MEDDICは「案件の健康診断」だった ── PTC社の売上を3倍にした、大型商談を取りこぼさない6つのチェックポイント


この記事の読み方

この記事は、あなたの持ち時間に合わせて3つのパートに分かれています。

【Part 1】5分で理解する ── MEDDICの全体像をつかむ。「要するに何なのか」がわかる。
【Part 2】さらに10分で深く理解する ── 6つの要素の聞き出し方と、BANTとの使い分けを掘り下げる。
【Part 3】15分で実践に移す ── 大型商談の会話シナリオを読みながら、MEDDICの使い方を体感する。

通しで読めば約30分。まずはPart 1だけ読んで、大型案件を抱えたタイミングでPart 2、Part 3を読む──という使い方でも構いません。


Part 1:5分で理解する

「なぜ、勝てるはずの大型案件をいつも最終局面で落とすのか」

営業をやっていて、最も精神的にこたえる瞬間がある。

3ヶ月かけて育てた大型案件。デモも好評、担当者も乗り気、見積もりも予算内に収まっている。あとは稟議が通るのを待つだけ──そう思っていた。

2週間後、担当者から電話が来た。「すみません、社内で検討した結果、今回は見送りになりました。」

理由を聞くと、「上が別の優先事項を決めた」「情シスのセキュリティ基準に引っかかった」「そもそも予算枠が別部門に移った」。

3ヶ月の労力が、一瞬で消えた。

何が悪かったのか。商談中のトークか。提案書の出来か。価格か。

どれも違う。問題は「見えていない部分」を確認していなかったことだった。

担当者は乗り気だったが、最終決裁者は別にいた。判断基準にセキュリティが含まれることを知らなかった。稟議のプロセスに情シス部門のレビューが挟まることを見落としていた。

こうした「見えていない地雷」を、商談の初期段階で全部洗い出すための仕組みがMEDDICだ。

MEDDICとは何か

MEDDICは、1990年代にPTC社のジャック・ナポリとディック・ダンケルが開発した、大型BtoB商談向けの営業フレームワーク。PTC社はこの手法を導入後、年間売上を3億ドルから10億ドルに成長させた。

6つの要素の頭文字を並べたものだ。

M ── Metrics(指標) 顧客が導入で期待する定量的な成果。「何がどれだけ改善されれば成功か」。

E ── Economic Buyer(経済的意思決定者) 最終的に「GO / NO GO」を判断する人物。予算の決裁権を持つ人。

D ── Decision Criteria(判断基準) 顧客がベンダーを選ぶ際の評価基準。何を、どの優先度で比較するか。

D ── Decision Process(意思決定プロセス) 「誰が・いつまでに・どのような手順で」決定するかのフロー。

I ── Identify Pain(課題の特定) 顧客が抱えるビジネス上の「痛み」。表面的な不満ではなく、事業インパクトまで。

C ── Champion(チャンピオン) 顧客の社内で自社の味方になり、導入を推進してくれるキーパーソン。

BANTとの違い

このシリーズでBANT条件も紹介した。BANTもMEDDICも「案件を見極める」フレームワークだが、スコープが違う。

BANT ── 「この案件は追う価値があるか」を判定する。4つの条件でフィルタリングし、追うかどうかを決める。中小〜中堅規模の商談向け。

MEDDIC ── 「この案件を確実に受注するには何が足りないか」を診断する。6つの要素で案件の健康状態をチェックし、欠けている部分を埋めるアクションを打つ。大型・エンタープライズ商談向け。

BANTは「信号機」。赤なら止まる、青なら進む。 MEDDICは「健康診断」。異常値があれば、治療する。

言い換えると、BANTで「追う」と判断した案件を、MEDDICで「確実に取る」ための精密検査にかける──という使い方が最も効果的だ。

Part 1のまとめ: MEDDICとは「大型商談の6つの要素を初期段階で洗い出し、欠けている部分を埋めることで、最終局面での逆転負けを防ぐフレームワーク」のこと。BANTが案件の「選別」ならMEDDICは案件の「精密検査」だ。


Part 2:さらに10分で深く理解する

Part 1で全体像はつかめたはずだ。ここからは、6つの要素それぞれの「聞き出し方」と「見落としポイント」を掘り下げる。

M(Metrics)── 「便利になります」では稟議は通らない

Metrics(指標)は、顧客が導入によって期待する定量的な成果指標のことだ。

ここで重要なのは、**「営業が提示する指標」ではなく「顧客自身が合意する指標」**であること。

営業側が「弊社のツールを使えばアポ率が2倍になります」と言っても、顧客が「うちの場合はアポ率より、1件あたりの商談時間の短縮が重要だ」と思っていたら、指標がズレている。ズレたまま進むと、稟議書に書く数字が顧客の実感と合わず、通らない。

