【期間限定無料公開】現地語が話せない主婦が、それでも1人起業を決めた理由。
「海外に住んでいて現地語が話せないなら、働くのはもう諦めるしかないのかな」。
そんなふうに思っている海外勢、意外と多いのではないでしょうか。
このnoteを読んでくださっている方の中には、言葉の壁や孤独な子育てでキャリアを諦めかけている海外在住のママや、自由のない働き方に嫌気がさしている会社員の方もいるかもしれません。また、「子育てしながら自分で仕事を作りたい」「忙しい主婦だけど、いつか起業したい」とモヤモヤを抱えている方もいるでしょう。
私はスイスに住んでもうすぐ6年になりますが、現地語(ドイツ語)は初心者レベル止まりです。これは誇れることではないし、いつか向き合わなければいけない課題だとも思っています(一応授業には通っているのですが、上達が亀のスピードすぎて…)。
その状態でも、子育てをしながら持続可能な働き方を組み立てていく中で、私は「就職」ではなく「起業」を選びました。今日はその理由を書くのですが、先に一つだけ種明かしをすると、この選択の分かれ目は、語学力ではありませんでした。
分かれ目は、「自分の人生を、自分で動かせている感覚」をどこで確保するか、でした。
実はこの感覚には、心理学でちゃんと名前がついています。そしてその研究を知ると、海外生活がなぜこんなに消耗するのか、その消耗の正体まで見えてきます。順番に書いていきます。
1. 「英語ができれば海外でも働ける」の甘さ
スイスで大学院を卒業し、スイスで就職し航空関係の会社員だった頃、英語だけで仕事が完結していました。だから「英語さえできれば海外でも働ける」と、どこかで思っていたのです。
ところが、出産し状況が一転。転職や再就職を本気で考え始めたとき、その考えは甘かったと気づきました。スイスは世界中から働きたい人が集まる国。英語で完結する求人自体がそもそも少ない上に、1つのポジションに対して倍率300〜400倍という世界です(冗談抜きで)。
「じゃあ日本語で、日本のクライアントとリモートで働けばいい」と思うかもしれません。しかし、そこには「円安」という、自分ではどうにもできない要素が絡んできます。現在のレートでは、スイスフランに換算すると報酬が体感で半減してしまいます。昨日と同じ仕事をしているのに、為替のニュース一つで、実質の稼ぎが目減りしていく。
300〜400倍の競争に運任せで挑むか、為替に稼ぎを委ねるか。どちらの道も、頑張りの量と結果が繋がっていない。当時の私は、この「繋がっていなさ」に、じわじわと消耗していました。
2. 消耗の正体:コントロールの置き場所
この消耗には、心理学の古典的な研究がそのまま当てはまります。心理学者ジュリアン・ロッターが提唱した「ローカス・オブ・コントロール(統制の所在)」という概念です。
人は、物事の結果の原因をどこに置くかで、大きく二つのタイプに分かれます。
・内的統制:結果は、自分の行動や努力で決まると感じている
・外的統制:結果は、運や環境や他人など、自分の外側で決まると感じている
そして数十年にわたる研究の積み重ねで、内的統制の感覚を持てている人の方が、ストレスに強く、行動的で、精神的な健康度も高い傾向があることが繰り返し確認されています。逆に「何をしても結果は外側で決まる」という感覚の中に置かれ続けると、人は学習的に無力感を深めていきます。
ここで大事なのは、これが「性格」の話であると同時に、「環境」の話でもあるということです。
海外生活を思い浮かべてください。
・ビザは制度が決める。
・為替は市場が決める。
・求人の倍率は労働市場が決める。
・会話の主導権は、現地語を話す相手が握っている。
つまり海外生活は、構造的に「外的統制」の要素で埋め尽くされた環境なんです。海外に出た途端、日本では有能だった人が自信を失っていくのは、本人が弱くなったからではなく、結果の決定権が根こそぎ自分の外側に移動したからです。
私はもともと、自分の人生を「自分で選べている感覚」がないとすぐにストレスが溜まるタイプです。だから私にとっての本当の問題は、「ドイツ語が話せないこと」ではなく、「人生の決定権が、ことごとく自分の外にあること」でした。
そう定義し直した瞬間、打ち手が変わります。語学の完成を待つのではなく(それは何年かかるか分からない上に、完成しても300倍の競争と為替は消えません)、自分の内側に決定権のある領域を、一つ作ること。私の場合、それが「自分の仕事を持つこと」でした。
ここから先の有料部分では、私がなぜ「就職」という選択肢を構造から検討して外したのか、求人というものの仕組みの話。そして、求人票の外側にあった「穴」を、私が実際にどう見つけて、今どんな話が進んでいるのか。最後に、あなたが自分の環境で同じ観察をするための三つの問いを書きます。
*通常は以下から有料記事ですが、期間限定で無料公開いたします。
3. 求人に応募するとは、「誰かが用意した穴」を埋めること
就職を選択肢から外すにあたって、私は求人というものの構造を、一度冷静に眺めてみました。
