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【参考図書③】なぜ米は「食べ方」を変えると未来がひらくのか|豊蔵康博『ライスパワー』と、ぞの校長の食農観

私たちは米を見れば、まず炊きたてのご飯を思い浮かべます。

白いご飯、塩むすび、炊き込みご飯。日本の食卓にとって、米は長く「粒のまま食べる主食」でした。しかし、暮らし方が変わり、家庭でご飯を炊く回数が減れば、米づくりを守ろうと呼びかけるだけでは消費は戻りません。

農林水産省によると、日本人一人当たりの米の年間消費量は、1962年度の118.3キログラムをピークに減少し、2024年度には53.4キログラムとなりました。

では、米の未来を「昔のように、もっとご飯を食べよう」という一つの答えだけに託してよいのでしょうか。

今回、食養ファーマーズアカデミーの参考図書として紹介したいのが、豊蔵康博(とよくら・やすひろ)著『ライスパワー――粒から粉へ!世界の食卓を変える食糧戦略』です。

本書は1989年刊、全269ページ。現在よく知られる化粧品成分の話ではなく、加工が難しいとされていた玄米を粉にし、米の用途を広げようとした開発者の思想と実践を扱った一冊です。

キッコーマン国際食文化研究センターの書誌紹介には、粒食にとどまる米を粉にすることで、世界へ広がる可能性を持たせようとした本書の主題が示されています。

刊行から36年以上

米の消費減少や食料安全保障が大きな課題となった今、豊蔵の問いはむしろ現実味を増しています。

米の食文化は、もともと「変身する文化」だった

「粒から粉へ」と聞くと、炊いたご飯を否定するように感じる人もいるかもしれません。

しかし、日本人は昔から、米を一つの姿に閉じ込めてきたわけではありません。

蒸して餅にする。
粉にして団子や和菓子にする。
米麹を使って米味噌を仕込み、みりん、酢、日本酒へ変える。

祝いの日には赤飯を炊き、正月には鏡餅を供え、季節の節目を米とともに迎えてきました。

こうした米と年中行事、発酵調味料の関係は、農林水産省の「和食としての米」でも紹介されています。

米文化の本質は、白いご飯という形だけではありません。土地の恵みを無駄なく生かし、季節、祈り、家族、地域を結ぶ知恵にあります。

だから「粒から粉へ」は、伝統を壊す発想ではなく、米が本来持っていた変化する力を、現代の技術で広げ直す試みと読めます。

守るべきものを守るために、形を変える。そこに、本書の先見性があります。

豊蔵康博が見たのは、米ではなく「米の使われ方」


農業の議論は、品種、栽培法、収量、価格など、生産する側の課題に偏りがちです。

しかし、どれほど良い米を育てても、食べる人の暮らしに合わなければ、消費にはつながりません。

粒の米には、炊飯器や水、加熱時間が必要です。粉になれば、パン、麺、菓子、料理のとろみなど、異なる食文化や生活時間の中へ入りやすくなります。

豊蔵氏が変えようとしたのは、米そのものというより、米を使うための条件だったのではないでしょうか。

これは、農産物の価値は畑の中だけで完成しない、ということでもあります。

誰が、どこで、どのように食べるのか。保存しやすいか。調理しやすいか。地域の外へ届けられるか。

生産から加工、調理、流通、食卓までを一つにつないで初めて、農は続く仕組みになります。

接点① 「育てる」から「どう食べるか」まで学ぶ


食養ファーマーズアカデミーも、野菜を収穫したところで学びを終えません。

土を育て、作物を観察し、旬に収穫する。そこから、どのように調理し、家族の食卓へ取り入れ、余った恵みを保存し、誰かと分かち合うのかまで考えます。

ぞの校長が大切にしているのは、「つくれる人」を増やすことだけではなく、土・食・暮らしを自分の言葉でつなぎ、自分の生活へ実装できる人を育てることです。

豊蔵が米を「粒」という完成形から解放したように、SFAも農を「栽培」という枠の中に閉じ込めません。

畑は入口であり、その学びが食卓や健康、働き方まで届いて初めて、暮らしを変える力になります。

