『タイタニック』で検証……回想物語に「三幕構成」は使えるのか?
ふみさくです。
梅雨もW杯も関係なく、相変わらず創作に取り組んでいます。
いま手がけているのはいわゆる回想型の小説で、こんなよくある型のものです。
・外枠=初老の主人公の語り
・内枠=若い時代の主人公の回想物語
しかしこれがやってみると、意外と難しい。
わたしはプロットを立てる段階では、いわゆる
「三幕構成」
や、それを細分化した
「ブレイクスナイダー・ビートシート(BS2)」
をよく使います。
しかし回想物語の場合にもこれを適用することができるのか?というところ、ちょっと引っかかってしまったんです。
なぜなら外枠、内枠ふたつの物語が存在するからーーその場合、それぞれに三幕をもうけるべきなのか?などと。
ならばと、実際に世にある回想物語のサンプルを取って、考察、分析してみることにしました。
ストーリーライティングに興味のある方は、ぜひお付き合いいただければと思います!
本記事の構成
三幕構成とブレイクスナイダー・ビートシート
まず三幕構成について、軽く説明しておきましょう。
簡単に言えば、物語の構造を
・始まり
・中間
・終わり
の三部にザックリ分けたもので、物語の黎明とともにその考えはあったと言えます。
たとえば古代ギリシャのアリストテレスも
「物語には始まりがある、中間がある、終わりがある」
と、その構造に言及しています。
日本では室町時代、能の大成者である世阿弥が
「序破急」
の三部構成を唱えたことがよく知られています。
三部の分け方には大きな違いがあるのですが、概ね世界中で並行かつ、自然発生してきた考えと言って良いでしょう。
ただわたしがここで用いるのは、1960年代末にシド・フィールドの提唱した三幕構成と、それを細分化したブレイク・スナイダーのフォーマット(ブレイクスナイダー・ビートシート)です。
詳細を説明するのは記事の趣旨とは外れますので避けておきますが、興味ある方はこちらをご覧ください。
【ブレイク・スナイダー・ビート・シート】
サンプル「タイタニック」と「海の上のピアニスト」
分析対象の候補として
「回想構造を持ち、かつ、わかりやすい」
という基準で映画から絞ってみたのですが、偶然にも同時期の
「豪華客船もの」
のふたつがわたしの記憶の検索に引っかかりました。
それがこちらです。
タイタニック(1997年)
海の上のピアニスト(1998年)
タイタニックは言うまでもない世界的ヒット作。
「氷山激突」というこれ以上ないほどわかりやすいミッドポイントがあり、分析には理想的と考えられます。
海の上のピアニストはタイタニックほどわかりやすくはないですが、私が選んだ理由は、
「語りすぎる主人公がいる」
ということ。
本作の主人公・1900は彼が船を降りない理由を、ちょっとヤボなくらいに丸ごと語ってしまっています。
構造はともかく映画のテーマを誤解する余地がほとんどないーーというところが今回の目的にマッチしました。
分析、やってみた
さっそく両者をブレイクスナイダー・ビートシートの構成に落とし込んで、分析してみました。
いずれも私ふみさくの行った分類なので異論もあるかと思いますが、まずはご覧いただけばと思います。
【タイタニック】

【海の上のピアニスト】

と、わたしはこのように構造を解析してみました。
やってみた所感「ナルホド!」
やってみて「ナルホド!」と思った、というのがわたしの結論です。
これがたとえば
「千夜一夜物語」や
「カンタベリー物語」や
「デカメロン」
と言った、個別完結の物語が連続する枠物語であれば、それぞれのエピソードごとに三幕が分割されるべきだと思います。
しかし回想型の枠物語は違うと思います。
なぜなら、
外枠と内枠の物語が連続しており、登場人物の変化と成長の過程(キャラクター・アーク)を、ひとつの曲線で描く必要がある
と考えるからです。
具体的に語ってみましょう。
まず「タイタニック」では
主人公ローズが長い時を経、海底のタイタニック号と再会し
回想を経ることで自己の人生を再確認し
「贈り物」を海に返す
というキャラクターの変化・成長が描かれる。
次に「海の上のピアニスト」では
主人公・マックスはトランペットを売り、すべてを過去にしようとするが
回想世界での1900との再会により、自分たちの歩みを再確認し
トランペットを取り戻し、語り部としてもう一度生きる決意をする
と、そんなキャラクターの変化・成長の流れがつながるわけです。
だから外枠、内枠をそれぞれの物語として分断してはいけない……
今回やってみて、そんな悟りを得た次第です。
タイタニックの主人公は一般的に「若いほうの」ローズとジャックと思われがちですが、実は「老いたローズ」であり、彼女の人生締めくくりの物語が、タイタニック号へのレクイエムともなっているわけです。
ブレイクスナイダー・ビートシートに分けて考えてみると、そう言ったキャラクターの成長曲線(キャラクター・アーク)が非常によくわかりますね。
結論
さてやってみた結果としては
回想型の枠物語にも三幕構成と、ブレイクスナイダービートシートは、かなり有用
という感覚を得ました。
外枠の物語と内側の物語に通底する流れ、主人公の変化というものを、連続的に整理するのには非常にわかりやすいからです。
ちなみにいまわたしが構想している回想小説とは、わたし自身がバブル後ーー氷河期という時代を生きてきた、半自伝的なものですね。
「海の上のピアニスト」の1900のように、
語り部が忘れてしまったら、存在しないことになってしまう……
そんな人たちの記憶を、自らの筆で語りたいのです。
それを実現するにおいて、やはり使い慣れたこのメソッドを使ってプロットを立ててみたいと、改めてそう感じた次第です。
もちろん、三幕構成もブレイクスナイダー・ビートシートも、絶対ではありません。
物語の型を固定する必要は全くないし、コンテンツ高速消費化著しい現代では、とくにオープニングのビートなどかったるくて見てもらえない……という変化もあります。
しかし、こと物書きがプロット整理をする段階においては、ひとつの指標としてなお有効であるとわたしは思うのです。
さてさて、みなさまはどのように物語のプロット、作っておられるでしょうか。
ではまた。
