1人分のレシート
レシートに、初夏の風が
やわらかく揺れている。
その風の中、買い物袋を下げて
歩いていた。
通りのベンチに座って、
一休みする。
買い物袋から覗くレシートに
目を落とす。
それを眺めながら、
私は肩を揺らす。
「清々しい!」
その笑い声に隣に座る女性が、
驚いたようにこちらを見た。
「あ、ごめんなさいね」
私は笑いながら、
レシートを見せる。
女性は不思議そうに
それを見つめる。
「これね、今買い物してきた
レシート。1人分」
「この間まで2人分だったの。
も〜ビール6缶とか、牛乳とか米とか、毎回重くて死にそうだったの!」
私は買い物袋を指さす。
「見て、この軽さ!」
「軽くなったのは肩の荷だけじゃなくて、物理的にも軽くなったの」
「離婚、最高!」
買い物袋に入った一本の
チューハイに手をかけて止める。
代わりにチルドカップのカフェラテを出すと、軽快にストローを刺して飲んだ。
隣の女性は目をパチパチしながら、
その様子を眺めていた。
「…離婚したんですね」
ポツリと呟くその声に私は頷く。
「うん!
もうね、何で一緒にいたのか分からない。
おひとり様万歳よ」
テンションの高い私に対して、
彼女は俯く。
「…怖くないですか?
1人で生きるの…」
「…逆に怖くない?
その夫と一生暮らすの」
疑問の交差に私達は目を合わせる。
「それも…怖いです」
彼女は小さく笑う。
「じゃあさ私達、
お友達になりましょうよ」
「それは…怖くないわよね?」
彼女の顔を覗き込む。
「…いいんですか?」
私は大きく頷く。
「分かるよ。
離婚て結婚の時より一大事よね」
「でも、いざしてみるとね。
独身時代の自分より、強くて
太々しい自分がいるって分かるの」
彼女は大きく目を見開く。
「強くて…太々しい…」
「そう!
合わない人と結婚したって分かるだけ。
合う人がいたら、またしてもいいし、1人を謳歌したっていい」
私は彼女に乾杯するように
カフェラテを掲げる。
「その自由を取り戻すだけなんだから!」
掲げたカップを彼女は
眩しそうに見上げていた。
「…相談に行ってみようかな…」
「私も力になるよ。
まずはさ、家にお茶しにくる?
誰もいないの!私だけ」
浮かれた声の私に、彼女は笑う。
自由の羽を夢みるような顔で。
