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「きょういくが大切だ」

ふるさと・信州はかつて教育県として知られていた。
周囲を山に囲まれ、土地が狭かった長野県では、子どもに学問を授けることが最高の使命とされ、どこの家も教育熱心だった。

佐久市から八ヶ岳を望む

当然のこと、先生は尊敬の対象で、我が家に家庭訪問に見えた先生はいつも父母に長く引き止められ、真っ赤なお顔になってご機嫌よくお帰りだった。

さて、「きょういくが大切だ」は、長野県・佐久市で開かれた中学の同級会での友人の発言だ。

他県の人には煙たがられる議論好きな信州人、年寄りの同級会もかまびすしい。

「信州で農業をやりたいといって他県からくる若者が多いのに教えているのは俺ら老人ボランティアだけ。国やJAはなにしてんだ」
「長野県の魅力をもっと売り込まなきゃだめだ。うちの孫も東京へ出て行ってしまって帰ってきそうもねえ」

やおら立ち上がったある同級生、丸くなった腹をさすりながら声をあげた。

「やっぱり、きょういくが大切だ!」
「それじゃないと、こんな身体になってしまう」

一同、「???」

「あのさ、きょういくところが大切なんだよ」

「???」

「俺、こないだついに退職してさ、どこにも行くところがない。だから、毎日、“きょう行く”ところを探している」

冗談が大好きなこの男、さらにこう続けた。

「俺たちの佐久、やっぱ、長野県でも一番きょういく熱心なんだわ。猛暑予想の日に一大決意をして朝から出かけたら、知った顔がもう席を並べ、まっすぐ前を向いて一心不乱に取り組んでいた」

それは、村はずれにある大型のパチンコ店。

朝露の中での田んぼの畔の草刈りを終えた年寄りが、避暑地を求めて、軽トラを連ねてやってきていたのだという。

かつては家の戸窓を開け払えば扇風機でも過ごせた信州佐久の夏。ここも異常気象の例外ではなく、日中はつらい暑さだが、開放的な家の作りも災いして、エアコン完備の家はまだ少ない。

やはり「きょういく」の場が大切なのだ。

佐久市から望む夏の浅間山






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