⒉魂のカタルシス〜薩之綉編〜②
体が重く痛い。
これは、やばい。強い霊だ。
何かはわからないけど、強いってことだけを伝えた。
実は、彼氏も霊感が強いらしく
何かを感じていたようだった。
そして、すぐに浄霊の依頼となった。
浄霊開始
私は目を瞑り深く深呼吸する。
座禅を組み体をリラックスさせる。
そして、それはすぐに現れた。
気配と共に暗闇の中に現れるイメージ。
若い坊主頭の男の霊。
修行僧のようだ。
両手を胸の位置で合わせて目を瞑っている。
キリッとしたキレイな顔立ち。
私はふいに全身にギュッと力が入るのを
感じた。
暗闇の中に男だけがいる。
静けさと広さを感じないこの空間の中で
存在感だけが、妙に際立つ。
そして突然、男がカッと目を開いて、私をみる。
その瞬間私は金縛りにあったように体が硬くなった。
男がスッと私の前にきて、
黒い長い袖を大きく振りかざして
両腕で私を抱きしめた。
そしてとてもきつく、強く抱きしめてくる。
私の体はギュウっと苦しくなる。
抱きしめてるというより縛り付ける、骨が折れそうな勢い。
苦しい、、、
そう思った瞬間、男はハハハと
声をあげて笑う。
私はどんどん重く体に伴う痛みを感じながら聞いた。
「お坊様でいらっしゃるような
お方がどうしてこのような事を私にするのですか?」
高笑いをしながらさらに両腕で締め付ける。
【わからないか?】
「わかりません。」
【ならば教えてあげよう。お前は未熟者だ!】
怒鳴り声をあげる。
何に対して怒っているのか?
「はい、それは自分でも存じ上げております。」
【ならば、なぜ、まだしようとする?
今まさに、苦しくきつい思いをしてまで、オレを浄仏させようとするのか?】
ゆっくり呼吸を整えて答える。
「私にしか出来ないご縁やお役に立てる事があると思うからです。」
両腕にさらに力が入りキツく締め付けられる。
【過信しておる。】
痛い。苦しい。
【やめておけ。お前には無理だ。】
低いトーンで体全体に響く声。
【お前には無理だ。
お前は何も知らない。
私達がどんな修行をしてどんな事を学び
どんな技術を持って日々自分を律し続けているか。
私達と同じようには出来ない。
お前には無理だ。
もうやめた方がいい。】
私は呼吸を整えた。
【愚かなやつだ。】
締め付けられたまま、彼の両手が熱くなるのが伝わってきた。
腕から念のような気が出ているのがわかる。
どんどん熱くなる。
けれど、どこか包まれて癒されていくような感覚になってくる。
そうか、きっとこれは、人の治癒力が備わったものだ。
昔から気というエネルギーを使って人は身体を治療してきた。
彼の修行といっていたのは、これのことか?
修行して備わったものか、元々持っていた能力か。
【感じるか。これが私の技術だ。】
そう言った瞬間、
今まで暗闇だった空間から移動する。
周りを見渡すと
どこかのお寺の境内に場所が変わっていた。
澄んで晴れた青空、木陰を作ってくれる伸びた木々、鳥のさえずり、心地よく吹く風。
お寺の中に人がいる。
ゆっくり近づいてみると、
そこには、
お師匠様のような、羽織の色の違う年配のお坊さんと、
さっき私の前に現れたあのお坊さんがお寺の中にいた。
師匠の方が怒っているようだ。
しかし、よくみると目が見えないのか、、、?
お師匠さんは両目を瞑っている。
若いお坊さんは両手のひらを上に向けて
師匠の前に差し出す。
すると、師匠は何かを手のひらに押しつけた。
お坊さんは声を押し殺しているようにもにもみえるが、小刻みに震えている。
師匠がその場から離れて行ったのをみて
私はそっと近づいた。
すると、彼の両手のひらに焼き石でつけられた
「✖️」の印だった。
両手の気の力を封印されたのだ。
「どうして、、、」
思わず、声を出してしまった私の方をみて彼は言った。
【師僧は目が見えない。それは、この世のものではないものを見えすぎるが故に、当時の師僧から焼き石で焼かれ、目を封印された。
わかるか。
私達は、お経をあげて、死者を極楽浄土へ送ること、気持ちを沈める事が役目だからだ。
観音様が私におっしゃってくれている事が全て。
それ以外は邪念となり邪気となり私達の邪魔をしてくる。
私の感じる事以外を受け取ることはあり得ない!】
急に強い口調で言った。
すると強い風が吹いてきて、巻き込まれそうになる。
パッと目を開けると、広い講堂にいた。
たくさんのお坊さんがみんなでお経を唱えている。
その一番前にはあの若いお坊さんが中心にいる。
その前に並んだお坊さん達の様子がへんだ。
恐る恐る近寄ってみる。
よくみるとみんなどこかをなくしていた。
口を焼かれた者。
耳を切り落とされた者。
指を切り落とされた者。
本当は素晴らしい戦士たち(お坊さん)が集まっていたのに
全てを封印したのだ。
つづく
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