見出し画像

作品を盛れない僕が掲げたポートフォリオ不要宣言

これはDesignship 2025の発表資料です。当日はゆったりと見てもらうために、メモや撮影などしなくていいよう、記録として残しています。



-------👇ここから発表内容👇-------

「ポートフォリオってなんだっけ?」という問題提起。

まず最初に問いから入ります──「ポートフォリオって、そもそも何でしょう?」

会場の皆さんの多くは、この言葉をご存じで、実際に作ったことがあると思います。

ポートフォリオの辞書的定義を三つ提示(紙挟み、資産配分、作品集/画集)。
出典:デジタル大辞泉

語源を辿ると、もともとは書類や紙を入れる折りたたみのケースのこと。そこから意味が広がっていきました。

投資の世界での「ポートフォリオ」は資産の一覧や配分を指しますよね。

今日ここで使う意味は、最後の「作品集/画集」に近いもの──デザイナーとしてのスキルや成果を伝えるためのものです。

自己紹介:宇野 雄。note株式会社 執行役員CDO。

自己紹介が遅れました。note株式会社で執行役員・CDOを務めている宇野です。本日はよろしくお願いします。

僕は3年半前にnoteへ入社し、現在はプロダクトとブランドを横断するデザインのアウトプット全般の責任者をしています。

キャリア概観①

キャリアの始まりはWebデザイナー。以来ほぼ一貫してデジタルの領域でデザインをしてきました。小さな制作会社から、社員1万人弱のメガベンチャーまで。いちデザイナーからCDOに至るまで、環境も役割も横断して経験してきました。

転職のたびにポートフォリオを用意してきた図

転職が多いと、そのたびに必要になるのが今日のお題のポートフォリオ。新卒採用でも提出が当たり前ですよね。僕の転職の歴史は、ポートフォリオ作成の歴史でもありました。

「僕のポートフォリオをご覧ください」と導入。

公開しちゃいます。

クライアントワーク時代の成果は権利上の理由で掲載不可。

──と言いたいところですが、すみません。

当時のポートフォリオをお見せしたかったのですが、クライアント期の成果は権利や公開状況の都合で現実的に難しいものが多い。担当の方が退職されていたり、サイト自体が残っていなかったり。

みなさんご存知であろう企業やスポーツチームのコーポレートサイト、キャンペーンサイトなどを手がけていました。

過去ポートフォリオに対し「かっこ悪い」と感じている

ただ、その頃の自分のポートフォリオに対しては、正直“かっこ悪いな”と感じていました。

華やかな世界に憧れて入ったのに、僕の成果は広告賞を取ったわけでもないし。有名なクライアントさんの名前を載せても、結局そちらの名前にのっかっているだけ。

そのためどこか気乗りせず、結局PowerPointにスクリーンショットを貼っただけ──そんな“義務的な束”を作っていた。だからポートフォリオづくりはずっと憂鬱でした。

事業会社時代のポートフォリオにフォーカス。

そして事業会社時代に入ります。

これは前職のものですね。ヤフー株式会社(現LINEヤフー株式会社)でYahoo!ニュースやYahoo!検索などのデザイン責任者を務めました。その当時で月間150億PV規模。非常に多くの人に使われるサービスの現場です。

成果は出しているのに“見た目は地味”というギャップ。

それでもポートフォリオにすると“地味”に見える。なぜか。

巨大サービスは関わっている人数も役割も多く、個人が担う面積は小さいからです。デザイナーだけでも十人以上関わることも珍しくありません。そのためサービス全体を一人で作ることはほぼないわけです。

実際はチームで改善を積み上げる仕事が中心。事業には確かな貢献をしていても、成果物の見た目だけを束ねると“盛れない”。そんなジレンマがありました。

このポートフォリオでは面接官なら不採用にしてしまう懸念。

改めて自分のポートフォリオを見返すと、こんな気持ちになってしまうのです。

0→1は“たくさん見える”、100→101の1%改善は“わかりにくい”。

0→1は、多種多様なものづくりが発生します。会社を立ち上げたタイミングなどであれば、Webサイトから名刺、封筒などさまざま。でも、それに接する方は多くない。

一方で100→101の1%改善は、巨大事業では価値が跳ね上がります。たとえば月間150億PVなら1%は1.5億PV。数字としては大きいのに、作品集としては地味──ここにポートフォリオの難しさを感じています。

それでも自分を雇ってくれた人がいた

それでも僕を雇ってくれた人がいる。つまり、作品集に現れない価値を見抜いてくれた人がいたということ。ポートフォリオだけでは人は測れない、と強く感じました。

『ポートフォリオを作る』
仕事がやりたいわけじゃないし

そもそも僕はポートフォリオづくりが得意でも好きでもない。入社した後も「ポートフォリオを作る」という仕事をすることはないわけです。

もうポートフォリオ作りたくないんです、僕は

言い切っちゃいます。

うちの面接ではなくしちゃえ!

