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☆【小説】「龍と空色の歌」第16話【創作大賞2025応募】016〜春スペシャル

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 第十六話 この世界
 
 D・E・A・P《ディープ》シミュレーターシステムは現在と過去と未来とを重ね併せてシミュレーションする。時間の概念を超えて動作するのだ。
 柏木は二十年程前に、この理論を確立した。

 その当時のコンピューターの能力では実現できない演算性能を世界中のコンピューターに極めて小さな部分的なプログラムの塊を、プログラム片として分解、分散して配置した。河原の小石が実は、大きな岩の塊、というようなものだ。小石は合体しない。だが、小石のようなプログラムは、合体するとプログラムとして動作する。状況に応じて合体することでとてつもない処理能力のコンピューターとして動作する。
 コンピューターのそれぞれが持つリソース、処理をするための物理的な資源や、未使用の部分で計算を実行し、それを集めることで結果をアウトプットする。

 現実的には時代が変わっても科学技術に限界はあり個々のコンピューターはスーパーコンピューターからマイクロチップ単体まで、巨大から微小まで様々で時間の概念を使わずには動作しない構造だ。だが柏木は画期的な手法で全体として時間を超越することを実現した。
 コンピューターがあり得る以上は世界中のどこかでディープシミュレーターは活動し続ける。

 それも時間を超えて──

 そして、今でも稼働し続けているディープシミュレーターに墨絵がダイブした事により、今回、過去と未来に墨絵の現在の心が加わった。
 それも心の安定度が極めて高い墨絵の心との連携が確立されたのだ。

 ディープシミュレーターも墨絵の心を捕捉することで新しい能力を持ち、墨絵には脳を通してディープシミュレーターと直接交信する機能と、副産物としての能力、例えば未来予知のような能力が備わる可能性がある。
 人間の脳は画一的な構造物ではないため、どのような状況で能力が確保されるかは確定的ではない。加えて、同時に確定的な事象をどこかの空間で確定的な事象を発生させていることもある。現在か、過去か、未来か、それは分からない。

 この接触で、何か変化が必ず起きている、ということでもあり、起きるべき必然的なことが起きているということである。
 「この世界」の人類が過去と呼んでいる事象ですら改変されている可能性もあるし、その改変は必然だ。何が起こるかわからないということだが、同時に全ては既にきまっているということになる。後者は運命論だ。たが論は論に過ぎない。自由に振る舞う個々の存在が局在的に行動もする。

 レモカ社長が宗教学で研究した「即非の論理」の具現化の形とも言える。ただし、実際に起きる時刻までもを特定することはとても難しい、投射される時間の世界、「この世界」の方が極めてあやふやだからだ。

 人の言語も含めてあやふやな「この世界」──

 非局在的な存在が光に当てられ投射された影のような「この世界」

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