春の嘘
戯れるように唇に触れる
でもそれは気持ちを
分け合うしるしじゃない
春が来たような風の中
思わず出会ってしまった
かき乱さないで
心を そう願って
まだ寄り添っていたい空気
花はまだ遠い夢
沈黙が怖い距離
舞う花の中
触れた指は冷たい
あなたに真実を伝えられずにいる
私の帰りを待つ人の影を
すべてを捨てて飛び込めるほど
まだ、溺れちゃいない
薬指の指輪をあなたに隠れてそっと隠した
心をさらけ出せないでいる私を、あなたは受け入れられるの
いつか唇は嘘をつくことに慣れてしまった痛みとともに
深夜に帰れば背を向けて眠る影
苛立たしさと罪悪感でこのまま沈みそう
花の前に散ってしまいそうなこの恋を
手を伸ばして。散らさないで。このまま散ってしまって。
すべてを捨てて飛び込めるほど
まだ、溺れちゃいない
まっすぐに見つめるあなたの視線にこたえられない
このまま別れを選ぶのがきっとお互いのため
戯れるように触れた唇
熱を持ったあなたの腕
目の裏に浮かぶ影
春はいつも選択を迫る
偽りの関係を断ち切るように
だけど、出会う前から嘘を重ねた
私をあなたは許せるの
かたい蕾のように心を閉ざした
誰にも本音を伝えられない
家に帰れば何年も目を見ていない人がいる
かすれた愛は憎しみにさえならない
痛みを誤魔化したくてあなたの言葉に酔った
気持ちが傾ていくことに今さらおびえている
すべてを捨てて飛び込めるほど
まだ、溺れちゃいない
薬指の指輪をあなたに隠れてそっと隠した
心をさらけ出せないでいる私を
あなたは受け入れられるの
すべてを捨てて飛び込めるほど
あなたの愛が信じられないまま
見せられない薬指のあと
隠したままあなたの前から自分を消したくなる
戯れるように唇に触れる でもそれは気持ちを分け合うしるしじゃない
花の季節まであなたと……