接点② 伝統を、現代の暮らしへ翻訳する


食文化は、昔と同じ形を守るだけでは続きません。共働き世帯の増加、家族人数の減少、調理時間の短縮、食の多様化。生活が変われば、食べ方も変わります。

大切なのは、変化を嘆くことではなく、米や地域の農産物を、今の暮らしの中で無理なく選べる形へ翻訳することです。

米を炊くだけでなく、粉にする。
旬の野菜を生で食べるだけでなく、干す、漬ける、発酵させる。
郷土料理を再現するだけでなく、子どもや若い世代が作りたくなる形に整える。

ぞの校長が考える食養も、過去の食生活へそのまま戻ることではありません。

土地と季節に学びながら、現代を生きる自分や家族に合う食卓を組み立て直すことです。

伝統を「保存」するだけでなく、日常で使える知恵として「更新」する。ここに、二人の考え方の第二の接点があります。

接点③ 一つの作物から、地域の仕事と役割を生み出す

米を粉にする発想は、食べ方だけでなく、地域の仕事も増やします。

育てる人、製粉する人、商品を開発する人、料理する人、販売する人、食文化を教える人。

それぞれの得意分野がつながれば、一つの農産物から複数の役割と小さな経済が生まれます。

SFAが目指す半農半Xや地域共創も、全員を専業農家にする考えではありません。

農と教育、福祉、飲食、観光、健康、デザインなどを結び、自分の経験を地域に必要な仕事へ変えていく学びです。

収量を増やすだけでなく、価値の届け方を増やす。規模を追うだけでなく、地域の中で循環する関係を育てる。『ライスパワー』は、農業を「つくる産業」から「食と文化を創造する営み」へ広げて考える視点を与えてくれます。

1989年の主張を、現代にどう読むか


本書に登場する玄米や玄米粉の栄養・健康に関する主張には、刊行当時の知見や開発者の立場が反映されています。

特定の食品を食べれば誰もが健康になる、と受け取るべきではありません。玄米粉の成分や加工特性は製品によって異なり、体調や消化力にも個人差があります。

私たちが受け取りたいのは、食品を万能視する考えではなく、身近な作物を固定観念から解放し、技術と食文化の両方から価値を見直す姿勢です。

現在、農林水産省も、国内で自給可能な穀物である米を原料とする米粉の利用を、食料安全保障上の重要課題と位置づけています。

豊蔵氏が掲げた「粒から粉へ」という問いは、過去の開発物語ではなく、私たちの食卓と地域農業の未来を考える問いとして続いています。

受講希望者の皆さんへ――米一粒から考えたい三つの問い


本書を読みながら、次の三つを自分に問いかけてみてください。

一つ目は、「私は農産物を、収穫した時点で完成したものと考えていないだろうか」。

二つ目は、「地域の食文化を、今の暮らしに合う形でどう手渡せるだろうか」。

三つ目は、「一つの作物から、自分の仕事や地域の役割を何と結びつけられるだろうか」。

米の力は、栄養だけにあるのではありません。

田んぼを守り、食卓を支え、季節の行事を生み、人と人を結び、加工によって新しい仕事をつくる力にもあります。

豊蔵康博が玄米を「粒」から解放し、ぞの校長が農を「栽培」から解放する。

その接点にあるのは、農産物の可能性を畑の中だけで決めず、食べ方、暮らし方、働き方まで含めて再設計する思想です。

『ライスパワー』は、一粒の米の中に、まだ使われていない未来があることを教えてくれる一冊です。

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土づくりから有機野菜の栽培、食養、暮らし、半農半X、地域共創までを、一年間かけて実践的に学びます。

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ぞの先生|食養スモールファーマー 食と農を軸に、社会に価値ある情報を届けていきます!いただいたチップはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます!