あの日の第二ボタン
会社で隣の席の圭吾さんの、シャツのボタンが外れた。
僕「ボタン落としたよ」
「ああ、すみません」
僕「……第二ボタン、もらっていいですか?」
「困ります」
僕「冗談だよ。
卒業シーズンだから、女子の気持ちになってみた」
「ああ。
袖のボタンまで持っていかれて、シャツをはだけて帰りましたね」
僕「なにその伝説のモテ説!」
「流行ってたんです」
僕「何が?」
「“男子の第二ボタン、何個持ってるか”マウントが」
僕「聞いたことない狩りが流行ってる……」
「ボタンであれば、第二ボタンかどうかは定かではなくて、男子のものなら良いようなルールでした」
僕「……それは卒業式に狩られるの?」
「私は駐輪場で執行されました」
僕「刑の執行みたいになってる」
「手に持っていた鯛焼きは踏みつけられて、無惨な姿になりました」
僕「もうトラウマじゃん」
「……内緒にしてくださいね」
僕は沈痛な面持ちで、圭吾さんにボタンを返した。
