レジ袋いっぱいのお薬、持ってきました
レジ袋を両手に提げた患者さんが受付にやってくる。
「こんだけあるけど、何がどうなってるか分からないのよ」
ドン引きしながら、笑顔で受け取る。これが日常だ。
薬が余っているかどうか、高齢者は自分からは言わない。それでも薬だけはもらいたい。病院に行って薬をもらうことが、生活の一部になっている。
ただ、医薬品の供給が不安定で在庫が足りない薬がある。そういう時だけ声をかける。
「お薬、余っていませんか?」
「余ってるよ。」
―余ってるんかーいっ。
この返答率、90〜100%。
余ってると分かれば残薬調整をする。手持ちの薬で足りるように日数を合わせる。在庫がない薬でも何とかなることがある。
レジ袋いっぱいの薬を持ってくる患者さんは、何が何錠あるかも把握していない。飲んでいるのか飲んでいないのかも分からない。薬剤師と一緒に中身を確認しながら整理する。
「先生にはお薬余ってるってお話しましたか?」
「いやー先生はいつも通り出すねって言うから」
―先生に話してくれーーー。
処方を出した先生は知らない。余っていることを。次の診察でも同じ量が出る。レジ袋はまた膨らむ。
―誰かご家族、付き添ってあげてくれー。
怖いのは別にある。
受付でも、投薬中でも、会計でも、話が噛み合わない。耳が遠い。意思の疎通が難しい。でも車で来ている。
高齢者の免許返納が進まない理由は色々言われている。でも現場にいると、返納してほしいと思う場面は確かにある。
レジ袋の中身を整理しながら思う。
この薬、ちゃんと飲めていただろうか。
次の診察まで、大丈夫だろうか。
あれこれ気になってしまうのが現場というものだ。
