心の光
患者の前にスープを出した。
静かにスープを飲む患者の体が、流れる熱を追うように淡く発光し始めた。
「…見て、光ってる」
指差すところは心臓だった。
患者「…だいぶ侵食されているね」
自分の胸を見つめながら、患者は苦く笑う。
患者「どうしようか」
私はその言葉に肩をすくめる。
「それは患い虫だよ。
虫よけの薬を飲めば死滅する」
「…だけど、失うものもある」
患者は分かっているように、目を閉じる。
「手離したくないほど、大切?」
患者「今の私には宇宙一、大切なものだ」
「じゃあ抱えておく?」
患者は胸の光をそっと抑える。
「この年齢になると、これ以上手放すことには抵抗があるよ」
私は虫よけの薬をしまう。
「なら、そのままにしよう。
時々痛むことはあるけど、死んだりはしないよ」
患者はどこか安心したように微笑む。
「…ありがとう、先生」
私はその言葉を後に部屋を出る。
「先生!おじいちゃんの容態はどうですか!?」
孫娘の顔を見て、私は肩を軽く叩く。
「大丈夫。
“恋煩い”で人は死なない」
「でも恋する心を叩いたりしてはダメだよ?」
「人の心は弱いんだから」
振り返る部屋の中で、患者は幸せそうな顔で窓の外を見つめていた。
お読みいただいて、ありがとうございました。
本作は、はらとけいさんのお題に参加しております。