だからnoteの採用では“必須”をやめました。これはCDO権限ですね。提出したい人は歓迎、でも義務ではない運用にしています。

一般的フローの提示:書類選考→一次→二次→最終の面接フロー図(履歴書・職務経歴書・ポートフォリオ)。

一般的なフローは、書類(履歴書・職務経歴書・ポートフォリオ)→一次→二次→最終。僕らは最初の書類を極力外しました。ポートフォリオはもちろん、初期段階では履歴書すら不要にしています。

「実際に作ってみて!」=ワークサンプルテストの導入。

その代わりにお願いしているのがこれ。いわゆるワークサンプルテスト。実際にデザインを作ってきてもらい、完成だけでなく“思考と試行の過程”を見せてもらいます。

いま抱えている“実際の課題”をそのまま渡して取り組んでもらう。

僕らが募集するのは主にUI/UXデザイナー。実務の課題(イシュー)を出し、Figmaのファイルと社内で使うアセット(デザインシステム等)を渡します。必要に応じてPRやIR資料も参照いただけるようにしています。

その中で一つだけ制約があります。

途中経過をすべて残すこと。

完成だけを見ても本質は分からないからです。一次面接と二次面接の間などの期間で取り組んでもらいます。

有料記事を売れるようにするためのデザインを考える、などの実務に即したテーマ。

これは実際にお出ししている課題の一例です。社内でも僕らが普段から取り組んでいる命題。これくらいふわっとした粒度でお渡しをしてしまっています。

	評価観点①:その人ならではの“こだわり”がわかること。

ここで見えるのが、その人ならではの“こだわり”と作法。徹底的にリサーチから入る人、まず手を動かす人、スケッチを多用する人──やり方は自由。

ある意味こだわらないところが見えるのも良いところ。レイヤー名の付け方も含めて、その人の思考がにじみます。(僕はレイヤー名を気にしない人なので、そういう方を見るとシンパシーを感じる)

評価観点②:こだわり+「どれくらい時間がかかったか」がわかること。

次に、かけた時間をざっくり記録してもらう。みなさんお忙しいとは思うので長時間の作業は求めません。むしろ限られた時間でどれだけ密度の高い試行ができたか──そこを見ます。

僕ら自身も一つ一つにそこまでの時間がかけられているわけではないですし、時間をかけたら良いものができるというわけでもないですからね。

評価観点③:さらに「伝えるためのデザインができるか」まで確認すること。

そして“伝えるためのデザイン”ができているか。ユーザーに対してはもちろん、チームに対しても。エンジニア、プロダクトマネージャー、広報、オペレーションなど他職種が読んで分かる設計や注釈、説明の仕方まで含めて見ています。

評価観点④:上記に加えて「どこまで深く考えているか」を見ること。

さらに、情報が足りない中でどこまで仮説を立てられるか。正直なところお渡しする情報だけではデザインをするには全く足りません。数字もユーザー調査も揃わない前提で、妥当な前提と打ち手を組み立てられるかを見ます。

逆に「これがわかったらもっとこうできる」なども聞かせてもらえると好印象。

評価観点⑤:協働で自分一人では作れないものを生み出せるか、まで含めて評価。

そして最後が人と一緒に作り上げることで自分ではできないものが作れるか。面接では一方的なレビューをするわけではありません。作っていただいたものをもとに、ディスカッションをしていきます。

なぜこうしたのか、ここの情報は実はこうなっているがその場合どうするか。エンジニアやプロダクトマネージャーなども入ってディスカッションし、その場でより良い形に発展するか。相乗効果が立ち上がる瞬間を見たいんです。

逆にいえば面接を受けにきてくれる方も、これを感じてもらえるかがとても重要なわけです。

知りたいのは映えではなく一緒に仕事をしたいかどうか

だから知りたいのは、作品の“正解”かどうかではありません。一緒に仕事をしたいかどうか。そこに尽きます。

参加者の声(この人と働きたい/noteの仕事の仕方がわかった/盛らなくていいから安心)。

これは実際の声です。面接する側・受ける側の双方で満足度が高い。安心感がある、実際の仕事像が分かる。面接は“互いのマッチング”を見る場。この相互性が欠けると、採用はうまくいきません。

結局は「対話」が命、という結論

結論。対話が命です。ポートフォリオは“伝わる”を実現するための手段の一つにすぎない。

「盛れなくていい、響けばいい」

ポートフォリオが美しい、かっこいいというのもこのための手段にすぎません。相手の心に響くか、そして一緒に働きたいと思ってもらえるのか。

「そのポートフォリオ、必要ですか?」

だからこそ、あえて最後に聞きます──そのポートフォリオ、本当に必要ですか?

決してそれ自体が必要ないと言っているわけではありません。ただ、惰性で作ったり作ってもらったりしていませんか?

作る/作ってもらう目的は何か。職場や学校に戻ったら、ぜひ意図から問い直してみてください。また違った答えが見つかるかもしれません。


ご清聴ありがとうございました。



イベント情報など、マガジンやXで発信しています。
ぜひフォローして最新情報をお待ちください。

また、noteの記事をまとめたマガジンも運営しています。
気になるテーマがあれば、イベントの合間にぜひご覧ください。

いいなと思ったら応援しよう!

宇野雄 / note inc. CDO 頂いたチップは次なるUIデザインやその記事に活かしていきます!