【第61回】3つのお題に空想のひらめきを〜君に見せたかったもの〜
🍊第61回 3つのお題(ファンタジー)
🎈お題①:「天国行きの最終列車」
🐾お題②:「百年後に届く宝箱」
⏳お題③:「記憶を運ぶ蝶」
もうやるべきことはやった。
寂しいけれど、未練はない。
そう思いながら、私は天国行きの最終列車を待っていた。
駅には「百年後に届く宝箱」が置かれている。
私は一枚の写真を入れた。
愛犬・ムギを抱いた私の写真だ。
ムギは盲目の犬だった。
生涯、一度も私の姿を見ることはなかっただろう。
だから、もし生まれ変わって世界を見ることができたら、私の姿を見せてあげたい。
「今から、あなたのところへ行くからね。ムギ」
最終列車は静かに空へ駆け上っていった。
***
それから百年。
ある朝、ナンシーは愛犬メリーが庭から何かをくわえて戻ってきたことに気づいた。
「メリー、何を持ってきたの? ……写真かしら」
ナンシーには視力がない。
メリーは、彼女を支える盲導犬だった。
夕暮れ時、一匹の蝶がナンシーの周りを舞い始めた。
すると突然、遠い昔の記憶が蘇った。
笑い合った日。
一緒に遊んだ日。
涙を流した日。
そして――ムギという盲目の犬と過ごした日々。
ナンシーは写真を胸に抱いた。
「ムギ……」
その声を聞いたメリーが、嬉しそうに尻尾を振った。
ナンシーには見えなかった。
写真の中で、老人に抱かれた盲目の犬が、まるで笑っているように見えることを。
百年前の飼い主と、百年後の愛犬。
ようやく二人は、再会した。
