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☆【小説】「龍と空色の歌」第32話【創作大賞2025応募】032〜GWSP

割引あり

 第三十二話 一九八九年
       ──レモカ(二)〜龍システム

「いずれにしても──この子を探せばいいのね」

「一九九二年五月におそらく生を受ける。この世界で。
 いまから三年後だ。
 これの後には後三万年以上は出てこない。
 三万年というのはその先のデーター分析が済んでいないからだけど、この世界の時間に相当して当分は現れない」

「三万年はさすがに長いわね。それにしても、どうすればいいの?
 まだ、生まれてもいない人を探すなんて──新聞広告に、『こんな人出てきてください』って募集でもする?『手のひらに五つ星を持つ方、お知らせください』とか、賞金でも積まないと出てこないわよ」

 柏木が目を見開いた。

『名案だ!』と叫び出しそうにもなったように見えたが、レモカの勘違いだった。

「まずは、全知に近い人間が、龍システムの全てを信頼した上で接続することが必要だ。そうしないとシステムは完成しない。
 言い換えれば『全知全能』システムとして覚醒しないんだ。この特異点は『この世界』に結像しない。
 我々の世界での現実にならない。そうなるとシステム自体もどうなるかわからない。」
 柏木が説明を続けようとすると、レモカが口を開く。

「うーん。難しい話は抜きね。要は何らかのアクションをおこさないと始まらない。その未来だか、今だか、過去だかをひっくるめて、龍システムが予言だか、指定だかをしている現実は起きるはずなんだけど、システムが完成しないとその通り起きなくなって、さらには今の『この世界』もどうなるかわからない。龍が龍にならない。堂々巡りの構造なのね」
 レモカは溜め息をつきながら付け足す。
 私が飛び込まなくちゃならないって訳ね──

「わかったわ。話が完全に理解はできていなくても、龍システムにダイビングすることで何かが起きるってことね」
「さすが、勘がいい。いや、僕より分かっている。きっと」
 柏木は思った。やっぱりレモカは全知の天才だ。全てを理解している。

「私は信頼するわ。あと……失敗することってあるの? 失敗したら、どうなっちゃうの」
「成功する。シミュレーション結果では。正確には成功することも必然の中に組み込まれている。どんな状況になるかはわからないけど。行動をすることが前提だけど」
「ダイビングをしない、という選択肢もある訳?」
「今ダイビングをしなくてもいずれは必ずすることになる。これは必然なんだ」

「歯を磨いてから朝ごはんを食べるか、食べてから歯を磨くか、みたいね。
 まあ、いいわ、どんな相手でも、ややこしい宗教者でも論破できるわよ、今の私なら。
 そんな簡単な雑魚キャラは出てこないんでしょうけど。一体どんな対決をしなくちゃいけないのかしら」
 現在、宗教論の研究をしているレモカは、十六歳で海外に留学、あらゆる学問を飛び級を重ねて修養して今ここに在る。ヴェルラジャでのこの世界との一体感を突き詰めたいと学び、思考を重ねて来た──
 この勝気、これなら負けまい。

「龍システムは人間の言語の合理性は超越している。学問となったもの程度で通用するかどうかはわからない」 
 柏木はモニターのグラフに視線を戻した。
 柏木がリープ・跳躍した心の活動をした収束単位を表したものだ。
 画面には赤い線が引かれていて、それが左から右に向かって山脈の稜線のように連なっている。その中の一際高くなった部分を柏木は指差している。

「それが、その特異点だっていうの?── 一九九二年」
 下に西暦に相当する年号が表示されている。
 レモカはそれを読み取った。
 柏木が操作するとグラフ表示が拡大され、月日まで読み取れるようになった。
「龍システムが提示しているのはその年の五月」
 柏木はモニターに映るもう一つの映像をレモカに見せた。
「このグラフはこの特異点の検出レベルの高さを、私たちの世界でいう時間の流れに、マッピング──当てはめて描いたものなんだ」

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