ラクロス部の情けない先輩
大学受験で第一志望に落ちて、龍谷大学へ進学した。
第一志望に落ちるってことは、私は勉強のセンスがないってことだろうなーと思い、大学では勉強以外にも何か新しいことを始めることにした。
勉強だけに時間を費やしてもしょうがないだろうから。
そして出会ったのがラクロスだった。
学校の授業が終われば毎日グラウンドへ向かい、夜まで練習。
土日も朝から練習。
気付けば日焼けで肌は真っ黒。
新しい事を始めて、新鮮で、毎日が楽しかった。
でも、夏になる頃には少し苦しくなっていた。
友達はおしゃれをして、アルバイトをして、大学生活を楽しんでいる。
でも、私は毎日汗だくでひたすらボールを追いかけている。
別にラクロスを辞めたいわけじゃないけど‥
でも、この生活を繰り返して四年間終わるのかなぁ‥
そんなモヤモヤを抱えながら毎日を過ごしていた。
そんなある日だった。
練習が終わってみんなで集合している時に、
久しぶりに四年生のゴーリーの先輩が現れた。
そういえば、しばらくその先輩は練習に来ていなかった。
就活で忙しいんだろうと思っていた。
先輩はみんなの前で、堰を切ったように急に話し出した。
「今まで練習に来なくてごめん!!!!逃げていてごめん!!!
これからは心を入れ替えて頑張るから!
だからもう一度ラクロスをやらせてほしい!!!」
それを聞いて察した。
あー、就活じゃなかったのか。
ラクロスが苦しかったのか。
ラクロスから逃げてたのか。
みんなの前でひたすら謝る先輩は、とても情けなかった。
でも、私はその姿に救われた。
なんか泣きそうになった。
あー、四年生でも苦しいのかって。
先輩たちはみんなラクロスが楽しくてしょうがないんだと思っていた。
でも、そうじゃないのかーって。
じゃあ、別に私も苦しみながら続けたって良いかー、
悩みながら続けても良いかー、って、
すごく気が楽になった。
この先輩ともっと一緒にいたいと思った。
先輩と過ごすには、ゴーリーになるしかないと思い、ゴーリーへ転向した。
先輩と一緒に練習できるなら頑張れるかもって思った。
ゴーリーになってからは毎日、先輩が付きっきりで教えてくれた。
ウォーミングアップ
ポジショニング
クロスの構え方
ボールが怖い時の心の保ち方‥
体が小さくて、筋力もなくて、何もできなかった私に先輩は根気強く向き合ってくれた。
先輩はすごく穏やかな人だった。
私がどれだけ失敗しても、怒らないし、呆れないし、励ましてくれた。
その年のリーグ戦が終了し、先輩は引退した。
先輩が大学を卒業してからも、たまに連絡は取っていた。
会うことはなかったけど、練習がしんどい時は連絡したりした。
先輩は私の心の逃げ場だった。
気が付けば先輩に会わないまま何年も過ぎていた。
連絡を取る頻度も、月日が経つごとに、減っていた。
私が28歳になる年だった。
先輩が亡くなった。
お通夜で見た先輩の顔は、私の記憶とは別人だった。
会わなかった間に、とんでもなく色んなことがあったんだと察した。
悲しかったし、すごく怖かった。
ラクロスのことを思い出すと、必ず先輩のことも一緒に思い出す。
どうしても悲しくなってしまうから、それ以来ラクロスの話題を避けるようになった。
電車でたまたまどこかのラクロス部を見ると、
練習中の元気な先輩の姿と、
お通夜での変わり果てた先輩の顔が一緒に浮かぶ。
涙が出てくる。
私にとってのラクロスの思い出は、あまりにも悲しいものになった。
もう、ラクロスに積極的に関わろうと思えなかった。
でも、スポーツ通訳や国際大会運営の仕事の経験を、いつかラクロスにも生かせる日が来るかもしれないと、心のどこかでいつも思っていた。
そして今年、その機会がやってきた。
ラクロス女子世界選手権に、海外チームのサポートとして参加することになった。
大会ではたくさんの人と出会った。
みんな明るくて、優しくて、
くだらない愚痴も言い合いながら毎日を過ごした。
母校の先輩にも会えた。
海外チームがグッズをたくさんくれたり、
キッチンカーでご飯を買ってみんなで食べたり、
試合終わったら一緒に一杯飲みに行ったり、
毎日がお祭りみたいだった。
海外チームの試合を見ていて、先輩と背格好が似たゴーリーがいると、先輩を思い出した。
でも今回は、
先輩を思い出して悲しくなっている私の隣には
この大会で新しく出会ったラクロスの関係者の皆さんがいて、
同じく海外チームをサポートしている仲間たちがいて、
なんだかそれがすごく嬉しかった。
悲しいけど、幸せだった。
悲しい気持ちと、幸せな気持ちは、共存するんだって思った。
暑くてたまらなかったけど、
この時間がもっと続いてもいいかもって思った。
私は、仕事をするときに大事にしていることがある。
情けない自分も正直に出すこと。
あの時、先輩の情けない姿が私を救ったように、
私の情けない姿が、誰かを救うことがあったら良いなって思う。
今、世界選手権が終わって、帰りの新幹線でこれを書いている。
これからの私の人生は、もっともっとラクロスの彩りの中で生きていけたらいいなって思う。
スポーツをすることは、楽しいことばかりじゃないし、
綺麗事ばかりじゃない。
悲しいことも、辛いこともたくさん起こる。
でも、それでも良いと思う。
「ラクロスに恩返しを!」
みたいな大きなことは言えないけど、
数あるスポーツの中からラクロスを選んだ人たちが、
一緒に幸せになれるような未来を作れたら嬉しい。
📢各SNSではお仕事の様子を発信しています♪
ラクロス世界選手権🥍
— Marie Sasaki✿スポーツの通訳 (@marie_824) August 1, 2026
かなりの時間を一緒に過ごしたアルゼンチンチームの選手が、今日の試合前に「プレゼントがあるの💓」と言ってこれを渡してきました。
1人で死ぬほど笑いました。
チップかと思ったら大量のピンバッジが入ってました🤣 pic.twitter.com/ps2SyO28V2
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