聞き方のコツ

「どのくらい改善を期待していますか?」だと抽象的すぎる。

「導入後に、どの数字がどれだけ変わったら成功と言えますか?」

こう聞くと、顧客は具体的に考え始める。「月間のスクリプト作成時間が40時間→10時間になれば」「新人の初受注までの期間が6ヶ月→3ヶ月になれば」──こうした数字が出てくる。

出てきた数字をROI計算書に落とし込んで共同で作成すると、稟議書の通過率が劇的に上がる。「営業が持ってきた数字」より「自分たちで算出した数字」の方が、決裁者は信じる。

E(Economic Buyer)── 「会えない決裁者」が案件を殺す

Economic Buyer(経済的意思決定者)は、6要素の中でChampionと並んで最も重要だ。

ここで言うEconomic Buyerとは、「最終的にGO/NO GOのボタンを押す人物」のこと。多くの場合、商談相手の上長や、別部門の役員がこれに該当する。

最もよくある失敗

担当者と3ヶ月間いい感じで商談を進め、「あとは稟議だけです」と言われ、2週間待ったら「見送り」──冒頭の失敗パターンそのものだ。

原因は、Economic Buyerに一度も会えていない、あるいは存在すら把握していなかったこと。

聞き方のコツ

「決裁者はどなたですか?」と直球で聞くとBANTの項で紹介したのと同じ問題が起きる。プロセスとして聞く。

「今回の投資判断を最終的に承認されるのは、どなたになりますか? 可能であれば、その方のお考えや懸念点を事前に把握しておきたいのですが。」

BANTでは「決裁者に会えるか」を確認するだけで十分だったが、MEDDICではもう一歩踏み込む。Economic Buyerが何を重視し、何を恐れているかまで把握する。それによって提案書の構成が変わるからだ。

D(Decision Criteria)── 「何で選ばれるか」を知らずに提案するな

Decision Criteria(判断基準)は、顧客がベンダーを比較する際の評価項目と優先順位だ。

多くの営業は、自社の強みを全面に出した提案書を作る。しかし、顧客の判断基準と自社の強みがズレていたら、刺さらない

たとえば、自社のツールのUIの美しさが強みだとする。しかし顧客の判断基準が「セキュリティ > 価格 > API連携の柔軟性」だった場合、UIの話をいくらしても評価されない。

聞き方のコツ

「ツール選定で最も重視される評価ポイントを3つ挙げるとすれば、何ですか?」

3つに絞ることで、優先順位が明確になる。その上で、自社が勝てる基準にフォーカスした提案書を作る。

さらに一歩進んで、**「その判断基準は、どなたが決められたものですか?」**と聞く。判断基準を決めた人物がEconomic Buyerや情シス部門の場合、その人物の意向を直接確認する必要がある。

D(Decision Process)── 稟議フローを図にして共有しろ

Decision Process(意思決定プロセス)は、「誰が・いつまでに・どのような手順で」決定するかのフロー全体だ。

BANTのTimeline(導入時期)に似ているが、MEDDICではもっと細かく把握する。

「来月中に決めたい」──これはBANTで十分な情報だ。 MEDDICではこうなる。「まず担当者が3社に絞る→部長が比較表を確認→トライアル2週間→情シスがセキュリティチェック→役員決裁→契約。全体で6週間。」

やるべきこと

把握したプロセスを図にして顧客と共有する

「現在の検討プロセスを整理させてください。こういう流れで合っていますか?」と、フロー図を見せながら確認する。

これをやると2つの効果がある。① 認識のズレが防げる(「実はIT部門のレビューが抜けていた」)。② 停滞ポイントを先回りできる(「セキュリティチェックに2週間かかるなら、今から資料を準備しましょう」)。

I(Identify Pain)── 痛みの「深さ」を測る

Identify Pain(課題の特定)は、SPIN話法のP(問題質問)とI(示唆質問)に近い。

ただしMEDDICでのPainは、**単に「困っている」ではなく「事業インパクトのレベルまで特定する」**ことが求められる。

「スクリプト作成に時間がかかっている」──これは表面的なPain。 「スクリプトの品質がバラバラ→アポ率に3倍の差→上位メンバー退職時に売上が40%落ちる→採用コスト年間1,500万」──これが事業インパクトまで掘り下げたPain。

なぜ「深さ」が重要か

稟議書には「なぜ今この投資が必要か」を書く必要がある。Painが浅いと、決裁者は「急ぐ必要はない」と判断する。Painが深ければ深いほど、「これは今期中に手を打たなければまずい」と感じる。

PainとMetricsは表裏一体だ。 Painが「年間1,500万のコスト」なら、Metricsは「このコストを500万以下に削減すること」になる。セットで押さえることで、稟議書の説得力が飛躍的に上がる。

C(Champion)── MEDDICの最重要ピース

Champion(チャンピオン)は、顧客の社内で自社の導入を推進してくれるキーパーソンだ。

6つの要素の中で、受注確度に最も影響するのがこのChampionだ。 チャンピオンがいない案件は、他の5つの要素がすべて揃っていても、終盤でひっくり返されるリスクが高い。

チャンピオンとは誰か

チャンピオンは以下の3条件を満たす人物だ。

① 自社の導入にメリットを感じている。 単に「いいツールだね」と思っているだけでなく、「導入されると自分の仕事が楽になる」「自分の評価が上がる」と感じている。

② 社内で影響力がある。 決裁者に直接アクセスでき、意見が通る立場にある。担当者レベルでも、上長の信頼を得ている人物なら該当する。

③ 実際に社内で動いてくれる。 稟議書を書く、関係部署への根回しをする、反対派を説得する──こうしたアクションを自発的にやってくれる。

偽のチャンピオンに注意

ここが最も見落とされやすいポイントだ。

商談中に「これいいですね!ぜひ入れたいです!」と熱心に言ってくれる人がいる。だがその人が②(社内影響力)と③(実際に動く)を満たしていなければ、ただのファンであってチャンピオンではない。

ファンは「応援はするけど、稟議書は書かない」。チャンピオンは「自分が稟議書を書いて、部長を説得しに行く」。この違いを見極めるには、一つの質問が有効だ。

「○○さんが社内でこの導入を推進される場合、最初に誰を説得する必要がありますか? その方を説得するために、私にできることは何ですか?」

この質問に対して、「まず情シスの△△さんに話を通す必要があります。セキュリティ要件の資料を用意してもらえますか」と具体的に返してくれるなら、チャンピオンだ。「うーん、まあ自分から言ってみますよ」程度なら、ファン止まりの可能性が高い。

MEDDICを使いこなすための5つの鉄則

① 6要素を商談初期に全部確認する。 終盤で初めて「決裁者は別にいた」と気づくのでは遅い。初回〜2回目の商談で6要素の概要を把握する。

② CRMに6要素を記録する。 Salesforce、HubSpot、スプレッドシート──何でもいい。案件ごとに6要素の把握状況を「済/未」で管理する。

③ 週次のパイプラインミーティングで棚卸しする。 マネージャーとメンバーで「この案件のChampionは誰?」「Economic Buyerに会えた?」と1案件ずつ確認する。

④ 欠けている要素を埋めるアクションを即座に決める。 「未」が残っている要素に対して、次の商談で何をするかを具体的に決める。

⑤ ChampionとEconomic Buyerを最優先する。 6つの要素の重要度は均等ではない。C(Champion)とE(Economic Buyer)の2つが揃っていない案件は、他が全部揃っていても危険だ。

Part 2のまとめ: MEDDICの6要素は「商談初期に全部確認し、欠けている部分を埋める」のが鉄則。特にChampion(社内推進者)とEconomic Buyer(最終決裁者)の2つが最重要。Painは事業インパクトまで深掘りし、Metricsと連動させる。Decision ProcessはフローEを図にして顧客と共有する。


Part 3:15分で実践に移す

ここからは、大型商談でMEDDICの6要素をどう確認していくか、会話シナリオを3パターン掲載する。


シナリオ1:製造業のDX推進部門にクラウドプラットフォームを提案する

前提: あなたはクラウドプラットフォームの営業。相手は年商500億円の製造業のDX推進室長(40代)。案件規模は年間2,000万円。


<I:Identify Pain ── 課題の特定から入る>

営業「御社の中計で"生産管理のデジタル化"を重点施策に掲げていらっしゃいますが、現場では具体的にどのような課題が発生していますか?」

室長「各工場のデータがバラバラのExcelで管理されていて、全社の生産状況をリアルタイムで把握できないんです。月次の経営報告用に手作業で集計しているんですが、1週間かかっています。」

