公園の低木に潜り込む人と話したい
歩いていて、ふと気になることが増えた。
その中で、この人と話が出来たら楽しいだろうな。
という人とも出会うことがある。
大体、結局話は出来ないのだけれど、もし話が出来たら。そう思う。
その不思議さを対話によって探求したい。
こんな不思議で面白い人がいた。
新居になって、公園の近くに引っ越した。
日中は子供らの遊ぶ声やボールを蹴る音が響く。
騒音なんて思わず、誰かがいてくれる安心感に浸れる。
子供はしゃぐ声を聴くたび、
あの夏、どうして僕らはあれだけ虫取りに夢中だったんだろう。
と映画タイトルのようなことを考える。
そんな僕は掃除に夢中。
引っ越し初日のことだ。
費用を出来るだけ浮かせたくて引っ越し屋さんを使わなかった。
だから、
背中にはパンパンのリュック。パンパンのショルダーバックをかけて、両手にはパンパンのレジ袋。
というフル装備状態。
そんな大荷物の僕は内見の時だけ通ったその公園を横切った。
蝉の大合唱に心は踊らない。
時より話しかけてくる虫たちを無視。(……)
拭っても拭っても流れる汗。既に拭うことをやめた。
公園では
子供たちが遊び、親が見守る。
子供より虫取りにはしゃぐ父親もいる。
どうしようもないくらい息子を心配そうに川遊びさせる父親もいる。
それを見守る母親。
物凄いスピードの自転車が通り過ぎた。
子供を乗せた母親だった。
老夫婦がゆっくりと同じ歩幅で歩く。
大型犬がやってくる。
「お前、見ない顔だな。」とこちらに睨みを利かす。
ビビる僕は大荷物を駆使しして顔を隠す。
これからやること、まずは掃除、次に家具の受け入れ。
ルールの把握もしないと。市役所にも行って……。
考えること、不安が山積みで新生活へのワクワクは心のどこかに既に引っ越し済。
熱さと空腹のダブルパンチでヘロヘロ状態。
もう少しで家に着くところ。
そんな時。
公園の丸く刈られている低木に目をやった。
その中に潜り込み、スケッチをしている女性がいた。
今まで出会ったことのない行動に、僕は不思議さ全開という目をして見入ってしまった。
目があった。
相手も大荷物で汗だくの僕を不思議そうに目を丸くしてこちらを見ていた。
「あ。」と意図的に目を逸らす。
テンパって拭うのをやめたはずの汗をグイっと拭った。
拭う腕もまた、汗。
そのまま急いで家まで向かった。
チラッと横目で見ると、彼女は黙々と低木の中でスケッチを続けていた。
純粋に何をスケッチしているのか気になるし、面白そうだと思った。
僕は虫が苦手だから疑問だ。
低木に入る勇気も、人の目を気にしない勇気も、スケッチに夢中になる何かも。
気になる。
そういう人と素直に対話をしてみたいと思う。
低木の中には何がいたのだろう。
虫ではなくて、低木の中の複雑に絡まり合った木々を直視しているのだろうか。
骨組みを自分が中に入ることによって立体的に理解しようとしているのだろうか。
気になる。
誰だって不思議で、誰だって考えがある。
だから、誰とでも。
ただ、話がしたい。
今は低木に入るその人と、低木に入る理由を話してみたい。
