月灯りのミウ 16/16
《第16話》サキの話
さて、この長いお話もそろそろこれで終わりになります。
私が創った“あちら側の世界”でミウ、ユタカ、マコトに出逢いました。
彼らは自分でも気付かない特殊な能力を持っていると表現したのですが、それは何も彼らが特別な存在だったわけではありません。
その人の得意なこと、あるいは好きなことにしか過ぎないのです。そんなことは特別にではなく、誰にでもひとつくらいは何かあるものでしょう。たとえまだ自分が気付いていない事だったとしても。
さらには、あの3人は選ばれた人とも表現していましたが、誰が選んだかと言うと、私です。神でもなんでもありません。
特殊能力なんて、夢の話です。
ただ気付きの話をしたかったのです。
それに気付けてそれを出来る人は羨ましいと思います。そしてさらにそれが仕事として成り立つなんて凄いことです。
たとえ、趣味や道楽程度の事でも好きなこと、やりたいことを見つけ、それが出来る人は幸せだと思います。
私も普通こんな有りもしないと思われる"あちら側の世界“を創り出したのも、単に好きだから、創ってみたのです。
“あちら側の世界”は本当はもっと深くて果てしなく広がる世界なのですが、今ご紹介するのはこの辺りで止めておきます。
こんな世界を創造するのが私の幸せなのです。
面白いから、そういう世界を創って楽しんでいるだけです。
お金にはなりませんが。
さて、これは「あとがき」ではありません。
私はあくまでこの物語の登場人物のひとりです。
前の章でミウとユタカが私の現実世界での年齢を200歳をとうに超えているなんて事を言っていたようですが、それは単なる都市伝説です。真実ではありません。どうか誤解なきようお願い致します。
私は3人がこの先どうなるのかという事もすでに知っています。
それで、この章では3人(ミウ、ユタカ、マコト)のこれからについてお話してみようかと思います。
ミウとユタカは、ベーカリーショップ『月灯りのミウ』のチェーン店をますます拡大し、カフェ部門の店舗が好評を呼び「西のコメダ東の月灯り」とも一部ネットのユーザー達の間では話題になりました。
その成功で満足していればいいものを、ユタカはまたまたパン作りに飽きてしまって、稼いだ金をもとにアメリカンロックのカフェバーをオープンさせるのですね。
それは自分が楽しいだけで商売としては成り立たなくて、どんどん資金は無くなり、再び、店舗売却となります。懲りない性格なんですね。
その時もまた半年間”あちら側の世界“に引きこもっていましたよ。
でも今回は私と知り合ったので、世界各国を無料で渡り歩き、お金も使わず、歳も取らず、このままずっとサキさんと一緒にいた〜いなんて愚かなことを言い出す始末なので、とっとと追い出しました。
どうせ今頃はまたパン屋でもやってるんじゃないでしょうか。それ以外にあんまり取り柄がありませんでしたからね。
それからミウの方ですが、経営者としての実績を積み重ね、いっぱしの財界人の仲間入りを果たします。確か孫さんとか前澤さんとかゲイツさんとか言われる方々と交流して、楽しんでいました。
その結果、宇宙開発に興味を持ち、さっさとユタカに見切りをつけ、パン屋を人任せにして海外に移住しました。
けれどミウの悪いところは孤独を耐える我慢強さが足りないのです。
集団で宇宙開発をリーダーシップ取って進めている間は良かったのですが、スペースシャトルに乗り込むために取り組んだ訓練の途中で嫌気がさして放り出して来たらしいです。やはり日本がいいとか言いながら。
人任せで気まぐれですからね。
パン屋の経営が上手く行ったのは、たまたまでそんな才能なんてハナから無かった、それが本質のようです。月灯りの中で謎めいた存在でいた頃が一番良かったですね。笑 今はまたユタカの元へ戻ったようですよ。またお2人でベーカリーショップを始めるみたいです。めでたしですね。
さて、最後にマコトですが、勤めていた商社を辞めて、放浪の旅に出ます。自分探しという奴です。
旅自体は良かったです。ほら、ここぞという時にだけあたるダーツを利用して、ちょいちょいと女の人とホテルに入っては夜中の3時頃、鏡にぶつかっては額から血を流すっていう事を繰り返していました。もともと単純でバカですからね。全世界にあると言われる私の創った“あちら側の世界”への入り口を探し回っているらしいのですが、マコトがそれを見つける可能性は限りなくゼロに近い。つまりは不可能です。
そんな旅を続けたマコトも今はまた東京に戻って商社に再就職し可もなく不可もない仕事を毎日続けて、週末は渋谷のJAZZ BARで遊んでるらしいです。あちら側の世界にはもう行かないようです。
多分忘れてしまったのでしょう。それで良いのです。その内誰か適当な人と出会って家庭を持ち家族を作り、平凡な人生を歩むのがマコトの幸せです。実際、そうなります。
尚、子作りは一発命中だったらしいです。流石!
〈エピローグ〉
さ、いよいよこの物語のエンディングです。
もしもこの物語を読まれた皆様方の中に、現在何かに行き詰まって、どうしようもないと嘆いている方、幸せを見つけられずに毎日をイライラと過ごされている方、
何かを変えたいと思いながら現状維持を余儀なくされている方が、いらっしゃったとしたら、
少し息抜きされてはいかがですか?
”あちら側の世界“でお待ちしてますよ。
入口は世界各地に無数にあります。
渋谷のスクランブル交差点のことはこの小説のプロローグでも書いたように人がひとりくらい消えても誰も気付かない瞬間があるらしいです。
もしかしたら今、あなたの前にいる人が一瞬映像がズレたような不思議な動きをした時には、”あちら側の世界“に行って戻って来られた瞬間かも知れません。
たぶんその一瞬の前と後では、その人のどこかに変化が見られるかも知れないですね。人生観とか、生き方とか、確かめようは無いですけど。
“あちら側の世界"
その空間を、どう捉えるかはあなた次第です。
人生を良くするも悪くしてしまうも自分次第。
もしも何かに迷ったなら、ちょっとだけ立ち止まって気持ちを整理する。
そして何かに気付けたとしたら、そこに意味があるのでしょう。
そんな不思議な空間への入口を
あなたにも見つけられると良いですね。
どうか生きる楽しさ、しあわせを見つけてください。
あなたの人生がこれからも、より良いものになられる事をお祈りしています。
最後にある映画のセリフを引用して、この物語のラストにします。
何の映画かは書きません。知ってる人は、ああ、あの映画ね、となるし、知らなくても、いつかこの映画のこのセリフの部分と出会い、あ、これだったのね、となれば嬉しいです。
もし神が存在するなら
人の心の中じゃない
人と人との間の
わずかな空間にいる
この世に魔法があるなら
それは人が
理解し合おうとする
力のこと
たとえ理解できなくても
かまわないの
相手を思う心が大切
以上です。
(完)
長い話にお付き合い頂きまして、ありがとうございました。
ではまたね
バイバイ
サキ