営業「1週間分のタイムラグがあると、経営判断にもその分の遅れが出ますよね。この問題は事業にどの程度のインパクトがありますか?」

室長「先月、在庫の過剰生産に気づくのが2週間遅れて、3,000万円分の廃棄ロスが出ました。リアルタイムで見えていれば防げた話です。」

【設計意図】 Painを表面(Excelでバラバラ)から事業インパクト(3,000万円の廃棄ロス)まで深掘り。この数字がMetricsとROI計算の起点になる。


<M:Metrics ── 成功指標を合意する>

営業「3,000万円の廃棄ロスは大きいですね。仮にリアルタイムでデータが統合された場合、「これだけ改善されたら成功」と言える指標はどのあたりですか?」

室長「廃棄ロスを年間1億から3,000万以下に減らすこと。あと、月次の集計作業が1週間から1日になれば、経営報告のスピードも上がります。」

営業「では、"廃棄ロス70%削減"と"集計作業時間の80%短縮"を成功指標として設定しましょう。この数字で稟議書のROI計算を一緒に作りませんか?」

室長「それは助かります。」

【設計意図】 Metricsを顧客自身の言葉で定義させ、共同でROI計算書を作る提案。「営業が言った数字」ではなく「自分たちで算出した数字」なので、稟議で通りやすい。


<D:Decision Criteria & Process ── 判断基準とプロセスを把握する>

営業「ベンダーを選定される際、最も重視される評価ポイントはどのあたりですか?」

室長「まずセキュリティ。うちは製造業なので生産データの外部流出は絶対にNG。次にカスタマイズ性。工場ごとにフォーマットが違うので、柔軟に対応できるか。3番目が価格ですね。」

営業「ありがとうございます。ちなみに導入決定までのプロセスを教えていただけますか?」

室長「まず私が3社に絞って比較表を作ります。その後、情報システム部のセキュリティ審査を通して、最後に常務が最終判断します。」

営業「セキュリティ審査はどのくらい時間がかかりますか?」

室長「通常2〜3週間です。ここが一番のボトルネックになりがちで。」

営業「では、セキュリティ審査に必要な資料を今の段階から準備しておきましょう。先に情シスの方と一度お話しさせていただくことは可能ですか?」

【設計意図】 Decision Criteria(セキュリティ > カスタマイズ性 > 価格)とDecision Process(室長→情シス→常務)を把握。さらに「ボトルネック(セキュリティ審査2〜3週間)」を先回りして解消する提案をしている。


<E:Economic Buyer ── 最終決裁者を特定する>

営業「最終判断をされる常務の方は、どのような点を重視される方ですか?」

室長「投資対効果を数字で見る人です。"いくら使って、いくら返ってくるのか"が明確でないと通しません。あと、他社の導入事例をよく聞きたがります。」

営業「であれば、先ほど合意した廃棄ロス70%削減のROI計算書と、同業の導入事例をセットで常務向けの資料を作りましょう。可能であれば、常務への最終プレゼンの場に同席させていただけますか?」

室長「それは調整できると思います。」

【設計意図】 Economic Buyer(常務)の判断傾向(ROI重視・事例重視)を把握し、それに合わせた資料を事前に準備。さらに直接プレゼンの場への同席を取り付けた。


<C:Champion ── 社内推進者を見極める>

営業「○○さんが社内でこの導入を推進される場合、最初にどなたを説得する必要がありますか?」

室長「情シスの部長ですね。セキュリティ審査のゲートキーパーなので。あと、工場長3名にも理解を得る必要があります。情シスの部長には私から話を通します。セキュリティ要件の資料を先に用意してもらえますか?」

営業「承知しました。来週中にお送りします。工場長の方々には、どのようなアプローチが効果的ですか?」

室長「現場のデータが見える化されるメリットを、各工場の具体例で見せると響くと思います。各工場のデータサンプルを使ったデモを用意してもらえれば、私が同行して工場長に直接見せます。」

【設計意図】 室長がChampionの3条件(①自身にメリット ②社内影響力 ③実際に動く)を満たしている。「セキュリティ要件の資料を用意してほしい」「私が工場長に見せに行く」──自発的にアクションを取る姿勢が確認できた。


【この案件のMEDDIC診断】

要素 状況 次のアクション M(指標) ✅ 済 廃棄ロス70%削減・集計80%短縮で合意。ROI計算書を共同作成 E(決裁者) 🔄 進行中 常務。ROI重視。最終プレゼン同席を調整中 D(判断基準) ✅ 済 セキュリティ > カスタマイズ性 > 価格 D(プロセス) ✅ 済 室長→情シス審査(2-3週)→常務決裁 I(課題) ✅ 済 廃棄ロス年間1億。集計に1週間。経営判断の遅れ C(チャンピオン) ✅ 済 DX推進室長。情シスへの根回しと工場長へのデモを自発的に推進

