まつわるエトセトラ
逆風の年 ― MURAI BASEが赤字になった日 ―
2026年の春。
創業からちょうど1年。
スタッフは5人、講座の受講者は3,000人を超え、
売上は右肩上がり――の、はずだった。
だが、数字のグラフが初めて下を向いた。
原因は、村井が最も苦手としていた“人のマネジメント”だった。
拡大の罠
受講者数の増加に伴い、業務は膨張した。
動画編集、問い合わせ対応、広告運用…。
「俺が全部見るのは無理だな」と、
村井は広告運用を外部に委託した。
「プロに任せりゃ、もっと伸びる」
――そう信じて。
しかし、結果は逆だった。
広告費が3ヶ月で150万円。
新規顧客は減少、単価も下がり、
気づけば初めての赤字が出た。
帳簿に記された「マイナス68,000円」という数字を見て、
村井は一瞬、何も感じなかった。
ただ、コーヒーを一口飲んで、
静かに天井を見上げた。
自分を見失う瞬間
数字が落ちると、人は焦る。
チーム内でも不安が広がった。
「このままで大丈夫ですか?」
「新しい講座、作った方がいいのでは?」
スタッフたちの言葉は正しかった。
でも、その正しさが、村井の胸を締めつけた。
「いつの間にか、“金を追ってる”側に戻ってたんじゃないか?」
思えば、最初にYouTubeで聞いたあの言葉。
「金の流れを作るんです」
あれが原点だったはずだ。
それを忘れ、“売上を取り戻すこと”に必死になっていた。
原点回帰
その夜、村井は久しぶりに倉庫へ行った。
埃をかぶった古いゴルフクラブを一本手に取る。
グリップを磨きながら、ふと呟いた。
「俺、最初はこうやってたな……」
――儲けるためじゃなく、
誰かがもう一度“使いたくなる”ように直してた。
その姿勢が、いつの間にか消えていた。
村井は翌日、全スタッフを集めた。
そして、黒板にこう書いた。
「俺たちは“教える”会社じゃない。
“再挑戦のきっかけ”を売ってるんだ。」
広告運用を一時中止し、
既存の受講生のサポートに力を入れた。
週1のフォローメールを始め、
動画の質を磨き直した。
「売る」より「繋ぐ」へ。
方向を、静かに戻した。
再浮上
3ヶ月後。
再販したオンライン講座が口コミで広がり、
受講者の紹介が爆発的に増えた。
数字は再び上向き、
夏には黒字転換。
赤字を出した年は、
結果的に「会社の価値を再定義した年」となった。
MURAI BASE 年表(逆風の章)
2026年 春
業務拡大による広告費の増大で初の赤字。
チーム内に不安と迷いが生まれる。
2026年 夏
原点回帰を決意。
「再挑戦を支援する会社」として再出発。
2026年 秋
既存顧客のサポート重視施策が功を奏し、
口コミ経由の受講者が急増。黒字復帰。
2026年 冬
社内スローガン「流れを戻せ」を掲げ、
新しい講座「Re:Start」をリリース。
登録者数は再び上昇軌道に。
村井の言葉
「順風より、逆風のときのほうが、
自分の“向き”がわかる。
金は流れだ。止まることもある。
でも、自分まで止まったら終わりなんだ。」
まとめ
成功は「流れの速さ」ではなく「流れの向き」で決まる。
赤字は終わりではなく、“整える時間”。
大事なのは、「何のために始めたか」を忘れないこと。
