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瓶の中の赤いグミ

白いレースのカーテンが揺れた。

その人は品よく椅子に腰掛け、背筋を伸ばし静かに微笑む。

外は蒸し暑く、ジメッとした湿気が肌にまとわりつく。

しかしその人からは、日本特有の暑さを感じない涼し気な空気を感じた。

「なにからお話ししましょうか?」

柔らかな声に背筋が冷たくなる。

こんなにも穏やかで優しげな人がー

人を壊したなんて。

俺は録音機を机の上に置いた。

「あの…どうして、その人を選んだんですか?」

その人は俺の瞳を見つめた。

「…瞳が美しくて」

「その瞳を突いたら、どうなるのかなと思ったんです」

優しい声からは想像もできない残虐的な思想を聞いた。

「美しいのに…潰してしまうんですか?」

その人の手が脇に立てかけてある日傘の柄を撫でる。

切っ先の鋭さが嫌な想像を掻き立てる。

「…赤いグミのような感触だったら潰れずに、手元に置いておけるのではないかと思いまして」

常識では考えられないことだ。

だけど、この人の言葉はまるで夢を見ているかのような語り口だった。

「あなたは…いつもそのように人を見てるんですか?」

考えるように瞬きする。

「…私、人との境界線がよく分からないのです」

「地平線に浮かぶ空と海の境は曖昧で…どこから海で、どこから空か分からない」

「…だから、私が好きな人の瞳を奪うことが罪なのか…分からないのです」

人との境界が分からないというこの人は、それをまだ実行したとは言っていない。

「…それで、その、本当に瞳を奪ったんですか…?」

冷房が効いた部屋なのに、手には汗がにじんだ。

その人は目を細めて、美しく笑う。

「…家には、赤いグミが瓶の中に入っています」

俺は脇に置かれた日傘の柄を、息を飲んで見つめた。

「で、感想は?」

柔らかな声に鉛のような冷たさが俺の頭に響く。

その人の顔色は何一つ変わらない。

だけど、俺の瞳を静かに見つめている。

「…あなたの瞳は綺麗ですね」

録音機に残る声には、夢見る幻想が語られる記録だけが記されていた。


お読みいただいて、ありがとうございました。本作は、はらとけいさんの企画に参加しております。


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