6要素中5つ済、1つ進行中。Economic Buyerとの直接面談を確定させれば、受注確度は極めて高い。


シナリオ2:SaaS企業の営業組織にセールスイネーブルメントツールを提案する

前提: あなたはセールスイネーブルメントツールの営業。相手はSaaS企業のVP of Sales(30代後半)。営業組織80名。案件規模は年間1,200万円。


<I:Identify Pain>

営業「80名の営業組織を運営される中で、今最も深刻な課題はどのあたりですか?」

VP「新人のランプアップに時間がかかりすぎていますね。平均で初受注まで5.5ヶ月。年間40名近く入れ替わるので、常にチームの半分が助走期間にいる状態です。」

営業「半分が助走期間だと、実質的な戦力は40名分しかない計算ですね。その分の売上の機会損失は年間でどのくらいですか?」

VP「1人あたりのクォータが月200万として、40名 × 200万 × 2.5ヶ月分(短縮可能な期間の半分)で……2億円くらいの逸失売上ですね。」

【設計意図】 Painを「ランプアップ5.5ヶ月」から「年間2億円の逸失売上」まで数字で深掘り。


<M:Metrics>

営業「仮にランプアップ期間を5.5ヶ月から3ヶ月に短縮できたら、それが成功指標になりますか?」

VP「3ヶ月は理想ですね。現実的には4ヶ月でもかなりのインパクトです。あとはコンテンツの利用率。今は営業資料や事例集を用意しても、使われている率が20%くらいで。これを60%以上にしたい。」

【設計意図】 Metrics2つで合意。ランプアップ短縮(5.5→4ヶ月)とコンテンツ利用率(20→60%)。


<D:Decision Criteria>

VP「ツール選定で重視するのは、SalesforceとのAPI連携がスムーズか、モバイル対応しているか(営業は外出が多い)、そしてカスタマーサクセスのサポート体制ですね。」

【設計意図】 判断基準3つを把握。自社がSalesforce連携に強みがあれば、そこを提案の軸にする。


<D:Decision Process>

VP「まず私が2社に絞ります。そこからCROの承認を取り、IT部門のセキュリティチェックを通して、CFOが最終承認。全体で1.5ヶ月くらいの見込みです。」

営業「IT部門のセキュリティチェックにはどのような情報が必要ですか?」

VP「SOC2の認証取得状況と、データの保管場所。早めにいただけると助かります。」

【設計意図】 プロセスとボトルネック(IT部門のセキュリティチェック)を把握。資料の先出しでプロセスを加速させる。


<E:Economic Buyer>

営業「最終承認されるCFOの方は、どのようなポイントを重視されますか?」

VP「ROIが明確で、導入後12ヶ月以内に投資回収できることが条件です。あと、既存ツールとの重複がないかを気にします。」

【設計意図】 Economic Buyer(CFO)の判断基準:12ヶ月でROI回収、既存ツールとの重複排除。提案書にこの2点を明記する。


<C:Champion>

営業「○○さんが社内で推進される中で、CROやCFOへの提案は○○さんが直接されますか?」

VP「CROには私から。CFOへはCRO経由ですね。IT部門には今から私がセキュリティ要件の確認を入れておきます。ROI計算書を一緒に作ってもらえますか? CFOへの報告に使います。」

【設計意図】 VP自身がChampion。CROへのアクセス、IT部門への根回し、ROI計算書の活用──すべて自発的に動いている。


【MEDDIC診断】

要素 状況 次のアクション M ✅ ランプアップ5.5→4ヶ月、コンテンツ利用率20→60% E 🔄 CFO。12ヶ月ROI回収が条件。CRO経由でアクセス D(基準) ✅ Salesforce連携 > モバイル > CS体制 D(プロセス) ✅ VP→CRO→IT審査→CFO承認。1.5ヶ月 I ✅ ランプアップ遅延。年間2億の逸失売上 C ✅ VP of Sales。CROアクセス可、IT根回し自発


