シロクマ文芸部|お遊び企画「風が吹く」
「風が吹くとね、戸がガタガタってなるんだよ。僕は、君が子供を連れて僕のところに帰って来たって、慌てて鍵を開けに走るんだ・・・」
「風が吹くとね、ポストがカタカタってなるんだよ。僕は君から手紙が来たって慌ててポストまで走るんだ・・・」
「それで、お袋が見かねてね、遠縁の娘を連れてきて超強行軍の結婚だったよ」
「君が結婚して10年、10年経ったらもう別れることはないかと思ってね、諦めたよ・・・」
あり得ないほど、嘘みたいに、信じられない程に、あまりにも偶然に出会ってしまった彼。しかも私の立ち上げたプロジェクトの関係でたいそうお世話になることに。
そんな彼の
「どうしても、一度だけお茶して欲しい」
という願いに
『一度だけならいいかな』と大阪駅ステーションビル一階の喫茶店で逢っていた。
他人話のような、あまりに切ない話を聞き、つい泣きじゃくって聞いていた私に、彼は優しい視線を投げかける。
「相変わらず泣きベソだ」と。
「な、せめて月に1回だけでいい、こうしてここでお茶してくれないか?」
「それは止めとこ。きっとまた偶然あえる気がするからそれを楽しみにしない?」
しばらくの沈黙のあと
「わかった、、、じゃぁ、その通りにするからお願いだ、僕が死ぬときに君の名を最期に呼ぶから来てくれ!一緒に行こう・・・」
『来てくれって・・・勝手に呼ばれて行かなきゃならないなんて・・・それはおかしくない?』
けれど、私はそれを口にはできなかった。彼には悪いことをしたかな?と気の毒には思うけれど。
お詫びに別れ際には、ちょっとだけ長くハグして見送った。