求人というのは、企業が「足りない人材」を埋めるために出しているものです。つまり応募する側は、会社に空いた穴を埋める要員であり、逆に言えば「条件に合いさえすれば誰でもいい」から求人票になっている。求められるのは、その穴の形にぴったりハマることであって、あなたの得意なことをフルポテンシャルで発揮できるかどうかは、別の話です。
今の会社組織に嫌気がさしている方は、まさにこの「自分じゃなくてもいい穴埋め作業」に疲弊しているのではないでしょうか。あなたの代わりは、いくらでもいる。その前提の上に成り立つ働き方は、先ほどの言葉で言えば、決定権が構造的に会社側にある、外的統制の働き方です。
そしてもう一つ。
この働き方は「時間の切り売り」でもあります。収入が稼働時間に比例する仕組みだからです。ここに、子育て中の方にとって見過ごせない不利があります。時間の切り売り勝負では、時間に制約のある人が、構造的に必ず負けるんです。フルタイムで働ける人と、保育園のお迎えまでしか働けない人が、同じ土俵で時間を売って競えば、勝負は最初から見えています。頑張りが足りないのではなく、土俵の選び方の問題です。
現地語が話せないことは、間違いなくディスアドバンテージです。ここに言い訳の余地はありません。でも、だからといって「時間を切り売りして会社に依存する」以外の道がないわけでもないのです。
4. 求人票の外側にあった「穴」
では、どうするか。私がまずやったのは、語学の勉強を増やすことではなく、市場をよく観察することでした。
問いの立て方はこうです。「この土地の市場の流れの中で、自分が戦える言語環境に、会社員としての就職という枠組み以外の"穴"はないか」。
私の住むバーゼルは、大学を基盤とするバイオテック系スタートアップの聖地です。ここで三つのことが繋がりました。
①スタートアップ界隈は基本的に英語環境であること
(=私が戦える言語の土俵)。
②生まれたばかりの会社は、事業が育つ過程で必ず「ブランディング」が必要になること
(=私の武器が刺さる需要が、これから確実に発生する)。
③その需要はまだ求人票の形になっていないこと
(=300倍の競争が始まる前の、誰も並んでいない場所)。
求人に応募するのではなく、市場がこれから必要とするものに、自分の武器を直接差し込む。私はこの方向で種を蒔き続けていて、実際に来年からは、スタートアップのサポーター向けにブランディング講師をする話が進んでいます。
これは求人情報のどこにも載っていなかった仕事です。載っていないのだから、倍率もありません。そして何より、この動き方は最初から最後まで、自分の観察と自分の判断で進んでいます。決定権が自分の内側にある。あの消耗と、正反対の感覚です。
5. あなたの環境で「穴」を見つける、三つの問い
この観察は、バーゼルでなくても、どこでも同じ手順でできます。紙に書き出すなら、この三つです。
① 私が戦える言語環境は、どこにあるか。
現地語圏の真ん中で勝負する必要はありません。英語のコミュニティ、日本人・日本文化の需要、あるいは言葉が少なくて済む領域(ものづくり、ビジュアル、食)。土俵は選んでいいんです。
② その市場で、これから必ず必要になるのに、まだ誰も供給していないものは何か。
ポイントは「今ある求人」ではなく「これから生まれる需要」を見ることです。育ちつつある業界、増えつつある人口、始まったばかりのトレンド。需要が求人票の形に固まる前が、個人が入り込める唯一の隙間です。
③ 私の武器を、どの形なら差し込めるか。
フルパッケージの完璧なサービスである必要はありません。講師でも、単発の手伝いでも、小さな商品でも。差し込めた実績が、次の形を連れてきます。
もちろん、就職そのものを否定しているわけではありません。自分の価値観にバッチリ合う求人があったり、専門外のスキルを学ぶ目的があるなら、就職は全然ありだと思っています。ただ、今の競争率と構造を知った上で、「誰かが用意してくれる椅子」を待つだけの一択にしてしまうのは、あまりにもったいない。椅子が用意されないなら、椅子ごと作ればいい。私はそちらを選びました。
⸻ 今日の一口メモ
海外生活が消耗するのは、あなたが弱いからではなく、決定権が構造的に自分の外側に集まる環境だから(ローカス・オブ・コントロール)。語学の完成を待つより先に、自分の内側に決定権のある領域を一つ作る。求人は「誰かが用意した穴」を時間の切り売りで埋めるもので、時間に制約のある人はその土俵では構造的に不利。だから観察するのは求人票ではなく、需要が求人の形になる前の「穴」。
現地語が話せないことは、働くことを諦める理由にはなりません。土俵を変えれば、あなたの手持ちで戦える場所は、思っているよりあります。決定権を、少しずつ、自分の側に取り戻していきましょう。その最初の一歩は、語学アプリを開くことではなく、あなたの住む町の市場を、観察する目で眺めてみることです。
この記事は通常メンバーシップ限定ですが、8月15日まで全文公開しています。メンバーシップ(月額770円)では、こうした記事を毎週2本、お届けしています。
いいなと思ったら応援しよう!
よろしければ応援お願いします!いただいたチップは記事執筆の際のコーヒー代や、勉強のための本購入費にさせていただきます☺️