☆【小説】「龍と空色の歌」第22話【創作大賞2025応募】022 〜春スペシャル
割引あり
第二十二話 一九八九年十月
──夢 リタ・スタンパ
子供の頃、庭の木に登って叱られた。
高いところが好きだった。
空に近づく気がした。
あれは五歳の時だ。
両親に連れられてあの壁の近くまで来た。
リタは壁に手を当てた。両親が目を離した隙のこと。
高緯度のこの街でも真夏の太陽の光で壁の温度が上がっていた。
リタはその暖かい壁の誘いに応えて掴んで登り始めた。
なぜか祖母の手の温もりに感じたからだ。登っていけば祖母に会える。そう思った。
すると、大きな声がする。拡声器で誰かが叫んでいるようだ。聴いたこともない大きな音だ。
リタはその音が耳障りだったが、この壁にしがみついているととても心地が良かった。
「カーン──キーン」
弾丸だ。
鋭い音が脳の奥まで響き
脳裏をえぐる様に突き刺さる──
弾丸はリタの頭上一メートルの高さに当たり、リタは思わず手を離した。リタは地面に仰向けに転んだ。頭を打ったらしい。
そのあとの記憶は無い。気がつくと病院のベッドの上だった。
リタは夢を見た。自分に羽が生え、青空を飛んでいる。壁を高く越えて、壁の向こうの街に行くのだ。そう、祖父母の住む街へ。
おばあちゃんに私は会うことができないのはあの壁のせいだ。
八歳になった夏、オリピックの競技をテレビで見た。
私がするべきことはあれだ。
私は飛びたい──
陸上競技を見ていたリタは、これなら壁を乗り越えられると思った。自分の力で乗り越えられる。
壁にしがみつかなくても、壁を壊さなくても、跳び越えてしまえばいいんだ。あの壁を越えたい。
高さ四メートル──
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