シナリオ3:金融機関の法務部門にリーガルテックを提案する

前提: あなたはAI契約レビューツールの営業。相手は中堅証券会社の法務部課長(40代)。案件規模は年間800万円。


<I:Identify Pain>

営業「法務部門で現在最も工数がかかっている業務はどのあたりですか?」

課長「契約書のレビューですね。営業部門から月に200件以上の契約書が上がってきて、法務3名で全件チェックしています。1件平均45分。月に150時間以上が契約レビューに消えています。」

営業「月150時間。法務3名の総工数が月480時間(3名×160時間)だとすると、約30%がレビューに使われている計算ですね。その分、本来やるべきコンプライアンス業務やM&Aの法務支援に時間が割けていない?」

課長「まさにそうです。先月もM&A案件の法務DDが後回しになって、経営陣から叱責を受けました。」


<M:Metrics>

課長「レビュー時間を半分──1件45分を20分くらいにできれば、月75時間を取り戻せます。年間900時間。人件費に換算すると…」

営業「法務人材の時間単価を考えると、年間で1,000万円以上のコスト相当ですね。」


<E:Economic Buyer>

課長「決裁は管理本部の取締役です。ただ、金融機関なのでコンプライアンス部門の承認も要ります。AIが契約条項を判断するという点に懸念を持つ人がいるかもしれません。」

営業「コンプライアンス部門の方の懸念を事前に解消するための資料を準備しましょうか。AI活用に関する金融庁のガイドラインとの適合性を整理した資料があります。」


<C:Champion>

営業「○○さんが社内で推進される場合、コンプライアンス部門のどなたを最初に巻き込むべきですか?」

課長「コンプ部の副部長です。来週の定例会議で私から話を出します。その際に使える1枚のサマリー資料をもらえますか? AIの判断精度と、最終判断は必ず人間が行う運用フローの説明が入っていると通りやすいです。」

【設計意図】 課長がChampionとして機能。コンプ部門への根回しを自発的に行い、必要な資料の仕様まで具体的に指定してきている。


3つのシナリオに共通する「構造」

3つのシナリオに共通するパターンを整理する。

I(Pain)から入る。 課題の深掘りが起点。事業インパクトを数字で特定する。

M(Metrics)はPainと連動する。 Painが「年間1億の廃棄ロス」ならMetricsは「70%削減」。セットで押さえる。

D(Decision)は先回りする。 プロセスのボトルネック(セキュリティ審査、コンプライアンス承認)を特定し、資料の先出しで加速させる。

E(Economic Buyer)は間接的に攻める。 直接会えなくても、判断傾向を把握し、その人に刺さる資料を用意する。

C(Champion)は行動で見極める。 「いいですね!」ではなく「来週の会議で私から話を出します」と言う人が本物のChampion。


明日の大型商談から使える ── MEDDICチェックシート

案件ごとに以下を埋めてみてほしい。10分で終わる。

【案件名】
【案件規模】
【担当者】

【M ── Metrics(指標)】
顧客と合意した成功指標:
ROI計算の根拠:
状況(済/未):

【E ── Economic Buyer(経済的意思決定者)】
最終決裁者:
その人が重視するポイント:
直接アクセスの可否:
状況(済/未):

【D ── Decision Criteria(判断基準)】
顧客の評価ポイント(優先順位付き):
1.
2.
3.
自社が勝てるポイント:
状況(済/未):

【D ── Decision Process(意思決定プロセス)】
フロー:___→___→___→___
ボトルネック:
先回りアクション:
状況(済/未):

【I ── Identify Pain(課題の特定)】
表面的な課題:
事業インパクト(数字):
状況(済/未):

【C ── Champion(チャンピオン)】
候補者:
Champion 3条件の確認:
① 導入メリットを感じているか:
② 社内影響力があるか:
③ 実際に動いてくれるか:
状況(済/未):

【総合判定】 6/6済 = 受注確度高 / 4-5/6済 = 要アクション / 3以下 = 要注意
【最優先で埋めるべき要素】
【次のアクション】


MEDDIC対応のスクリプトを自動生成する

ここまで読んで、「MEDDICの6要素を確認する質問を自然な会話の流れに組み込むのは、かなりの設計力がいるな」と感じた人もいると思う。

自分もそうだった。だから、MEDDICの6要素をヒアリングするための質問を自動で組み込んだスクリプトを生成するツールを作った。

スクリプトAI → https://script-ai-opal.vercel.app/

業種・ターゲット企業名・役職・商材を入力するだけで、MEDDICの各要素を確認するステップを含んだ電話スクリプトと営業メールを自動生成する。フリープランで1日2回まで無料。

大型案件を落とさないための準備を、まずは1本のスクリプトから始めてみてほしい。


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