5時限目、激辛ソース裁判
相澤(サンバルソース)
井田(ハバネロソース)
宇野(飲食店)
江崎(被害者)
小野(検察官)
加藤(弁護士)
先生(裁判長)
ここは男子校。
ざわついた教室に、5時限目のチャイムが鳴る。
先生「では今日の法定裁判やるチームは前に出てきて。今日の議題は?」
相澤が立つ。
「はい。今日の議題は
“サンバルソースvs ハバネロソース”です」
先生「辛さ対決か」
先生は資料を見ながら、メガネをかけ直す。
加藤(弁護士)「じゃあ、弁護士の俺から話しますね〜」
「被害者の江崎は先日、宇野の店で食べた豚肉料理に辛いソースをつけたことで唇が腫れ上がる事態になりました」
「しかし、かけたソースがサンバルソースかハバネロソースか分からず、どちらに責任があるのか判断できません。責任はサンバルソースかハバネロソースなのか〜」
江崎(被害者)「慰謝料要求〜!」
宇野(飲食店)「気持ちは分かるが、落ち着け」
宇野が江崎を制する。
相澤(サンバルソース)
「サンバルソースかハバネロソースかの前に、かけすぎだろ」
井田(ハバネロソース)
「唇がオバQって、塗りつけたのかよ」
江崎「お前らのせいでこうなったんだよ!?」
相澤「俺達はお前に付けてくれって言ってない」
井田「そうそう、良かったらどうぞ?の立ち位置」
検察の小野が立つ。
「確かにソースをかけて提供されたものであれば、限度があるという主張も分かります」
「ですが、お好みでかけるものはあくまで自己責任となります」
江崎「とりあえず、どっちが辛いんだよ?」
相澤が腕を組む。
「サンバルソースはな…辛さだけじゃないんだ」
「辛さの中に旨味があり、日本で言うなら“醤油”と同じくらい馴染みのある伝統的なソースなんだ」
江崎「…確かに辛いけど、美味かったな」
井田が手を広げて主張する。
「待て待て。ハバネロソースを舐めるな」
「こっちには辛さの中にある“フルーティな甘い香り”があるんだぞ。人参や玉ねぎの入った野菜の旨味もたっぷりだ」
江崎「…確かに、辛いのに鼻に抜ける甘さが癖になるんだ」
井田「な?美味いのはハバネロソースだよ」
宇野は閉じていた目をゆっくり開く。
「待ってくれ。美味いのはソースじゃない。豚肉…だろ?」
「ウチの豚肉は脂身がさっぱりして甘い、南国育ちのブランド豚なんだ。
氷で締めたものを“しゃぶしゃぶ用”に薄切りにして提供してる」
「この土台あってこその、ソースだろ!」
江崎「俺の食った豚、そんなに高級だったの…!?」
小野「つまり、あなたは最高の豚肉に最高のソースを使っていたということですね」
江崎「…美味かった訳だ」
井田がフッと笑う。
「唇のオバQは美味くて止められなかった代償みたいなものだな…」
加藤「そういう訳で、サンバルソースもハバネロソースも甲乙つけがたい美味さと辛味を持っていました〜」
先生「終わったのか。
ちなみに辛さだけで言えば、サンバルソースよりハバネロソースの方が圧倒的だぞ」
江崎「どんくらい?」
先生「タバスコの10倍以上」
江崎「井田〜っ!俺をオバQにしたの、お前じゃねえか!」
井田「いや、かけすぎ〜っ!!」
相澤が笑い出す。
「これはきついって!」
5時限目終了のチャイムが鳴った。
お読みいただいて、ありがとうございました。本作は、はらとけいさんの企画に参加しております。
