には、
「むしろコストを抑えられた」「余計な出費がなくなった」と話す方も少なくありません。
なぜでしょうか?
それは建築家は設計の段階から生活スタイルや将来設計に沿って、
無駄のない“必要な空間”を考えてくれるからです。
たとえば、南向きの窓を効果的に配置して自然光をたっぷり取り入れたり、風の通り道を意識して設計したりすることで、冷暖房に頼らずとも快適に過ごせる家になります。
これは、住んでからの光熱費の削減につながる、見えにくいけれど確実なコストカットです。
また、家事や育児の導線をスムーズに整えたり、家族一人ひとりの「使いやすさ」に合わせて収納を設けたりすることで、将来的なリフォームの必要性もぐっと減ります。
さらに、建築家は「家を建てるプロ」であると同時に、「暮らしを一緒に設計してくれる伴走者」でもあります。
子どもが成長したときの使い方や、老後に暮らし方が変わったときの可変性まで視野に入れて提案してくれるからこそ、住めば住むほど心地よく感じられる家ができるのです。
初期費用だけを見れば少し高く感じるかもしれません。
でも、10年、20年、そして30年後までを見越した“価格以上の価値”が、その家には詰まっているのです。
◆「わからない」からこそ建築家と話すことで、
家づくりのモヤモヤが晴れる
「どこに相談したらいいかわからない」「自分たちの理想の家がイメージできない」——そんなふうに感じたときこそ、建築家との出会いのチャンスです。建築家に相談する=設計を依頼する、というわけではありません。まずは話してみるだけでも、自分たちの考えや優先順位が整理されていく感覚を味わうことができます。
建築家は、お施主さんが言葉にできていない願いや不安を丁寧にすくい上げ、理想のカタチに落とし込んでいくプロです。「こんなこと聞いていいのかな?」「まだ土地も決まってないし…」という段階でも大丈夫。むしろ、初期段階から相談することで、土地選びのアドバイスや、予算配分の考え方など、家づくり全体を見渡した視点での提案がもらえます。
さらに、設計の初期段階でしっかりと予算や希望の優先順位を共有しておくことで、「いらないものにお金をかけず、本当に欲しいものに集中する」家づくりが実現します。完成後には「ここまで自分たちらしい家になるなんて」と、驚きと満足感が待っていることも。
何も決まっていない状態は、可能性が一番広がっているときです。だからこそ、「何もわからない自分たちだからこそ、建築家に相談してみる」。それが、理想の住まいづくりへの一番の近道かもしれません。
◆予算の「見える化」と「対話」が、安心を生む家づくりに
建築家との家づくりは、感覚的なイメージだけで進むものではありません。実はとても論理的で、計画的です。
なかでも費用面に関する不安を和らげてくれるのが、「予算の見える化」と「丁寧な対話」。
設計の初期段階から、家づくりにかけられる全体予算を明確に共有し、その中で何を優先すべきかを一緒に整理していきます。
たとえば「外観よりも家事動線にこだわりたい」「リビングは広くなくても光はたっぷり取り入れたい」といった本音が出てくることで、お金をかけるべき部分と、抑えてよい部分が自然と見えてくるのです。そうした対話を重ねていくことで、建築家は限られた条件のなかでも“わが家らしい最適解”を導き出してくれます。
◆暮らして実感する「設計のちから」と“価格以上の価値”
建築家の仕事は、ただのデザインではありません。実際に暮らす人の生活リズムや家族構成、性格までを丁寧に読み取り、それを形にするのが彼らの設計力です。日当たりの心地よさ、風の抜け方、家事のしやすさ、子どもの動線…その一つひとつに工夫が施されているため、暮らすほどにその価値を実感できます。
また、素材の選び方ひとつにも理由があり、コストを抑えながらも質感や雰囲気にこだわることで、「予算以上に感じられる満足感」を生み出してくれます。住んでから「ああ、この家でよかった」と感じる瞬間が増えていく――それこそが、建築家とつくる家ならではの魅力なのです。
まとめ:「うちはムリ」じゃなくて、「うちだからこそ」の家づくりへ
「建築家に家づくりを頼むなんて、特別な人の話」と感じていた方も、少し見方が変わってきたのではないでしょうか。
実は、建築家との家づくりは贅沢な選択肢ではなく、限られた予算の中でも“わが家らしい暮らし”を叶える現実的な方法のひとつ。
無駄のない設計や長く快適に住める工夫によって、初期費用以上の価値を生み出します。
また、「何を大事にしたいか」「どんな暮らしがしたいか」といった漠然とした思いも、建築家との対話の中で自然と形になっていきます。
土地探しや予算配分の段階から相談できるのも、心強いポイントです。
つまり、建築家に依頼することは、「理想の暮らし」に向き合うきっかけであり、不安を希望に変える一歩でもあるのです。
もし「うちはムリ」と思っているなら、それは“思い込み”かもしれません。
むしろ“うちだからこそ”建築家という選択肢がふさわしいかもしれない。
そんな可能性に、ぜひ目を向けてみてください。
理想の家づくりは、あなたのその一歩から始まります。
