毎週ショートショートnote「幼馴染はじめました」〜帰ればわかるよ〜
東京から北海道の田舎町へ嫁いだ。
知り合いもなく、冬は雪に閉ざされる。
夫は優しいが仕事で家を空けることが多く、私は次第に孤独を募らせていた。
そんなある朝、ポストに奇妙なチラシが入っていた。
「幼馴染はじめました」
幼馴染のように接してくれる友人をレンタルできるサービスらしい。
試しに申し込むと、翌日「悦子」という女性がやって来た。
「ミカ〜!久しぶり!全然連絡くれないんだから!」
本当の幼馴染のような距離感に戸惑ったが、不思議と居心地がよかった。
私は彼女に悩みも愚痴も打ち明けるようになった。
だが数か月後、悦子は寂しそうに言った。
「私、もう来られないの。実家に帰るから」
「どこなの? 今度は私が会いに行く」
「ミカのおうちだよ」
冗談だと思った。
翌年のお盆、実家へ帰省した私は墓前で凍りつく。
『井上 悦子』
そこに刻まれていたのは、生まれて間もなく亡くなった、私の妹の名前だった。
